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「プロフェッショナル人材戦略拠点」構想とは

2016年1月14日更新

「プロフェッショナル人材戦略拠点」構想とは

首都圏で就職の機会がない人材を、地方で就職、活躍させて日本を底上げするという「プロフェッショナル人材戦略拠点」構想が動きつつあります。海老一宏氏が解説します。

 

 *  *  *

 

前回「リストラされた大企業管理職の第二の活躍場所とは?」では、大企業からリストラなど何らかの理由で退職した人材の第二の職場として、今、地方や海外での採用の可能性があることをお話しました。

 

しかし、特に地方の中小企業は下記の4つの理由で首都圏大企業出身者を積極的には採用しないということもお話しました。

その理由は次のとおりです。

(1)地方企業の経営者がどのような大企業人材がいるのか把握していない

(2)大企業首都圏人材は年収が合わない

(3)大企業人材は「大企業病」で中小企業では使いづらい

(4)過去、外部人材を入れたが失敗した

 

 

地方での求人ニーズを顕在化させる難しさ

潜在的な地方での求人ニーズが顕在化すれば、大企業管理職・スペシャリストの経験や知識、人脈は第2の職場で大いに花開く可能性があります。

その潜在化したニーズをどうしたら顕在化できるのか?

実はこれまで人材紹介会社は出来る範囲でその問題に対処してきましたが、地方の中小企業の社長の意識を変えるということができる人材会社の社員はほとんどいないと言っていいのです。

 

地方にいる人材会社の営業は社長説得係ではなく「人材ニーズはありますか?」といった御用聞き営業に近いため、潜在化した重要な幹部管理職人材ニーズを掘り起こせないのです。またもう一つは、高度な人材の紹介をするためには、企業や社長、そしてその求人が何であるかを深く知っていることと、候補者の人材の能力や人柄を知っていて両者をマッチングさせるという大変難しい仕事であり、人材会社の20代30代の社員では、社会経験や人生経験が不足していてうまく出来ないという側面もあります。

 

さらに、人材側が首都圏などに偏在しているために、地方にある現場(中小企業)を知る人材エージェントが、候補人材を探して面談することが難しいという物理的な壁も立ちはだかっていました。

 

 

国が地方創生への動きを本格化

このような問題が今、大きく動こうとしているのを皆さんご存知でしょうか?

それが、内閣府が昨年より本格的に力を入れている地方創生戦略会議の中の「プロフェッショナル人材戦略拠点」の各県への設置なのです。

 

この事業は、国が行う様々な事業の中でも画期的な事業です。

そもそも日本の将来を考えた時に、地方の創生は待ったなしに取り組むべきことですが、当たり前とも言えるこの政策を安部政権が次々と具体化させて取り組んでいることに、私は大いに拍手を送りたいと思っています。

 

特に私の仕事に関係する、首都圏で就職の機会がない人材を地方で就職させて活躍させて日本を底上げするという「プロフェッショナル人材戦略拠点」構想は、今までのハコモノ型のハード投資ではなく、知識・経験・人脈といった人間のソフトを地方で活かそうとしているところが素晴らしい点です。

 

 

「プロフェッショナル人材戦略拠点」の構想とは

では、その「プロフェッショナル人材戦略拠点」の構想はどのようなものかをご説明します。

 

政府は「地方創生」の柱の一つとして「地域を支える人の育成と確保」を挙げ、経営やマーケティング、技術開発、海外営業といった分野で経験や知識を持つプロフェッショナルな人材が、地方企業で活躍できるようにするという施策を昨年の3月に打ち出しました。これらの人材は地方企業では採用も育成も難しいために、主として首都圏の大企業で働いていた人が対象となり、彼らが地方に移れば、地方のポテンシャルと融合して画期的な成果を生みだすことが期待されるという考えに基づいています。

具体的には、内閣府にある「まち・ひと・しごと創生本部事務局」がヘッドになり、人材の流れとその支援策のビジョンが提示されました。それに基づき、各県では、「プロフェッショナル人材戦略拠点」を県内の中小企業を支援している公益財団法人などに設置し、あらたにプロフェッショナル人材戦略マネージと事務局長を採用して昨年秋ごろより事業のスタートを切っています。

この事業は新たに首都圏人材を雇用した場合は、その費用の内概ね100万~200万ほどを補助しようというものです。

 

しかし、これは目に見える部分で、その実態は、各県の中小企業に国として、地方としての人材支援のあり方を伝え、また外部人材採用がもたらす効果を根気よく説明することにより、潜在化している社長の右腕、左腕人材を顕在化して人材紹介会社と連携して送り込むということなのです。

 

つまり、人材紹介会社では難しいかったニーズの掘り起こしを各県のプロフェッショナル人材戦略マネージャーがおこなうという画期的な施策です。

 

また、実は別な国の施策も動いています。昨年12月9日の日経新聞に中小企業庁の「シニア等のポジティブセカンドキャリア推進事業」の折り込み広告が入っていました。これは同じ地方創生をU・I・Jターン人材に転居費用の補助を出して活性化させようというものです。

 

この二つの取り組みが進んでいることで、いかに国が地方創生を本格化させているか、そして如何に人材の流動化が重要かがわかります。

 

今まで首都圏の通勤範囲でしか転職を考えていなかった人材、年収にこだわり過ぎて転職ができずにいる人材が、こういった施策によって地方企業で活躍して夢を果たすという可能性が出てきました。これが進めば、失業率の低下ということではなく、日本全体の企業パワーが上昇することにもなり、大いに期待できるところです。

 

「大転職時代の人材論」一覧はこちら

 
 

 
【著者プロフィール】
海老一宏 (えび・かずひろ)
人材紹介コンサルタント。キャリアカウンセラー。アクティベイト株式会社代表取締役社長。
1957年、宮城県仙台市生まれ。中央大学卒業後、東証1部上場企業 品川白煉瓦株式会社(現、品川リフラクトリーズ)に入社。人事、経理、営業に携わる。1992年に起業し、レンタルビデオ・CDショップを開業。1店舗からのスタートで、FC本部の経営まで事業を拡大。2000年に人材紹介会社に入社し、トップエージェントとして活躍。2005年に独立し現職に。財団法人みやぎ産業振興機構のビジネスプロデューサーも務める。エージェント歴は15年。面談者は6000名以上。エン転職コンサルタントで6年連続利用者評価NO.1(当社調べ)。
著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』(ワニブックスプラス)、『一流と言われる3%のビジネスマンがやっている誰でもできる50のこと』(明日香出版社)。

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