内定者懇親会の内容はどうする?プログラムはどうつくる? 実施の注意点も解説
2022年11月28日更新
内定者の入社への意思を固め、組織の一員であるという意識を高めるために、内定者懇親会を開催する企業は少なくありません。具体的にどのようなプログラムを組むことが内定辞退を防止し、内定者と企業のためになるのか。また、内定式との違いや懇親会を成功させる方法について紹介します。
INDEX
内定者懇親会はするべき? その3つの意義
内定から入社までの期間に、内定者研修や内定者懇親会を開催する企業が増えています。内定者研修は、入社後の即戦力としての活躍を目的に、社会人としての心構えやビジネスマナー、パソコンスキルなどを習得させることが多いようです。
参考記事:内定者研修の目的とは? 成功させる方法とプログラムを紹介
一方、内定者懇親会は、以下の3つを目的として実施します。
1.入社に向けて内定者の意思を固める
2.仲間意識を育てる
3.内定者と企業が、お互いをよく知る
1.入社に向けて内定者の意思を固める
内定から入社までには数ヵ月もの長い期間があります。その間、内定者に対して何のアプローチもしないと、内定者の入社に対するモチベーションが低下してしまう恐れがあります。
また複数の企業から内定を受けている学生であれば、ほかの企業への就職に心が揺れることもあります。内定者懇親会を企画し、入社に向けてのモチベーションを高め「この会社で働きたい」という意思を固められるようにサポートしていきましょう。
2.仲間意識を育てる
内定者は少なからず「同期はどんな人が入社するのだろう」「うまく会社でやっていけるだろうか」といった不安を抱えています。同期にどんな仲間がいるのか知らないままに入社日を迎えるのは、内定者にとってとても不安です。内定者懇親会を開催して仲間を知る機会を設けることで、内定者の疑問や不安を解消できるかもしれません。
また、気の合う仲間が見つかれば、内定者はより入社へのモチベーションを高められるでしょう。入社後すぐに離職する社員を減らすためにも、こういった企業側の配慮が必要です。
3.内定者と企業が、お互いをよく知る
就職活動の面接の時点で、学生の本当の性格を知ることは容易ではありません。学生たちは緊張していて、素の姿を見せていない場合があります。
しかし、すでに内定が決まった状態であれば、素の性格や本来の個性も出しやすいでしょう。特に少人数ずつの懇親会であれば、一人ひとりをより深く知ることができます。新入社員研修を準備する際や、配属先を考える際の参考にもなります。
加えて、内定者に会社をよく理解してもらうことも大切です。その会社を十分理解した上で、入社試験を受け内定を獲得したとは限りません。案外、ホームページ上の情報だけでその会社を理解したつもりになっていることが多いものです。したがって、経営幹部の講話や先輩社員との座談会や交流によって、会社の実情を正しく伝える場づくりが大切です。内定者から社員への質問も積極的に受け付けましょう。
ある会社では、次年度の採用に向けてのホームページを一部内定者に作成させることで、内定辞退が減ったという事例があります。一方的に情報を伝えるだけでなく、自分たちで会社の魅力などを考える機会を提供するのも有効でしょう。
採用面接だけでは分からなかった情報を、内定者と企業がお互いに開示し、理解を深めていく工夫が早期離職防止に効果的です。
内定者懇親会の開催方法
内定者の仲間意識を高め、内定者一人ひとりの性格を深く知るためにも、内定者懇親会は、何度かに分けた実施をおすすめします。また、目的に合わせて開催方法も選びましょう。主な方法としては次の4つが挙げられます。
・社内で交流
・食事会や屋外でのアクティビティ
・オンライン飲み会
・オンライン交流会
それぞれの具体的なアイデアやメリット、デメリットについて見ていきましょう。
社内で交流
内定者懇親会は、会社の会議室などを使って開催できます。職場見学を同時に実施すれば、職場環境やワークスタイルを知り、会社という場所に馴染んでもらうきっかけにもなるでしょう。
少人数ずつ集めて内定者懇親会を実施するときも、社内であれば周囲にそれほど気を使う必要がありません。場所代もかからず、心おきなく交流を深めてもらえるメリットもあります。
食事会や屋外でのアクティビティ
レストランなどを予約して、食事会として開催することもできます。食事をしながらであれば話も弾みやすく、よりカジュアルな雰囲気で距離を縮められるでしょう。
また気候が良い時期であれば、屋外でバーベキューや希望を募ってイベントを企画するのもおすすめです。自然とコミュニケーションを取れるので、内定者の性格をより深く知るきっかけとなるでしょう。
