巻き込まれると迷惑なお騒がせ部長をどう教育する?
2017年6月 8日更新
どこの職場にも部下を振り回す「お騒がせ部長」はいるものです。振り回している部長は悪気がないだけに、部下はいい迷惑を被ります。 今回は、浅はかな考えで部下を振り回す部長の思考や行動を解明して、部長の思考力や判断力を向上する方法をお話します。
あなたの職場に「お騒がせ部長」はいませんか?
部長のもとには判断すべき案件が次から次へと飛び込んできます。それを思いつきや好き嫌い、感情で判断してしまうと、周りを振り回すことになります。
たとえば、会議直前になって、「急ぎだ!」と騒ぎ立てて部下に資料作りを指示する「お騒がせ部長」。「できるだけ早くしろ!」ということなので、部下は指示通りに資料を仕上げて提出しますが、「ああ、そこに置いといて」と言ってそのまま放置。
また、「思いつき部長」というのも似たパターンです。「この業務をもっと効率化できるソフトがあるみたいだけど、調べてみてくれるかな?」と部下に指示をします。早速、部下は業者をピックアップして、カタログや見積もりを出してもらい、すぐさま部長に提出します。すると「こんなに費用かかるんだったら無理だな」とあっさり却下する始末。
「早合点部長」の話もよく耳にします。ある企業を訪問した部長が、部下に「あの会社、来年度のイベントの提案をしてほしいって言っていたよ」と見込み先情報を伝えます。部下は一生懸命に時間をかけて提案書をつくり提案に行きましたが、「来年のイベントの話はしたけど、提案書がほしいとまでは言ってないが……」とお客様に言われて、気まずい雰囲気に……。
部長から直接指示されたら、部下は重要な仕事だと思い、すぐに行動します。しかし、その部長の指示が好き嫌いや思いつきであったり、人の意見を鵜呑みにしてよく考えていないものであると、その部下はいい迷惑です。
あるいは、朝令暮改よろしく指示がコロコロ変わる部長もいます。たった今指示したことも、数分後には「やっぱり違う。こうやって欲しい」と平気で変えてくるので、部下はどうして良いかわからなくなってしまいます。
これが毎日続くと、「またか」と部下はうんざりし、仕事そのものに対してもやる気を失う結果になるのです。そうなると本当に重要な指示でも部下は「うっとうしいな」と思うようになり、仕事がうまくいかなくなります。こんな部長がいることで、会社は莫大な損失を負い、会社の命運を左右することにもなりかねません。
なぜ「お騒がせ部長」になるのか
では、なぜ「お騒がせ部長」になってしまうのでしょうか?
本来、部長には組織を使って部門の業績を上げることが求められています。そのため、いかに業績を上げるかという意識を常に持っています。日頃からアンテナを張っているため、さまざまな情報が入ってきます。それらの情報を鵜呑みにすると、間違った指示やあいまいな指示になってしまうことがあります。
このタイプの部長は、自分の頭に浮かんだ考えや入ってきた情報を冷静に分析したり、検証することができません。また、判断軸がないために感情や好き嫌い、目先の損得だけで判断してしまいます。さらにそれを部下が納得するように伝える論理的思考が苦手なのです。だから指示がコロコロ変わったり、一貫性がまるでなかったりして周りが振り回されるのです。
部長には使命感、行動指針や判断軸を持たせる研修を
人の上に立つ部長ともなると自分の言動が組織にどういった影響を与えるのか、もっと考えなければなりません。指示がコロコロ変わっては成果が出ません。しっかりとした、使命感、行動指針や判断軸を持つことが求められます。
考え方や行動が一貫しているからこそ、部下は安心感と信頼感を持ちます。部長と部下の間に信頼がなければ、「部長を信じて頑張ろう!」「みんなで部長の言うとおりにしよう!」と思ってくれるはずがありません。
使命感、価値観や判断軸をしっかり持ったブレない部長を育てるには、物事を論理的に考えることができるようになること、また視野を高く広く持ち、自分で仮説検証できるようになるためのロジカルシンキング研修、ロジカルプレゼンテーション研修やビジョン構築研修、戦略思考研修、キャリアビジョン研修が効果的でしょう。特に、ケーススタディをたくさんこなすことで判断力や思考力を鍛えることが重要です。その積み重ねが「判断軸」をしっかり持つことにつながります。また、業務上において、自分の考えを添えて社長や担当役員に相談にいくことも、自分の判断力を磨く機会になるでしょう。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)