リーダーに必要な「経営的視座」とは? 3つの特徴と近づくための方法を紹介
2024年10月17日更新
人の成長と「ものの見方・考え方」は密接不離な関係にあります。特に、どのような「視座」で発想し行動するかが、その人の成長を左右します。本稿では、大人の成長と視座の関係性を考察したうえで、視座を高めるためのアイデア、特に組織を率いるリーダーに必要な「経営的視座」をもつための具体的な方法を論じます。
大人の成長と視座の変化
視座とは、「ものごとを眺め、それを把握するときの立場」のことです。「成人発達理論」(※1) の研究によると、大人になっても人は持続的に成長し、そのプロセスで視座が拡大していくとされています。そして、この成長は主に以下の2つの軸に沿って進みます。
1.水平的成長
水平的成長は、知識やスキルの量的拡大・質的向上を指します。これは、専門知識の蓄積、業務スキルの向上、経験の積み重ね、などを通じて実現されます。
2.垂直的成長
垂直的成長は、より重要で深い変化を表します。これには、認識の枠組みの変化、人間性の深化、多様な視点の受容、などが含まれます。
※1 成人以降の人が持つ心の成長に着目し、そのプロセスとメカニズムを理論化した発達心理学の一分野
「経営的視座」とは?
人の成長に応じて視座が変化するのであれば、企業経営においても、組織に位置するポジションによって視座のあり方が変わってくるでしょう。建物の中から見える風景をメタファーとするなら、職務経験の浅い一般社員は低層階から、管理・監督者は中層階から、経営者・経営幹部は高層階からそれぞれ外の景色を見ているのです。見えている景色がそれぞれ違うので、そこから得る気づきや発想も当然、大きく異なります。
組織を牽引する管理監督者以上のリーダーには、会社全体を俯瞰的に見渡し、長期的な視野で意思決定を行う高い視座(経営的視座)が求められます。以下に「経営的視座」の主な特徴を説明します。
・全体最適のスタンス
リーダーは企業全体の利益を考えなければいけません。個別の部門や短期的な成果だけでなく、会社全体としての最適な判断を行うのです。例えば、ある部門の売上が急増しても、それが他部門や長期的な戦略にどう影響するかを考慮します。
・長期的な発想
リーダーは経営者は3〜10年といった長期的なスパンで物事を見る必要があります。短期的な利益だけでなく、将来の成長や持続可能性を重視した意思決定を行います。
・多角的な情報収集
自社の財務状況、市場環境、競合他社の動向、社内リソースなど、社内外のあらゆる情報を多角的に収集・分析します。これにより、バランスの取れた判断が可能になります。
「経営的視座」をもつための実践
視座を拡大し、「経営的視座」に近づくためには、以下のような取り組みが効果的です。
1.批判的内省
自身の信念や前提を根本的に問い直す習慣をつけることです。「自分はできている」「自分は正しい」という思い込みは危険です。
2.1on1ミーティング
他者との対話を通じて、新しい発想・気づきを誘発します。メンターやコーチをつけて、定期的な対話を重ねることはとても重要です。
3.多様な経験
異なる文化や環境に触れることも多くの気づきにつながります。
4.継続的学習
新しい知識や技能を自分にインストールし続ける習慣は重要です。常に学び続ける姿勢をもつことで視座が高まっていきます。
5.フィードバックの活用
他者からの意見に耳を傾けることです。時には耳の痛い意見があるかもしれませんが、謙虚に素直に受け入れることで、自己認識が深まります。
「経営的視座」をもつことの重要性
繰り返しになりますが、リーダーは高い視座から企業全体を見渡す必要があります。これにより、各部門の状況を把握しつつ、部門間の連携や全体最適を考えられるようになります。また、業界全体の動向や社会情勢を踏まえた判断ができますし、さらには想定外の事態にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
したがって、リーダーが経営的視座を身につけることで、組織全体の効率性と意思決定の質が向上し、企業の持続的な成長につながるのです。
的場正晃(まとば・まさあき)
株式会社PHP研究所経営共創事業本部本部長。
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。