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学生の「囲い込み」はもう古い! 内定者フォローで採用担当が心がけるべきこと

2018年1月19日更新

学生の「囲い込み」はもう古い! 内定者フォローで採用担当が心がけるべきこと

「内定辞退」が深刻化する中、学生の「囲い込み」は採用担当にとって重要な課題とされています。しかし、「就職難」から「売り手市場」へと時代が変わった今、そうした「囲い込み」という採用姿勢をあらためる必要があるかもしれません。

そもそも、学生は囲い込めるのか

内定辞退を防止する試みは、私が知る限りでは25年以上前から行われています。その頃から現在に至るまで一貫しているのが、学生を「囲い込む」という意識です。
しかし、今は状況が変わりました。好景気が続き、中小企業の場合は学生が会社に対し、ある意味で優位に立っています。今後、景気が悪化したとしても、慢性的な人手不足は続きます。この現実を受け入れて、採用する側の意識を変えることが求められているといえるでしょう。「囲い込む」のではなく、「対等の立場」で接することが必要なのです。会社と学生の双方で、業界や会社、業務、労働環境や労働条件について話し合い、小さなコンセンサスを積み重ね、納得感をしだいに高めていくのです。
密な話し合いをしたとしても、認識の差や考えの違いが生じるでしょう。相手は学生であり、当然ながら社会人として企業に勤めた経験がないわけですから、止むを得ないことです。
ここで大切なことは、互いが向き合い、誤解を可能な限り取り除き、納得できるところを増やしていくことです。このような姿勢を学生に見せることが内定辞退防止に、さらには入社後の定着率を高めることにもつながるのです。

内定者フォローでよくみられる勘違い

私が取材した内定者フォローの事例をご紹介しましょう。
求人広告業の中小企業(正社員150人)では、数年前から内定した学生と社員との懇親会(飲み会)を実施しています。懇親会では、業界や会社について、20代後半~30代前半の社員が熱く語ります。社長や役員が参加することもあります。
ここで私が疑問に思ったのは、先輩社員数人が2時間にわたり一方的に話をすることです。内定の学生には、発言の機会がほとんど与えられません。これでは、コンセンサスを双方で積み重ねようとする姿勢を、学生に示すことができていないように思います。
1年後にその採用担当者に聞いてみると、内定者3人のうち1人は辞退し、2人が入社したものの、半年で1人が辞めたようです。おそらく、学生としても、会社の誠意を感じ取れない部分があったのではないでしょうか。
また、あるIT企業(社員数110人)では、エントリー者が少ないこともあり、3年前から地方在住の学生がWEBで会社説明会に参加できるようにしています。面接は都内の本社で行いますが、内定後は、採用担当者が電話、メールやスカイプなどを使い、内定者フォローをしています。
ここで気になったのは、その内容が、会社側の一方的な説明に終始しているという点です。学生は「会社にとって不利になることは、ほとんど話さない」と話していました。これでは内定者フォローの成果にはつながりません。

内定者フォローで、コンセンサスを積み上げる

内定者フォローで大切なことは、互いが向き合い、誤解を可能な限り取り除き、納得できるところを増やしていくことです。採用担当者は、次のような項目について、具体的な事実をもとに丁寧に説明し、コンセンサスを積み上げていきたいものです。

・説明会や面接で学生が疑問に感じたところやわからなかったところ
・入社3年以内の主な仕事、配属部署、上司や先輩のタイプ
・入社3年以内の社員が、上司、先輩との人間関係や仕事に苦しんだ事例、それを乗り越えた事例
・入社3年以内にぶつかる可能性の高い問題やその対処法
・勤務地、勤務時間、初任給、今後3年間の毎月の賃金、賞与など
・転勤や人事異動の内容、期間など社内ルールのおおまなかところ
・過去のトラブルなどを含めた職場の人間関係について

会社と学生がある意味で対等になっている今、一緒に疑問や不安を考え、解決しようとする姿勢を持つことが必要です。そのうえでの懇親会であり、WEB動画の説明会や電話、メールやスカイプでのコミュニケーションではないでしょうか。特に中小企業では、このあたりが逆になっている会社が、依然として多いのが気になります。

「採用して育てる」ではなく、「育てて採用する」

私が取材したあるIT企業(正社員200人)では、4年前から、学生を「育てて採用する」試みを行なっています。学生を大学2~3年のときから、アルバイトやインターシップとして受け入れているのです。
労働契約を交わすときには、労使間のトラブルを防ぐために、賃金や労働時間などを念入りに説明します。年に数回は、業界や会社、競合社、社内の業務や人事・賃金制度などについての学習会もしています。所属する業界団体の新人研修にも参加します。社員と同じように、社内資格制度にエントリーすることもできます。
採用担当者によると、インターシップの学生20人ほどのうち、4人が卒業後に正社員として働いています。聞く限りでは、内定辞退者はいないようです。担当者が喜んでいたのが、卒業後にいったん他の会社に就職した人が、1年で辞めて、この会社の採用試験にエントリーしてきたことです。
内定辞退を防ぐためのヒントが、ここにあるように思います。会社の論理を押し付けるのではなく、学生たちとともにコンセンサスを積み重ねる姿勢です。
皆さんの会社では、どのような取り組みをしているでしょうか?

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吉田典史(よしだ のりふみ)
1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の観点から企業を取材し、記事や本を書く。人事労務の新聞や雑誌に多数、寄稿。著書に『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった...』(ダイヤモンド社)、『悶える職場』『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』(KADOKAWA/中経出版)など。

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