ただし、コロナ禍における実施は慎重な判断が必要です。
オンライン飲み会
会社としてお酒の場をリアルで儲けるのは、まだハードルが高い状況です。参加のしやすさを鑑みて、オンライン飲み会として内定者懇親会を開催するのも有効です。就業時間外であれば先輩社員も参加しやすく、内定者同士だけでなく社員との交流の機会にもなるでしょう。
お酒を飲まない人でも楽しめるように話題を提供し、お互いが仲良くなるための機会として活用しましょう。飲食代を一律支給すると、参加のハードルが下がり、モチベーションが上がるかもしれません。同じ食べ物、飲み物が入った「オンライン飲み会セット」を配り、共通の話題づくりをしている企業もあるようです。
オンライン交流会
オンラインで交流会を開催するのもおすすめです。学校が忙しい場合や自宅が会社から遠い場合でも参加しやすいので、内定者に負担をかけにくい懇親会の方法です。
その場合は、オンライン飲み会との差別化で、日中のお茶会をしたり、あるいは事前にアンケートをしてテーマを決めるなど、参加のハードルを下げるといいでしょう。内定者の考え方を知る機会になるかもしれません。
また、オンライン化が進んでいる現代において、今後ますますWEB会議の機会は増えると思われます。オンライン交流会を何度か開催することで、社内のWEB会議システムに慣れてもらえるメリットもあるでしょう。
内定者懇親会のプログラム
内定者懇親会を実施する際には、事前準備が大切です。懇親会で実施するプログラムを明確に決めていないと、単におしゃべりするだけの集まりになってしまい、仲間意識や入社の意思を高めるといった、本来の目的を達成できない恐れがあります。
懇親会のプログラムに含めたい3つの内容について見ていきましょう。
・自己紹介や社員との交流
・社風を伝える映像メッセージや職場見学
・ゲームを使ったグループワーク
自己紹介や社員との交流
内定者同士がお互いを深く知るためにも、最初に自己紹介をしましょう。名前や出身地、特技、サークル活動などの項目を提示しておくと、スムーズに自己紹介が進みます。
また、内定者同士である程度仲良くなれた後は、座談会を企画し、先輩社員と交流する時間をとりましょう。会社生活や仕事内容に関する疑問、入社にあたっての悩みなどを、先輩社員に相談したいと思っている内定者がいるかもしれません。年齢の近い社員に参加してもらえば、話しやすい雰囲気になります。内定者の不安を軽減する機会として活用しましょう。
社風を伝える映像メッセージや職場見学
会社をより深く知ってもらうために、社風を伝える映像メッセージを流すこともできます。各部署を回って職場見学を実施すれば、内定者が入社後の生活をイメージしやすくなり「早く入社したい」というモチベーションを高まるかもしれません。ホームページの情報だけでは分からない社風を内定者に体感してもらえる良い機会になります。また、部署ごとの説明を詳しく行えば、内定者が目指したい仕事を見つける際にも役立ちます。
ゲームを使ったグループワーク
お互いの理解を深めるため、内定者同士で行うグループワークも有効です。グループワークのテーマに迷う場合は、研修用のボードゲームを使うと良いでしょう。一般的なボードゲームを楽しんで終わるのではなく、ビジネスで役立つ学びを得られるものがおすすめです。
「松下幸之助<理念経営>実践ゲーム」は、松下幸之助の経営哲学、マネジメント論を落とし込んだ唯一のボードゲームです。プレイヤー同士が競い合うのではなく、協力してゴールを目指す設計で、チームビルディングやタイムマネジメントの習得に適しています。
プレイ後は、「計画性をもって進められたか?」「コミュニケーションの取り方は適切だったか?」などの問いから振り返りの時間を設けると、ゲームから得られる学びを最大化できます。
内定懇親会の開催で注意する4つのポイント
内定者懇親会を有意義なものにするために留意したい4つのポイントと、その理由をご紹介します。
1.内定式と区別する
2.何回かに分けて開催する
3.最初は少人数ずつ集める
4.内定者の気持ちに配慮する
1.内定式と区別する
内定式は、内定辞退の防止、入社後の定着率の向上など、人を活かし育てる循環をつくる最初のきっかけになります。内定通知書などの書面を渡し、正式な内定を内定者に意識してもらう役割があります。内定式には社長や役員が出席することもあり、内定者にとって緊張感があります。
内定者懇親会を内定式と同日に開催する場合もあるでしょう。その際には合間に昼食や休憩を設けるなど、内定式と区別すると良いでしょう。懇親会ではリラックスできるよう、場の空気を切り替える時間が必要です。
