なぜ変革が難しいのか。変革型リーダーシップの要諦とは?
2026年1月20日更新

なぜ変革が難しいのか、どうすれば組織の変革を成功に導くことができるのか。本稿では、「変革型リーダーシップ」について、その要諦を成功事例とともにご紹介します。
INDEX
変革とは
一般的に、変革とは「物事を根本から変えて新しくすること。また、変わって新しくなること(※1)」と定義されています。PHPゼミナールでは、経営活動における変革を「市場(顧客)に新しい価値を提供すること」と定義づけています。
変革によって、自社や自分たちの仕事の貢献度が上がり、事業や組織を存続させることができます。世の中が変化しないのなら変革は必要ないかもしれません。でも、社会環境がこれほど激しく、かつ速く変化する状況下では、変革を怠ると事業の存続が難しくなるのは自明です。
※1 広辞苑の定義
変革が求められる背景――事業再構築の必要性
昨今の社会の大きな変化は、従来のビジネスモデルの見直しと大胆な変革を、各企業・組織に求めています。しかし、思い通りに変革が実現するのは稀なことで、途中で失敗・挫折するケースのほうが多いようです。
巷では「事業再構築」ということばが頻繁に使われるようになりました。その背景には、経営環境の激しい変化の中で、事業存続が困難な企業(特に中小企業)が増えてきたという事情があります。
こうした企業が生き残るためには、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、または事業再編といった「事業再構築」に早急に取り組む必要があるのです。
人的資本経営の視点で捉える変革と変革型リーダー育成
近年、組織変革を進める上で注目されている考え方が「人的資本経営」です。人的資本経営とは、人材を単なる労働力ではなく、中長期的に価値を生み出す資本として捉え、その成長を経営の中心に据える考え方です。この視点に立つことで、変革が進まない理由と、変革型リーダーシップの重要性がより明確になります。
多くの企業では、変革を制度改定や組織再編など、仕組みの変更によって実現しようとします。しかし、現場で行動する人の意識や判断が変わらなければ、変革は定着しません。人的資本経営では、人の行動変化こそが変革の起点であり、制度はそれを支える手段にすぎないと考えます。
この考え方の中核を担うのが、変革型リーダーの育成です。変革型リーダーは、短期的な成果管理にとどまらず、将来の方向性を示し、部下の成長を通じて組織力を高めます。人を育てる姿勢や対話の積み重ねが、現場の主体性を引き出し、結果として組織全体の変化につながります。
人的資本経営の枠組みで見ると、「育成 → 行動変化 → 組織変化 → 価値向上」という流れが整理できます。HR担当者に求められるのは、研修を単発施策で終わらせず、リーダーの行動変化が組織に与える影響までを見据えて設計することです。この視点を持つことで、変革型リーダー育成は、経営に直結する投資として位置づけられます。
変革を妨げる要因
しかし、事業再構築、つまり変革は簡単なことではありません。なぜなら、先述のとおり、変革を担うのは人ですが、人は往々にして変革を妨げるような行動をとりやすいからです。
ハーバード大学の元教授コッター氏の学説によると、変革を妨げる行動パターン・状態は4つあるとされています。
1.根拠のないプライドや傲慢さから来る現状満足
2.恐れやパニックによる硬直、保身、逃避
3.怒りによる反発、テコでも動かぬという態度
4.極度に悲観的になり、常に腰が引けている状態
成功体験を捨てきれない経営者
企業の現場で長年、経営指導に携わった某コンサルタントの方曰く、現場で輝かしい実績を積み重ねてトップに上り詰めた生え抜きの社長ほど、経営判断を誤ることが多いそうです。そのような状況に陥る原因として「かつての成功体験を捨てきれないことにある」と、そのコンサルタントは指摘します。
つまり、かつての成功体験によって得られる現状満足が強く、その発想で経営上の判断をするのですが、経営環境が大きく変わっている今、かつてのやり方ではうまくいきません。しかし、うまくいかない原因がわかっていないため、現状を変えることへの恐れや反発から、行動を変えようとしないのです。
変革に関わらない若手・中堅社員
変革のに担い手は、経営者だけではありません。むしろ若手・中堅社員が変革を進めるための実務を主体性をもって進めることが望まれます。しかし、多くの企業ではその教育をOJTや自己啓発に委ねています。上司のマネジメントスタイルが指示命令型であれば、若手・中堅社員のやる気と成長は望めず、どうしても「過去の経験則から抜け出せない」「新しい視点や発想に乏しい」といった社員が増えてしまいます。これも、変革を阻害する一つの要因となります。
近年、若手社員のリーダーシップ開発の必要性が広く認識されるようになっています。リーダーシップ研究の第一人者・舘野泰一氏(立教大学経営学部 准教授)によると、チームをより良くするリーダーシップという影響力に関しては、マネジャー層だけでなく、メンバー全員が発揮することができます。そして、そのほうが組織がより良い成果を生み出すことができるそうです。特に新しいことに取り組む場合には、若手社員の力が必要になってきます。リーダーに答えをもらったり指示を待つというのではなく、そこにいるメンバーが、それぞれリーダーシップを発揮している状態をつくることが、変革への近道といえるでしょう。
参考記事:メンバー全員が発揮するリーダーシップと具体的な行動│PHP人材開発
事例:自動車業界の管理職
変革の難しさを事例から考えてみましょう。
100年に一度の大変革期にあると言われる自動車業界。当然、その業界で仕事をしている人たちはみなそのことを理解していますが、だからといってすべての人が変革のための行動をとっているわけではありません。
昨今、全国のカーディーラーや自動車部品メーカーからの研修依頼が増えていますが、その依頼内容の多くが「管理職の意識改革」です。将来的に大きな変化が起きることはわかっているけれど、今すぐ何かが変わるわけではないので切迫的な危機感がない。その結果、日々の業務を処理することに汲々として、変革の推進者としての役割を担いきれていないリーダーが多いというのです。
事ほど左様に、人が危機意識をもって本気になるのは簡単なことではありません。危機意識を醸成することの難しさが、冒頭で述べた変革が思うように実現しない原因の一つといえます。
参考記事:個人の変革は意識が先か、行動が先か?
変革を成功に導くためのフレームワーク「ペイン・プレジャー・マトリクス」
変革を成功に導くためのツールとしてよく知られているフレームワークに「ペイン・プレジャー・マトリクス(※3)」があります。このフレームワークは、変化するか否かによって、どのような状況がもたらされるかを図式化したものです。
図表のAのマトリクスは、変わることによって組織構成員が痛みを感じる領域です。Bは、変わることによって喜びを感じる領域。Cは、変わらないことによって痛みを感じる領域。Dは、変わらないことによって喜びを感じる領域です。

