幹部候補として転職する人材の資質とは?
2016年2月 3日更新
幹部候補として転職し活躍する人材には、どのような能力・資質が求められるのでしょうか。海老一宏氏が解説します。
* * *
内閣府が主導する「プロフェッショナル人材戦略」
前回、前々回と大企業管理職経験者の第2の活躍する場所として、地方や海外での可能性があること、そしてその潜在的なニーズを発掘し開拓するために、内閣府の地方創生本部が「プロフェッショナル人材戦略拠点」を各県に設けて国を上げて地方企業の人材ニーズを創ろうとしていることを説明しました。
私は、先月1月5日に内閣府の「ひと・まち・しごと創生本部」を訪ねてプロフェッショナル人材戦略の概要を伺い、また7日には各県マネージャーの勉強会後の懇親会に参加を許されて、マネージャーや事務局の方と意見交換を行ってきました。
その際に挨拶に立った内閣府の村上参事官は、「地域経済が本来持っている実力を開花させるためには、スイッチを入れる人材、つまり大企業の優秀な人材が地方で活躍する必要がある。地方に行くことは都落ちではない。地方で活躍することは素晴らしいやりがいをともなうということを理解させて欲しい」と語りました。
まさに地方は輝ける日本の未来をつくる場所であり、首都圏でくすぶってなどいないで地方で一旗あげる心意気を持っている人材を創りだそうということです。そして、各県マネージャーはその人材が活躍する企業を訪ね歩き、社長に「気づき」を与える仕事となります。
このような取り組みが今まであったでしょうか? それは単に金をばらまくとかハコモノを作るという従来の政策とはまったく違うものであり、企業にも潜在的なニーズがあり、人材にもその意欲があるはずという仮定に基づいた施策であるためにリスクがあります。村上参事官はそのリスクを承知していました。
「たとえ10人のうち9人失敗してもいいではないですか? 失敗を恐れずにやりましょう!」と各県マネージャーに呼びかけたのです。
私は、国のこの施策に大変感動しています。ぜひ協力するべく早速動き始めています。
真の「プロフェッショナル人材」の資質とは
さて、ここで「プロフェッショナル人材」とは、業種や職種を問わず、大企業での管理職やスペシャリスト・幹部経験のある人材ということになります。しかし当然ながら、課長や部長をやっていたのであればとりあえず誰でもいいというようなニーズはありません。
企業が求めているのは、次の5つの課題解決です。
1 売上や利益を抜本的に上昇させること
2 国内や国外へ、そしてネット販売などの販路開拓
3 生産性の改善などにつながる組織運営の強化
4 新しい製品、新しい技術、新しいサービスなどの新価値を生み出すこと
5 社長の右腕や後継人材となるマネージメントの強化
これらは文字で読むと簡単に感じますが、実際は現場の様々な問題がからみっており、MBAの本を読んで真似をするようなことでは到底解決しない問題です。如何に大企業幹部・管理職経験者とはいえまさに地に足をつけて必死に頑張らなければできません。
では、このような難問に対処する人材に求められる能力とは、いったい何なのでしょうか?
管理力・統率力・企画力。
いえ、それらは何かを成し遂げる時に必要な機能と考えていいと思います。
地方企業の、あるいは死蔵している魅力を開花させるためには、もっと強い力が必要だと思います。
私は、それが「意識」であると思っています。
「不可能を可能にする意識」
「困難を打破する意識」
「決して負けない、必ず勝つという意識」
一見精神論と思われますが、実は行動は全て意識があってのことであり、意識のないところにどれだけ能力があっても何も役には立ちません。
「俺がやってやる! なんでも来い!」と燃える人材こそが求められています。
転職すべきでない人材
私が面談している中高年エグゼクティブにもこの意識の無い方がかなりいます。
そういう方は、次のような傾向があります。
1 年収にこだわりすぎる(年収は自分で作ればいい!)
2 会社の置かれている環境や事業にこだわりすぎる(問題や課題があるから人材ニーズがある!)
3 今の企業での問題点の解消のために転職を考えている(その問題はたぶんどこにでもある!)
4 社長との相性を気にし過ぎる(どんな馬でも乗りこなす!)
このような傾向の人は今の会社を辞めるべきではないと思います。転職とは未来の開拓であり、過去の問題の解消やあなたの満足のためにあるのではないということをしっかり認識しなければ転職すべきではないのです。
幹部として転職するということは、社長や社員にとって大きな期待であると同時に不安でもあります。
「ほんとにやってくれるのか?」この不安は必ずあります。
しかし、それを「今に見てろ! 必ずやってやる!」「『さすが!』と言わせて見せる!」という強い意識がなによりも必要だということをぜひ知っておいていただきたいと思います。