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社員教育の方針を策定する

2014年6月16日更新

社員教育の方針を策定する

社員教育方針は、企業の視点・社員の視点から検討し、経営者・社員が納得できるようなものにしなければなりません。現場の教育ニーズや人材育成の課題をもとに、教育方針を策定するうえでポイントとなることは何でしょうか?

*  *  *

 

【ポイント】

・教育方針は、企業の視点・社員の視点から検討する

・求める人材像は「適性要件」「職能要件」「行動要件」に区分して考える

・教育方針の表現や文言は、分かりやすく、経営者・社員が納得できるものにする

 

企業が期待する人材の育成とエンプロイヤビリティの向上

社員教育の目的は「会社が期待する人材を育成する」ことである。社員教育が人材への投資であり、経営戦略を実現する施策である以上、成果を抜きにしては考えられない。社員教育の最終ゴールは、会社が求める人材を育てることにあることから、教育ニーズの把握に基づいて社員教育を企画していかなければならない。

「人」は最大の資産であるが、社員にとって「会社」は自己実現の場である。これからは人材流動化の時代であり、価値観の多様化の時代でもある。社員はキャリアを積んで、やり甲斐のある幸せなビジネス人生を求めている。

優秀な社員をつなぎとめるためには、社員の自律的な能力開発を支援していく仕組みが必要である。つまり、社員が長期的にキャリアを形成し、エンプロイヤビリティの向上を支援していくことを、会社が提供していかなければならない時代である。今後の社員教育は、会社の視点と社員の視点に立って、会社と社員が互いに成長するように企画していただきたい。

そのためには他社のものを真似したり、一般的なものでお茶を濁したりしないことである。自社独自の教育方針をつくるためには、経営者や上司、社員からしっかりヒアリングするとともに、経営理念や経営戦略、人事制度などの資料から重要なキーワードを見つけることである。

「経営理念」「目指すべきビジョン」「実現したい経営戦略」「達成したい業績目標」「経営上の問題」「想定されるリスク」「人材育成に対する考え方」「人材育成の目的」「求める人材像」などに関する文章から検討するとよい。教育方針を検討するには、次に紹介する資料なかから、方針に盛り込む文言を見出していくことができる。

 

社員教育方針の策定資料

社員教育方針の策定

ヒアリングしたこと、資料から書き出したことなど、教育方針に盛り込むべきキーワードをリストアップして整理する。教育ニーズの発生源が多岐にわたるため、検討シートを作成するとよい。サンプルシートを挙げるので、参考にしていただきたい(図表3-4)。

教育方針で一番大切なことは、「求める人材像」である。求める人材像は独自のものでないと機能しない。ありきたりな人材像ではなく、しっかり検討し、納得のいくものをつくらなければならない。

「求める人材像」は、すぐに決めることは難しく、十分な検討が必要である。筆者がすすめる方法は、教育ニーズの10の視点から「適性要件」「職能要件」「行動要件」に区分して考えるものである。

 

求める人材像

教育方針検討シート

 

人材のキーワードには、どのようなものがあるだろうか。求める人材像として、「自律型人材」「グローバル人材」「プロデューサー型人材」「プロフェッショナル人材」「変革型人材」などが、多くの企業で掲げられている。

例えば、「自律型人材」をテーマに教育方針を検討してみる。厳しい競争環境下にある企業にとって、持続的成長の鍵は、課題を自らの力で解くことのできる人材にかかっている。このような人材には、どのような能力が求められるのだろうか。具体的にいくつか挙げてみると、次のような資質や能力が求められる。

 

・自ら考え行動する能力

・お客様の視点で思考し、発想する能力 

・問題を発見し、解決する能力

・同僚と協力して取り組む能力

・他者を凌駕する業務スキルと専門知識

・多様な価値観や考え方を理解し、幅広い見方ができる能力

・自分の意見をきちんと言うことができ、人の話を聞けるコミュニケーション能力

・自己管理ができ、自分の価値基準で正しく判断できる能力

・向上心を持って学習し、自己革新していく能力

・チャンスや問題に果敢に挑戦するチャレンジ精神

・業績や品質・納期など、高い目標を達成しようとする能力

・周りに効果的に働きかけていくリーダーシップ 

 

このように資質や能力、行動を挙げていくと「求める人材像」が見えてくる。さらに、「教育の考え方」「教育の目的」「教育により実現したい姿」「教育の方法」「教育のすすめ方」を検討し、内容に盛り込みたい。

 

教育方針の決定

教育方針は複数案作成し、経営者や経営幹部、管理者の意見も聞いた上で決定するのが望ましい。3案くらい作成して検討するのが理想である。経営者、社員が納得するものでなければ意味がないのは言うまでもない。

 

一般的にトップダウンで決まることが多いが、本来は社員や現場のニーズをしっかり踏まえた方針であるべきである。方針策定のチェックポイントは次の5つである。表現は箇条書きにして、言葉を十分に検討し、吟味されたい。

 

【教育方針チェックリスト】

1)抽象的な言葉を使ったり、表現が堅苦しい表現であったり、分かりにくくないか?

2)経営理念・経営者の想い・ビジョン・経営戦略と整合性が取れているか?

3)文字数が多くないか? 盛りだくさんになっていないか?

4)前向きで明るく、未来に対して希望と夢が持てる表現であるか?

5)個人が生き甲斐を感じ、夢が持てる会社と思えるか?

 

もちろん、教育方針は策定しただけでは何の意味もなさない。現場の上司や社員に周知徹底されてはじめて効果が出る。さらに、教育体系をつくり、教育を実施していってはじめて機能する。一度決めた方針であっても、経営環境や状況が大きく変われば、随時見直しを図っていくべきである。

 

出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

 

 
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【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会) 
 
松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

 

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