新入社員の指導員に指名されたら?
2015年6月24日更新
会社から新入社員の指導員に指名されたとき、どのような心構えで臨めばよいのでしょうか。PHP通信ゼミナール『新入社員の指導・支援の実践コース』テキストから、新入社員の指導員の心構えをご紹介します。
新入社員をまず立派な「社会人として育てる」
このたび会社から、新入社員の指導員に指名されたあなた。さて、新入社員を「指導する」とは、いったい何をすればよいのでしょうか。
指導員と新入社員ば家族でもなければ友人でもなく、会社で初めて出会う仲間です。しかも、出会った瞬間から会社の先輩と後輩という上下関係にあります。そのような関係を前提に考えれば、まず思い描くのは、職場の上役として「仕事の内容・やり方を教える」ことではないでしょうか。確かにそれは不可欠な指導ですし、これまでも、OJT(On the Job Training)を通じて会社や仕事など多くのことを先輩社員から学んでこられたことでしょう。
ここで、指導員として選ばれた方に最初に理解していただきたいことがあります。それは、新入社員に「仕事を教える」だけでなく、まずは立派な「社会人として育てる」ことが重要であること。OJTは仕事の知識やスキルを教える方法として非常に有効ですが、新入社員の仕事に対するやる気や積極性を伸ばし、立派な社会人・企業人に育てるには、また別の視点やアプローチが必要になります。つまり、新入社員の指導は、従来型の「仕事だけを教えるOJT」だけではないことを理解しなければなりません。
なぜOJTだけではいけないのか
日本社会は、製造・販売を中心に考えた「工業社会」から、戦略やIT(lnformation Technology)が重視される「情報社会」へと移り変わり、さらに今、理念やコンセプトが問われる「創造社会」へ変貌しようとしています。社会と時代が変化していくなかで、人々の仕事や人生に対する価値観は大きく様変わりしており、若い人にはとくにその傾向が顕著に見られます。企業は、これまでと同じようなOJTを行うだけでは新入社員とうまくコミュニケーションがとれないために、育てることが難しくなってきています。
そのような状況に対応するために、企業は新入社員の教育に対する観点を高め、取り組みの幅を広げる必要があります。すなわち、OJTに代表される知識・スキル(=Have)のみならず、新入社員の行動・やる気(=Do)、さらに夢・志(=Be)まで踏み込んだ指導が重要になっているのです。
これからの時代の新入社員指導とは?
これからの時代、新入社員を適切に指導していくにあたっては、価値観が多様化した今の社会、心の時代に即した考え方・やり方で取り組んでいくことが大切です。そこで注目されているのが、「メンタリング」という指導方法です。メンタリングとは、これまでのOJTのような仕事を教える指導だけではフォローできない側面まで意識した、支援型の指導です。新入社員の指導員を指名されたときには、ぜひメンタリングによる指導・支援の考え方・手法を学んでいただきたいと思います。
[出典]PHP通信ゼミナール『新入社員指導・支援の実践コース』
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)