若手社員との人事面談。やる気UPのはずが逆効果になるのはなぜ?
2017年3月 1日更新
若手社員との面談で、人事担当者が一方的に話をしてしまい、モチベーションアップのはずが逆効果に終わってしまうケースが少なくありません。面談を成功させるために、何を心がければいいでしょうか。
面談で一方的に話をする人事課長
入社11カ月になるAさん。人事課長との面談が終わって席に戻ってきました。職場の仲間が集まってきて聞きます。「どうだった?」。Aさんは肩をすくめました。「課長が、ほとんどしゃべってた!」。自分たちの話を聞いてもらえると期待していた若手社員たちはがっかりしています。
この会社では人事課長が、事前に記入してもらったアンケートをもとに、若手社員と一人15~20分の面談を実施する予定でした。Aさんは2倍の時間がかかっていたので、職場の仲間は、さぞ話を聞いてもらっているのだろうと思っていたのですが......。ほかのメンバーも同じだったようです。
このケース、なぜ人事課長は一方的にしゃべってしまったのでしょうか。原因は、まず、この人事課長が面談の目的をしっかり把握していないこと。そして、経験の差から若手社員の悩みや問題に答えがすぐ出せるため、つい教えたくなり、面談の場を教える場に変えてしまったこと。一方、若手社員は目上の人が話し出したら聞くしかないということです。
人事担当者の話す内容は、おそらく豊富な経験と知識に裏打ちされた有益なことが多いのでしょう。しかし、一方的にしゃべり過ぎるのはどうでしょう。相手の本音が掴めませんし、若手社員のほうは押し付けられた感と不満が残るだけです。
若手社員との人事面談。その目的は?
入社2~3年の若手社員は、まだまだできないことも多く、仕事を進めるうえで何度も壁にぶつかっているはずです。新たな不安や不満、疑問が出てきているかもしれません。この時期の人事面談は、本人の状況を把握するとともに人事の立場でガス抜きをしたり、会社としての期待を伝えて成長の後押しをする絶好の機会です。
ですので、面談の第一目的は、仕事やモチベーションの状況を把握することです。それができれば、まずは目標達成です。さらに仕事のアイデアを聞き、人物像をより詳しく把握できれば、今後の人事の参考にもなります。若手社員の立場から見た職場の状況を把握するのも有益です。
若手社員との面談で、こうした目的を達成するためには、まずは話を聞くことが大切です。もちろん、日常業務の場面では、指導や注意をしたり、経験を話したりすることは、当然あってしかるべきものです。しかし、「面談」として機会を設けている場合には、傾聴をすることを重視して目的を果たすべきです。面談で人事担当者がしゃべる目安は30%まで。30%は限界数値で、もっと少なくてもいいでしょう。それ以上しゃべった場合は、その面談は成功とは言えません。聞き役に徹することが大切です。
部下の話を聞くことで退職を防いだ事例
人事・総務務兼任のある食品製造会社の総務課長から、私のセミナーを受講した翌日、興奮気味のメールが届きました。詳しく書かれていましたが、要約すると次のようなことです。
セミナーで学習したことがすぐに役立ちました。
今朝出勤したら、パートのSさんから仕事を辞めたいという相談がありました。私は昨日習ったカウンセリング手法を実践し話を聞きました。そうすると、辞めるのを止めてもらえ、パートさん同士の職場の問題まで掴むことができました。
今までは、このような場面では90%以上私がしゃべっていました。そうするとパートさんは辞めていたでしょう。
自分の態度を変えたことで問題の解決ができたこと、自分が変われたことが、よほど嬉しかったのか、その後、良好な経過を知らせるメールをもう一通いただきました。
面談で使いたい「傾聴」スキル
重ねてお伝えしますが、面談では「傾聴」の姿勢が大切です。「話を聞いてくれる人」「気持ちをわかってくれる人」のことは、誰もが好きなものです。本音を話したくなります。協力したくなります。正しく傾聴することは、さまざまな効果を生みます。
良い傾聴の主なポイントを挙げてみます。
1)斜め前くらいに座る。正面は相手が圧迫感をもつ
2)柔らかな表情で聞く
3)うなずきながら、適切な相槌を打ちながら熱心に聞く
4)相槌は「はいはい」「なるほどなるほど」と繰り返さない。聞いているふりに見えて誠意を感じない
5)相手の話の要点を繰り返す
6)共感する
面談の場合は、人事担当者が話す割合を減らすために、(5)(6)については、重要な点のみ実施するのでよいでしょう。
若手社員との面談では、人事担当者は相手の話を傾聴すること。若手社員と人事担当者、双方にとって有益な面談を、ぜひ実施してほしいものです。
阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。