「アクティブ・リスニング」で人間関係をつくる
2016年4月 8日更新
アクティブ・リスニング(積極的傾聴)は、管理者のマネジメントスキルの基本の一つ。人間関係をつくるのに必須のスキルです。吉田繁夫氏の解説です。
「仕事とは人間関係である」
少し極端かもしれませんが、「仕事とは人間関係である」と言ったらどう感じるでしょうか? もちろん、これを100%肯定することはできませんが、仕事の本質の一部を含んでいるかもしれません。なぜなら、人間関係を無視して仕事の成果をあげることは難しいからです。
どんな仕事も、事業にも複数の人が介在しています。販売しようとすれば「お客様」という人は無視できませんし、社内でも仕事の連携を無視することはできません。円滑な人間関係をつくることは、目標達成に向けた好ましい状況の実現に不可欠です。
反対に、人間関係がギクシャクしていたら、自分の意見に賛成してくれない、支援してくれない、信頼してくれない、自由に行動させてくれない、などのデメリットが大きくなってしまいます。
世の中で正しいとされていることでも、特定の人間関係の中では否定されることがあります。そのため、人間関係を円滑にしたいと思えば、その相手を理解して対応する態度・行動が必要になります。
人間関係は"つくるもの"
仕事のなかで良い人間関係をつくるうえでの大事なことは、人間関係は"つくるもの"であって、できるのを待つものではないということです。しかし、分かっていても、なかなか難しいこととする人が多いのも事実です。では、どうすればいいのでしょうか。
人間関係は、互いの相手に対する感情的な態度の問題です。したがって、人間関係をつくるということは「自分に対する良い印象・イメージを相手に持たせる」ということになります。人は、相手に対する印象やイメージによって、その相手に対する態度を決めます。会ったことも、見たことも、聞いたこともない人物にどんな態度で接するかと問われても返事ができません。相手は、自分をよく見ていて、見たことや聞いたことを経験として頭の中に記憶します。その記憶が無意識のうちに出てきて、相手の態度に影響を与える訳です。
人間の本能は、自己にとって有利なものを好み、不利なものを嫌います。人間関係に置き換えると、自己にメリットのある存在は近づけ、デメリットのある存在は遠ざけるということですが、この判断は往々にして、印象やイメージなどによる無意識なものになりがちです。
アクティブ・リスニング(積極的傾聴)
そこで、良い人間関係を作ろうとすれば、相手に対して「私はあなたにとってメリットのある存在である」というイメージを与えることが必要です。具体的な方法はいろいろありますが、その中で最も重要なのが、相手の話を聞く態度です。
相手の話を聞く態度には、聞き手が話し手を受け入れているかどうかが表れます。受け入れられることは、話し手にとって明らかなメリットであり、拒否されることはデメリットです。したがって、相手の聞く態度を見せることによって良い人間関係をつくりやすくなるという訳です。これが「聞き上手」ということで、このような聞き方を「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」と言って、管理者のマネジメントスキルの基本の一つになっています。
具体的には、相手の話に合わせてうなずいたり、相づちを打ったり、共感を示したりという態度を、話し手に対して積極的に見せるということですが、示しているつもりではいけません。しっかり見せることが必要です。
高い技能や知識を持っているからといって天狗になっている人は、自分の言いたいことを言うだけで、相手の話を積極的に聞く態度を示すことがありません。そのため彼らは良い人間関係をつくれず、自分の力を十分に発揮できずに終わってしまいます。
自身のためにも、組織のためにも、相手の話を聞くスキルは重要です。