リストラされた大企業管理職の第二の活躍場所とは?
2016年1月 5日更新
昨年は大手企業の大量リストラが話題になりましたが、そうした大企業管理職には第二の活躍場所があるのでしょうか。海老一宏氏が解説します。
* * *
人材流出の動きは止まらない
昨年も、不正経理や時代の変化に取り残されて業績悪化が表面化し、人材を大量リストラする企業が話題になりました。
上場企業が空前の決算を続けていながらも、先行きの厳しい企業は人員整理によるコストの見直しに手をつけています。
1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマンショック後には、たくさんの大企業の業績悪化や倒産がありましたが、昨年の状況から、今後も好不況に関係なく上場企業からも中堅中小企業からも、40代、50代の人材が外部に出てくることが続くと予想されます。年収の高い中高年はリストラ対象となってしまうからです。
大企業病社員VSワンマン経営社長
さて、そうした人材の中でも管理職やスぺシャリスト人材は、その能力の高さに比例して転職が進むかといえば、そんなに甘くはありません。
一歩間違うと、とんでもない暗闇に引きずりこまれることにもなりかねません。
事実、私が面談した方にも、一部上場企業の営業本部長がスーパーの自転車整理係になったり、外資のMBAホルダーの管理部長がタクシードライバーになった例があります。なぜそうなったかは単純ではなく、年齢や転職回数、希望条件、転職活動の過ちなど様々な理由があります。
大企業などで管理職やスペシャリストとして活躍した人材が、労働者として第二の人生を歩むのは、個人は元より日本全体からすれば損失と言えます。
なぜかと言えば、全国に250万社あるという中小企業は、企業を伸ばす人材や後継者人材が潜在的に不足しているからです。日本政策金融公庫の調査でも、社内に後継者も右腕もいない企業は約2割あります。それ以外の研究職や海外営業人材などの不足もあり、全体では常に数万人の潜在ニーズはあると感じます。
このような人材ニーズがあるにも関わらずそれが潜在化しており、求人として世の中には出ていないのは下記の理由が考えられます。
(1)地方企業の経営者がどのような大企業人材がいるのか把握していない
(2)大企業首都圏人材は年収が合わない
(3)大企業人材は「大企業病」で中小企業では使いづらい
(4)過去、外部人材を入れたが失敗した
年収や勤務地のことを除けば、特に多いのが私もたびたび指摘している大企業病の問題で、地方中小企業で命がけで取り組むという姿勢が欠如していて、なにかと企業の粗を感じすぎて活躍する前に辞めてしまうということが最大の理由かと思います。
一方、大企業病社員の問題ばかりではありません。地方の中小企業の中には、かなりひどいワンマン経営を平気でおこなっている社長がたくさんいます。
非常に乱暴に言えば「こんな社長の下でやってられるか!」対「こんな大企業病人材は使い物にならない」という推測の段階での対決となっています。これについては、お互いの認識を変えていく努力が必要であり、具体的には後述します。
地方や海外での求人ニーズ
一方、大企業人材が、地方中堅・中小企業や海外企業に転職して活躍している例もあります。
当社の例で昨年だけでも、
・建設会社の海外現地法人企業の施工管理部長
・地方縫製会社の社長候補
・地方精密機械メーカーの設計開発課長
・地方映像制作会社の映像制作事業部長
・外食企業セントラルキッチン工場長
・地方医療機械メーカーの品質保証部長
などの一例があります。
今、地方でのこのような潜在的な求人ニーズを顕在化して、都市部の大企業人材の第二の職場にしようとする動きがでてきました。これが進めば、失業率の低下ということではなく、日本全体の企業パワーが上昇することにもなります。
今まで首都圏では当たり前となっている「転職者を受け入れて企業業績をあげる」ということを地方でも当たり前にしようという動きであり、これが新しい国づくりの一環として考えられているのです。その動きについては、次回お話したいと思います。