若手社員へのハラスメント、研修だけでは防げない?
2017年5月29日更新
セクハラ、パワハラ、マタハラなど世の中で様々のハラスメントに関する情報が飛び交うなか、企業にはハラスメントが原因で離職する若手社員への対策が求められています。
ハラスメントの意識がない上司
「会社の懇親会の時、上司に髪を引っ張られました」
「仕事中、"お前はバカだ"とたびたび罵られます」
これは、K社の新卒入社3年目のYさんの話です。Yさんが申し出た結果、人事課はパワーハラスメントを認め異動の措置をとりました。
S社の入社6年目のHさんは、「当社なんてパワハラオンパレードですよ。管理職にその自覚が全然ないんです」と怒りを隠せません。また、私がある取引先の社員の方と一緒に昼食をしていた時には、女性社員に耳を疑いたくなるセクハラ発言をした社長がいました。
これらの事例にみられるように、未だハラスメントに対する意識がない上司が多いことに驚かされます。職場のハラスメントは社会問題化していますので、たいていの企業では教育をしているはずです。しかし、「昔はこのくらい当たり前だった」という意識が抜けないことと、自分だけは良いと思っている傲慢な意識の上司が存在するということだと思います。弱い立場の部下は、いやであっても止めてほしいというサインを出しにくいもので、無神経な上司であればよけいに気づかないのでしょう。
ハラスメントで大切な若手社員が離職する
先述のYさんが勤めるK社でも、実はハラスメント教育は実施されています。この上司は仕事ができ、「自分は間違ったことなどない」と言う人だそうです。まさに傲慢上司です。Yさんは「第一志望で入社したのに残念ですが、自分の今後の目途がついたら会社を辞めます」と私に話してくれました。この上司に会社から懲罰がいっさいなかったので、納得がいかなかったのです。異動はさせるが、処分しない体質の会社に見切りをつけたということでしょう。
別の会社の例で、新卒入社1年目のTさんは、上司からパワハラに近い行為を受け、異動とともにこの上司には、総務・人事課から注意がなされました。Tさんは、総務・人事課の担当者がしっかり話を聞いてくれたことと、該当上司に注意をしてくれたことで溜飲を下げ、継続して勤務しています。
若手社員は、自分が勤務している会社が信頼できるかどうかを考えています。若手社員への手当とともに、ハラスメントを行なった上司には公正かつ適正な処罰をするべきです。とかく会社は、仕事ができる、売上を上げている管理職には遠慮しがちですが、きちんと対応できない場合、将来を担う有望な社員を失う結果になってしまうのです。
研修だけではハラスメントは防げない
ハラスメントへの対応策は、次のようなことがあります。
1.研修を徹底する
2.事例を示す
3.懲罰を明確にする
4.相談窓口・通報窓口を設ける。秘密厳守することを明確にしておく
5.定期的にアンケート調査をする
最近、きちんとハラスメント研修をしていた会社で、上司が派遣社員に対して数々のセクハラ発言を繰り返していた事案があり、マスコミでも大きく報道されました。このセクハラ発言の内容は、耳を覆いたくなるような卑劣なものでした。教育担当者はさぞショックだったでしょうが、残念ながら教育だけでは防ぎきれないのです。教育が必要な不届きな人ほど響きにくいのが常です。
防止の確率を上げるには、実際に起こった事例を示し、加害者の悲惨な末路を知らせる。あるいは、適切な懲罰を規定し、周知しておくことです。定期的なアンケートを実施するのもよいでしょう。言い出しにくくても、アンケートへの記入ならできるということもあります。
昨今の若手社員は、突然辞める、理由を言わない、という傾向があります。コミュニケーション能力が低下している、人間関係が希薄になっているということから、そうなるのでしょうが、本当は辞める理由があるはずです。早めに見つけてあげることが大切です。
一方、部下にパワハラといわれそうで注意できないという上司も増えていますが、多少厳しく注意してもパワハラになることはありません。上司、若手社員ともに教育、相談業務をしっかり行っていく人事担当者の対応がますます問われる時代です。
※本記事では若手社員の悩みを取り上げていますので、上司から部下である若手社員へのハラスメントについて記述していますが、ハラスメントは上司から部下へ行われるものだけではありません。念のため書き添えておきます。
阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。