目標管理はうざい? 時代遅れ? くだらない? 社員に不評なMBOをどう変える?
2025年1月28日更新
目標管理は多くの企業で導入されていますが、昨今では「時代遅れ」「くだらない」「うざい」と感じている若い社員も増えていると聞きます。この記事では、目標管理の意義についてあらためて確認し、そうしたネガティブなイメージを払しょくし、正しく機能させるにはどうすればよいかを考察してみます。
なお、目標管理の意義や研修プログラムについては下記もご一読ください。
参考:MBO目標管理の目的と課題、具体的な研修プログラムを解説
目標管理は「時代遅れ」で「くだらない」? それともまだ効果あり?
一部のビジネスシーンでは、目標管理(MBO)が時代遅れであると指摘されています。この議論の背後には、現代の多様な働き方や価値観の変化があります。それでは、次に、目標管理が本当に古くさいのかを検討していきましょう。
目標管理の歴史と背景
目標管理(MBO: Management by Objectives)は1950年代にピーター・ドラッカーによって提唱された経営手法で、当初は多くの企業で革命的な変化をもたらしました。その基本原則は、従業員が自主的に目標を設定し、その達成に向けて取り組むことで、組織全体の生産性向上を図るというものです。しかし、現在のビジネス環境は当時とは大きく異なり、急速な企業間競争や技術革新、新しい働き方などが進む中で、目標管理が効果的に機能しなくなってきたと感じる方も少なくないようです。特に、固定された目標が現状の変化についていけないことがあり、柔軟性に欠けるという批判もあります。これが「時代遅れ」とされる一因かもしれません。
目標管理がくだらないと論じられる理由
目標管理が「くだらない」と言われることについては、一体どのような意見があるのでしょうか。多くの場合、この批判は形式的なプロセスに終わってしまいがちな実践に起因しています。つまり、目標が本来の能力を引き出すものではなく、単なる業務の一部に過ぎないという状況です。たとえば、上司が無理に目標を設定させることで、従業員自身がその目標に意味を感じられず、形ばかりの活動になりがちです。それにより、目標達成のモチベーションも下がり、結果として全体の生産性が落ちるという悪循環に陥ることがあります。また正しい目標を設定できない場合、処遇面と関連して、従業員の間に「不公平感」が蔓延すると、組織の活力も失われかねません。このように、目標管理は適切に運用されないと、意味の薄いプロセスとなってしまう可能性があります。
目標管理に対する反感:なぜうざいと感じるのか?
目標管理に「うざい」という感情を抱くのは、そこに従業員の抵抗感があるからです。特に若い世代や、新しい価値観を持った従業員にとって、目標管理は堅苦しい手法だと感じることもあります。各自の創造力や自由度を制約するように思われ、個人の働きがいを削ぐ要因となっているのです。さらに、頻繁な進捗報告や面談、評価の段階は、負担が大きいと感じる人も少なくありません。このように、目標管理がもたらす負の側面は、従業員が感じる「うざさ」の主な原因であり、導入時には慎重な設計と運用の工夫を求められます。
現代の働き方と求められる変化
現代の働き方は多様化しており、一人ひとりのニーズに柔軟に対応することが求められています。その中で、従来の目標管理をそのまま踏襲することが難しいケースも増えています。たとえば、リモートワークの普及やプロジェクトベースでのチーム編成など、新しい働き方にフィットするように管理手法も進化させる必要があります。そこで、アジャイルなマネジメントやオブジェクティブ・キーパフォーマンス(OKR)といった新しい手法の導入を検討する企業も増えています。これにより、より現代的で柔軟なアプローチが可能となり、従業員の自主性を引き出すとともに、組織全体の目標達成をサポートすることができます。
目標管理を再び機能させるポイントとは?
目標管理が「時代遅れ」という声があるのは確かですが、その要因を考えていくと目標管理そのものではなく、運用の仕方に難があることがほとんどのようです。たとえば、目標設定のプロセスそのものを見直すのはどうでしょうか。従業員に合った形で設計されているか、達成可能でありながらも挑戦的なものであるかを考慮しましょう。また、定期的なフィードバックの提供や評価方法の改善も大切です。目標管理は、あくまで組織の目的達成のための一手段であり、その運用において従業員の意欲を高め、スキルを向上させるための有効なツールとなるよう工夫することで、時代遅れとはならず、むしろ組織に新たな活力をもたらす可能性を秘めています。
目標管理に代わる新たな手法とは?