4つのマトリクスを対角線にあるものどうし組み合わせ、その関係性を比較したときに、
A+D>B+C
の状況であれば変革は起きません。変革が起きるのは、組織が
A+D<B+C
の状況にあるときです。
つまり、「このままじゃまずい」「変わればよいことがある」という思いや意見をもつ人が増えれば増えるほど、変革が前進するのです。
※3 経営コンサルタント 船川淳志氏が考案したフレームワーク
変革をやり抜く5つのステップ
次に、「変革をやり抜く5つのステップ(※4)」をご紹介します。
ステップ1.危機感(変わらないことによる痛み)を醸成する
ステップ2.強力な変革推進チームをつくる
ステップ3.ビジョンと戦略(変わることによる喜び)を構築し、落とし込む
ステップ4.短期的成果を意図し、実現する
ステップ5.新しい方法を組織文化に定着させる
5つのステップを踏みながら、変革の気風を組織内に漲らせるのですが、大切なことは対話の量と質です。したがって、変革推進の役割を担うリーダーには、組織構成員を巻き込んで地道な対話を重ね、
A+D< B+C
の状態を組織の中に作っていくことが求められているのです。
※4 John P. Kotterの提唱する8ステップをPHP研究所で解釈・整理し直した
成功事例に学ぶ~変革リーダーがもつべき使命感
変革を成し遂げるには相当のパワーを必要としますが、その源泉になるのが、変革を推進するリーダーの信念と勇気です。
富士フイルムでさまざまな変革に取り組んだ、元社長の古森重隆氏は、リーダーが もつべき使命感について次のような持論(※5)を展開しています。
私は経営者として、全身全霊を傾けた「魂の経営」を心がけている。一連の構造改革に取り組んでいたころも、「命を懸ける」という表現も生ぬるいと思うほど、ほんとうに全身全霊を傾けて取り組んできた。「富士フイルムという会社を救わねばならない。それがリーダーとしての自分の使命だ。なせなければ、自分の人生に意味はない。それで、おめおめと生きていられるか。断固としてやる。死んでもやってやる」と――。
古森氏は、構造改革によって、主力事業を写真フィルムから医療関連や事務機器へと転換させましたが、その過程でさまざまな困難に見舞われました。それでも困難に打ち克って変革をやり抜くことができたのは、確固とした使命感をもっていたからだと言います。
さらに古森氏は、使命を確立することの意義を以下のようにも述べています。
日々使命感を持って仕事をしている人は、失敗からも成功からも、自分の成長に役 立つ数多くの教訓を学び取ることができる。「セレンディピティ」(serendipity)、すなわち偶然の幸運に出合う能力、思わぬ発見をする能力が、おそらく彼らには備わってきていて、日々の仕事の中で教訓が蓄積されていくのだろう
※5 出典:『松下幸之助塾 2013.1-2』(PHP研究所)
使命感を高めるために――セルフコーチングのすすめ
リーダーとしての使命感を高めるには、自らの人生観、仕事観を見つめなおす作業が必要になります。その際に効果的なのが、日々のセルフコーチングを通じて、次のような問いを自分に投げかけてみることです。
「自分は人生を通じて何を成し遂げたいのか」
「何が正しいことなのか」
「今、何をやらなければいけないか」
こうした問いに向き合い続けることで、自らの人生と仕事における使命と目的意識が、明確かつ強固な状態になっていきます。そして自らの内面が調えば、多少の困難があっても揺らぐことのない、強力な「変革型リーダーシップ」を発揮することができるでしょう。
参考記事:リーダーシップスタイルの6類型とは?
【記事監修】的場正晃(まとば・まさあき)
PHP理念経営研究センター 主席研究員
1990年、株式会社PHP研究所に入社、以後、一貫して、PHPゼミナールの普及、および研修プログラムの開発に取り組む。2001年から2003年まで神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得する。中小企業診断士。
著作に『"強い現場をつくるリーダー"になるための5つの原則』『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための5つの原則』(ともにPHP通信ゼミナール)。




































































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