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産休・育休、時短勤務の尻ぬぐいはもうムリ!~独身女性社員との軋轢

2017年2月14日更新

産休・育休、時短勤務の尻ぬぐいはもうムリ!~独身女性社員との軋轢

産休・育休、時短勤務、急な休み……。子育てを支援する制度を利用している女性社員に、フォローしている独身女性社員の怒りが爆発。管理職としてどう対応すべきでしょうか。アドラー心理学の考え方からアドバイスします。

産休・育休、時短勤務の尻ぬぐいはもうたくさん

出産や子育て中などで産休・育休を取ったり時短勤務をしていたりする社員と、その他の社員(とくに独身女性社員)との間に生じてしまう軋轢。寿退職や出産退職が当たり前だったひと世代前にはなかった問題です。どうしたらお互いが気持ちよく協働できるのでしょう。アドラー心理学の観点からひも解いてみましょう。

質問

食品メーカーで課長職2年目です。女性部下が2名おり、30歳の女性A子(既婚、妊娠中につき時短勤務、春に3人目出産予定)と32歳女性B子(独身)の仲が悪く、ほかのメンバーの士気にも関わるので困っています。A子はここ6年で3人の子どもの出産や育休、時短勤務などが重なり、フルタイムに戻った途端に妊娠判明ということが続いています。社内制度が整っているので、申請さえあれば会社からのおとがめはありません。一方、B子は入社以来フルタイムで、仕事も優秀、遅刻や欠勤はなく、いざというときに頼れる人材です。先日、子どもがインフルエンザにかかったためA子が急に休みをとることになり、やむをえず有給休暇を取得予定だったB子に休暇の調整をしてほしいと言ったところ、「今までずっとがまんしていましたが、彼女の尻ぬぐいはもうできません!!」とキレられてしまいました。(41歳 食品メーカー 課長)

「子育てサポート企業」と認定されていても……

「子どもは社会の宝」のはずなのに、日本は子育てしづらい国であることが盛んにいわれています。待機児童問題しかり、電車のベビーカー問題しかり。国の対策としては、次世代育成支援対策推進法というものに基づき、一定の基準を満たした企業に「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を与えていたりします。読者のみなさんの中にも、すでに認定済とか、申請中の会社の方がいらっしゃるのではないでしょうか。
制度を整えて、認可されることはもちろん大切なことです。それにより社員全体の意識が変わりますし、学生や求職者の指標にもなるでしょう。でも、本当に大事なのは名刺にそれらしいマークが入っていることではない、ということはおわかりですね。
上記のご相談ですが、両者の言い分を見てみましょう。A子さんの本音は「そのために用意されているんだから、会社の制度を使うのは当たり前。妊娠中だから大事をとりたいし、まわりも配慮してほしい。急に休んだりするのは悪いとは思うけど、子どもが小さいんだから、風邪をひいたり保育園から呼び出されたりっていう不測の事態が頻繁に起きるのもしかたない。B子さんは独身で融通が利くんだし、その程度のことはサポートしてくれて当然じゃないですか?」。
B子さんの本音はどうでしょう。「6年間ずーっと、自分の仕事以外にA子の尻ぬぐいをさせられていて、もうがまんの限界です。ようやくフルタイムに戻るかと思えばまた産休。妊娠中もまるで『妊婦様』だし、急に休むときも『すみませ~ん』とは言うけど全然悪びれていないし。本当に不愉快です。まわりもまわりで、そういうときの仕事の対応は私に押しつければ『文句言いながらもあいつはやるよ』と思っています。独身の女性社員は子育て中の社員と違って好きなときに休みをとることもはばかられるなんて、冗談じゃありません」。
では、まわりの本音はどうでしょう。課長は「お願いだからうまくやってくれよ」。その他スタッフは「A子さんもA子さんだけど、B子さんのつっけんどんなピリピリした対応が妙な緊張感を生むんですよね。仕事はできる人だけど、うーん……。やりづらいです」。

「独身だから肩代わりして当然」ではない

A子さん、B子さん、そしてこの相談をした課長も含めたまわりに欠けているものはなんでしょう。それは「共感力」「共同体感覚」です。
「共感」とは? アドラー心理学の祖、アルフレッド・アドラーは「相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じること」と言いました。「私だったら」とか「自分なりに」ではないのです。A子さんとB子さんはお互いに共感しておらず、相手の立場を思いやっていない。とくに他者に仕事を肩代わりしてもらう側のA子さんは、B子さんに配慮が必要です。それは「申し訳なく思え」とか「常にペコペコしろ」というのではありません。忘れてはいけないのは心からの「感謝」の気持ちです。「B子は独身だから肩代わりして当然」と思っているA子さんには、考えを180度転換してもらわなければなりません。
B子さんのピリピリした感じも、この立場だったらわからなくもないですが、でも、いつ自分がまわりに助けてもらう立場になるか、それを想像することは大切です。
以前、某シンクタンクのトップの方(男性、50代後半)がおっしゃっていたことを記しておきます。
「昔、育休や産休、時短勤務をする社員に対して、心の中ではいっそ辞めてくれと思っていました。でも去年、実家の両親が相次いで倒れ、一人っ子の私はいっぺんに介護をすることになりました。妻は遠距離に住む彼女の親の面倒を見ていて、それだけで手いっぱいです。親の通院や世話で時短にせざるを得なかったり、急に病院に呼び出されることが続いたりした際のまわりへの申し訳なさを感じたとき、今までの自分がどれだけ間違っていたかわかりました」。

「共感」と「共同体感覚」

もうひとつ大切なことは「共同体感覚」です(アドラー心理学に学ぶ「勇気づけ」の職場づくり「職場のメンバーに共同体感覚を育む大切さ」)。自分が所属する共同体(職場、家庭、友人関係、地域社会など)に対する「所属感」「共感」「信頼感」「貢献感」を総称した感覚・感情をアドラー心理学では「共同体感覚」と呼びます。職場に居心地のよさを感じ、一人ひとりの違いを認めつつも共感しあい、信頼することができ、そしてそのチームに貢献することに喜びを感じる。理想ですが、絶対無理な姿ではないはずです。その共同体をつくるのは一人ひとり。
課長職である相談者の方は、「共感」「共同体感覚」をキーワードに、チームの皆と今一度個別に、そして全体で話し合う時間をとってみてはいかがでしょう。それは誰が悪いのか犯人捜しをしたり糾弾したりする会ではなく、「どうしたらこの課の皆が共同体感覚を育めるか」を語る会です。
まず個別のヒアリングをすることによって、各人が抱えている不満や不安、そして後ろ向きなことだけでなく、その課に対して各人がどのような貢献ができるのかを事前に課長が把握し、交通整理をしておく。そして全員が集まるときまでに、課長は「一つの共同体である課の目指すところ」を明確にし、それを達成するのに障害となる現状の不満や不安を各人の貢献によっていかに解消していけるか(=共同体への貢献と目標の一致、結束を目指すこと)について前向きに話し合える場ができるのではないでしょうか。

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【著者プロフィール】
永藤かおる(ながとう・かおる)
(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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