今後の目標管理の代替として、多くの企業が新たな手法を模索しています。それでは、現代における効果的な管理手法について掘り下げてみましょう。
OKRの採用:目標管理の進化系
OKR(Objectives and Key Results)は、目標管理の中でも進化した形として注目されています。この手法は、Googleなどの先進企業で取り入れられ、企業全体の目標と従業員個々の目標を統合する柔軟なアプローチです。OKRの特徴は、組織の目的(Objectives)と、その成功の基準となる成果(Key Results)を明確化し、常に進捗を計測することで、よりダイナミックな経営を可能にする点にあります。これにより、従業員一人ひとりが、大きなビジョンに向けて具体的に自分の役割を果たせるようになり、目標達成のための意識も向上します。
アジャイルマネジメントの可能性
アジャイルマネジメントは、特にIT業界などで注目されている迅速で柔軟なマネジメント手法です。この手法では、従業員を単なる目標達成要員としてではなく、プロジェクトの成長に寄与するパートナーと捉えます。計画を細分化し、短いスプリントを通じて結果を出しつつ、プロジェクト全体を段階的に進めます。この方法を活用することで、迅速な反応や変更への柔軟性を高め、変化の激しいビジネス環境においても常に最適な戦略を取ることができます。アジャイルマネジメントは、組織の垣根を超えた協力的な姿勢を育み、短期間での効率的な成果をもたらします。
自己管理型チームの育成
自己管理型チームを形成することで、伝統的な階層型のマネジメント構造から脱却し、メンバー全員が主体となって業務に取り組む新しいスタイルを築くことが可能です。これにより、チームメンバーは相互に助け合い、各自の強みを最大限に活用しながら、クリエイティブな解決策を追求できます。このようなチームは、自律的に問題を解決し、迅速に意思決定を行う能力を持ち、組織全体の柔軟性とスピードを大幅に向上させます。人事の皆様におかれましては、このようなチームを育成するための環境作りにも注力されることをお勧めします。
まずは運用面の見直しを
目標管理が社員に嫌がられるのはよくある悩みです。その場合、「人事部の制度設計に問題がある!」といわれてしまうことも多く、人事としては辛い立場になるかもしれません。今回、目標管理に代わる手法についても紹介しましたが、けっきょくは制度は取り入れることよりも、運用していくことが難しいということを痛感させられます。目標が「押し付けられている」と感じられたり、具体性がなく漠然としている場合、社員のモチベーションが下がる原因となりがちです。
1on1やフィードバックを取り入れるのは非常に有効なアプローチです。これらを活用することで、社員との信頼関係を築きつつ、目標管理をより効果的に運用することができます。以下、具体的な方法をいくつか挙げます。
1on1の活用
1on1ミーティングは、目標設定や進捗管理を社員と一緒に行う場として活用できます。ポイントは以下の通りです。
個別の状況を理解する:社員それぞれの強み、課題、モチベーションを把握します。 目標を共に作る:上司から一方的に目標を押し付けるのではなく、社員と一緒に「達成可能で意義のある目標」を設定します。
進捗のフォローアップ:1on1で定期的に進捗を確認し、必要に応じて目標やタスクを調整します。
フィードバックのポイント
フィードバックは社員の成長と目標達成を支える重要な要素です。
具体的に、事実に基づくフィードバックを行う:抽象的な指摘ではなく、具体的な行動や結果について話します。
例:「〇〇プロジェクトでクライアント対応が迅速だった点が、非常に評価されている」
ポジティブと建設的なバランスを取る:良い点を伝えるだけでなく、部下にとって耳が痛い点、改善が必要な点についても明確に伝えます。
タイムリーに行う:フィードバックは可能な限り早く行い、リアルタイム感を重視します。
社員を巻き込む文化を作る
目標の意義を共有する:その目標が会社全体のビジョンやミッションにどう繋がっているかを説明することで、納得感を高めます。
柔軟性を持たせる:必要に応じて目標を調整できる仕組みを整えると、社員が「無理やり感」を感じにくくなります。
心理的安全性の確保
1on1やフィードバックを通じて、社員が意見や悩みを自由に話せる環境を作ることが大切です。心理的安全性があると、社員は目標に対する前向きな姿勢を持ちやすくなります。
こうしたことに取り組みながら、目標管理の運用そのものに問題がないかをチェックしてみましょう。目標が細かすぎる、現実的でない、個人の裁量がないなど、従業員の意見に耳を傾けながら改善のポイントを探りましょうOKRやSMART目標のフレームワークを取り入れるのも一案です。
1on1やフィードバックを取り入れ、社員一人ひとりの成長ややりがいに繋がる時間にできれば、目標管理への抵抗感は減り、社員のモチベーション向上が期待できるはずです。なお、PHP研究所では、1on1やフィードバックといったコミュニケーションの側面から、目標管理を機能させ、職場を活性化させる研修プログラムをご用意しております。立教大学の中原淳氏とともに開発した実践的プログラムとなっていますので、ぜひご相談ください。