2.何回かに分けて開催する
一度懇親会を開催するだけで、仲間意識を高め、入社へのモチベーションを上げるのはなかなか難しいものです。何回かに分けて開催し、その都度「同期の仲を深める」「先輩社員と交流する」「会社の部署を理解する」などの目的をもった内容にすると、より意味のある懇親会ができるでしょう。
懇親会の回数を重ねることで、内定者同士が親しくなり、仲間を見つけやすくなるメリットもあります。内定者の中には知らない人と話すことが苦手な人もいます。しかし、何度も会う機会があり、かつ人事が孤立しないようにフォローすれば、人見知りであってもコミュニケーションが図れるでしょう。
3.最初は少人数ずつ集める
内定者同士が仲間を見つけやすいように、最初は少人数の懇親会を開催することをおすすめします。気の合いそうなメンバーを揃えて、仲良くなれるようにサポートしましょう。
大勢の前では委縮してしまう人でも、少人数であれば話しやすいかもしれません。あまり会話が弾まないときには、次回の懇親会はメンバーを入れ替えるなどの調整をして、内定者同士の交流が進むように人事側でサポートしましょう。
ある程度仲間を見つけられれば、大規模の懇親会へも参加のハードルが下がり、仲間の輪を広げられます。組織に早く馴染んでもらうためにも、まずは同期入社のなかで気軽に話せる仲間をつくる環境を提供しましょう。
4.内定者の気持ちに配慮する
内定から入社までの期間は、内定者にとっては必ずしも落ち着いて過ごせる期間とはいえません。就職活動がひと段落したことで張り詰めていた気持ちの糸が切れ、「内定ブルー」ともいわれる不安定で憂鬱な気分を味わう人もいます。
いくつかの会社から内定を受け取った学生のなかには、内定を辞退することで内定ブルーになる人もいます。せっかく企業からもらった機会を断ったことや、入社先を決めたことに自信が持てず、気持ちが沈んでしまうかもしれません。
また、卒論や卒業試験、ゼミの発表などが忙しく、気持ちに余裕がなくなる場合もあります。そのような複雑な内定者の気持ちに寄り添うためにも、懇親会や交流の場をつくる工夫が有効です。人事担当者が内定者に個別に声をかける、メールやチャットなどでいつでも相談できる環境を提供するのも大切です。
参考記事:4割が内定ブルーに? 理由や対処法について詳しく解説
内定者懇親会後のフォロー方法
入社までの期間、内定者懇親会に加えたフォロー方法についても検討しておく必要があるでしょう。この時期は学生の本分を果たす時期でもあり、過度な課題を与えるのは好ましくありません。しかし、社会人になる前に、「会社は何のためにあるのか」、「なぜ働くのか」といった根本的な問いに向き合う機会は大切です。仕事や人生について考えさせるような書籍や通信教育を選定し、内定者懇親会終了時に渡すことをお薦めいたします。
内定者懇親会で同期との仲を深め、そのうえで「働くとは何か」について考えることで、内定者のエンゲージメント向上につながります。
内定期間中に社会人としての土台作りを
学生から社会人への節目は、人生にとってたいへん大きく重要な転換期です。社会人のスタートラインに立った内定者は、一人ひとりがいろいろな色を放っているダイヤモンドの原石といえます。彼ら、彼女らはこれからさまざまな仕事や経験を通して、主体的に自分自身を作り上げ、磨きをかけて成長していきます。内定者懇親会は、会社のことをよく知り、仲間を見つける大切な機会です。内定者がスムーズに社会人への一歩を踏み出すには、人事のフォロー、サポートが不可欠です。ビジネスマナーやスキルなどを知識を教えることも重要ですが、まずは社会人になるための土台作り、心の準備が大切なのではないでしょうか。
カタチの前にマインドを。抽象的に感じられるかもしれませんが、自ら考え、行動できる人材を育てていくうえで、このポイントははずせません。そして、そうしたマインドを内定から新入社員の時期に確立させられるかどうかで、入社後のスタートダッシュ、その後ののびしろに大きな差が出てきます。
まとめ:事前準備をしっかりと! 有意義な内定者懇親会を
内定者懇親会は、集合形式やオンライン形式で開催でき、ボードゲームを用いるなど様々な工夫が可能です。内定者懇親会を開催することで、内定者一人ひとりの性格や考え方を理解し、内定者の仲間意識や入社までのモチベーションの向上も実現できます。また、不安や緊張を感じている内定者の気持ちに寄り添い、サポートできるでしょう。
内定者懇親会のあり方やプログラムについて、社内で十分な議論を尽くしていただきたいものです。