組織に好循環を生み出したリーダー養成プロジェクト~京都中央信用金庫様
2025年11月21日更新

信用金庫として国内トップの規模を誇る京都中央信用金庫様は、風土改革と個人の成長を同時に促すリーダー向け研修「松下幸之助 5つの原則」を導入され、各支店で様々な取り組みを実践されています。 本記事ではその具体的な取り組みについて、詳しくご紹介いたします。
INDEX
京都中央信用金庫
本店:京都府京都市下京区/創立:1940年/事業内容:地域金融機関としての預金・貸出業務、経営サポートなど
「On Your Side」に向けたリーダー育成プロジェクト
京都を中心に近畿圏で132の支店を展開し、「中信(ちゅうしん)」の愛称で地域のお客様に親しまれている京都中央信用金庫。「ON YOUR SIDE~一緒がうれしい~」を合言葉に、常にお客様に寄り添う良きパートナーであり続けることを目指しており、その実現に向けて人材育成にことのほか力を入れている。
コロナ禍においてもその姿勢は変わらず、2021年にPHP研究所のリーダー養成研修プログラム「5つの原則」を全支店長が1年間をかけて受講。そこでの学びの実践が、今それぞれの現場で図られているという。人材開発やCSRなどを担うOn Your Side事業部の林万祐子次長は、「人づくり」に寄せる思いを次のように話してくれた。
「当金庫は信用金庫としては規模が大きく、支店数もたくさんあります。どこの組織でも規模が大きくなってくると、縦割りの官僚的な組織文化になってお客様へのサービスの質が低下する傾向があります。そうならないように自主的・能動的に考えて行動できる人材を育成することに取り組んでいます。特にこれからの金融業界で生き残っていくためには、それが必須になってくるでしょう。
そこで京都中央信用金庫では、2020年に迎えた創立80周年を機に『リーダー育成プロジェクト』を立ち上げ、リーダーの育成に取り組んできました。要となる支店長や本部の管理職にチームマネジメント力を高めてもらい、より強い現場づくりを通じて、部下育成へと広げていくイメージで考えています」

On Your Side事業部 林万祐子次長
今回の「リーダー育成プロジェクト」は白波瀬誠理事長の肝いりで、On Your Side事業部だけでなく、人事部と戦略企画部の3部署合同で推進する特別なものだという。まさに全組織を挙げた一大プロジェクトであり、京都中央信用金庫の人材育成にかける本気さがうかがわれる。
ジャガイモ栽培で支店改革!? 日々育まれる一体感
研修プログラム「5つの原則」では、複数回の集合研修で強い現場づくりのメソッドを学び、リーダーに必要な人間力を養う。
またそれと並行して各回のあいだに現場で変革に取り組み、実践的なリーダーシップを磨いていくという仕組みになっている。そのため、集合研修に留まらず、日々の職場自体が学びの場であるといえる。実際にどのような取り組みや学びがあったのか。山科中支店の長谷川雄一支店長(研修時は樫原支店)にうかがった。
「最初の集合研修では、1つ目の原則として『使命を正しく認識する』ということを学びました。そこでまず支店の全職員に、自分たちの使命は何か、どんな風になりたいか、アンケートで聞き取りを行なったのです。どちらかというと、職員たちはお互いに無関心になっていて、全体のミッションを自分事ととらえていないのではないかといった印象があったのですが、アンケートではお客様を喜ばせたい、地域社会に貢献したいという声がほとんどで、自分と同じ方向を向いてくれていることをうれしく思いました。

山科中支店 長谷川雄一支店長
それを受けて支店のミッションに定めたのが、『お客様とWIN-WINの関係性を構築できる集団になること』です。その第一歩として、支店内をとにかく明るい雰囲気に変えたいと思い、みずから"声出しリーダー"に徹してメンバーに声をかけ、いいコミュニケーションができる環境づくりに取り組みました」
まずは、職員同士の信頼関係を高めるところから取り組んだということだが、それに大いに役立ったのは、なんと「ジャガイモの栽培」だという。
「提案したのは、窓口業務を担当する入社4年目の女性職員でした。みんなで一緒に野菜を育てたら、気持ちが一つになるんじゃないか、と。それにどの程度効果があるか、私自身もよくわかっていませんでしたが、職員が出してくれた意見はできるだけ取り上げて、実現したいと思っていました。それが職員たちの自発性を引き出すことにつながるからです。
実際にジャガイモの栽培をやってみると、毎日水をあげたりする中で会話が生まれ、支店内が和やかな雰囲気に変わっていきました。虫が出たり、過って枝を全部剪定してしまったりと失敗もありましたが、最後は収穫したジャガイモをみんなで調理して、美味しくいただきました。その過程で本当に支店内の気持ちが一つになったと実感できたので、やってみてよかったなと思います」(長谷川支店長)
ジャガイモ栽培は素人でも比較的簡単にできるのでオススメだとか。この取り組みは京都中央信用金庫内でも話題になり、野菜の栽培がちょっとしたブームになりつつあるようだ。久我支店の西村崇支店長(研修時は百万遍支店)は、現在の支店のプロジェクトとして京都の伝統野菜である畑菜(はたけな)の水耕栽培に取り組んでいるという。
「畑菜は支店のある久我地域で昔からよく栽培されていて、"久我菜"とも呼ばれています。支店のみんなで種つけをしてロビーで育てていますが、芽が出ただけでも支店内が盛り上がるんですね。農家の方とも交流が生まれました。無事に育ったら、地域のレストランでメニュー開発をしてもらったり、イベントを開催したりしてブランド京野菜として広めたいと、地域とともに盛り上がっていく壮大なプロジェクトをみんなで語り合っています」(西村支店長)
職員がチラシ配りまで!? 「デカ盛り」で地域活性化
夢のような話と思えるかもしれないが、西村支店長にはそのように地域を盛り立てていった実績がある。前任の百万遍支店で2021年10月に「百万遍! 京のデカ盛り! すとりぃと」なるプロジェクトを立ち上げ、メディアでも多数紹介されるなど、地域の活性化に貢献した。
「コロナ禍で地域の飲食店の皆さんが辛い思いをされているなかで、私たちに何かお役に立てることはないだろうかと支店のみんなでアイデアを出し合ったのが始まりです。もともと学生さんの多い地域ですから、デカ盛りメニューを提供すればお客さんも満足され、お店や地域も賑わって喜ばれるのではないか、と。
お店に参加を呼びかけたり、チラシやポスターをつくって街で配り、貼ってもらえるようお願いしたりなど、支店のみんなで取り組みました。通常の業務とまったく違う仕事なので、全員が前向きに取り組んでくれるのか不安がなかったわけではありませんが、『地域のお客様のために』というミッションやビジョンがかなり共有されていたおかげで、みんな一生懸命動いてくれましたね。
結果としては、飲食店をはじめとした地域のお客様に、『中信さんはここまでやってくれるのか』と信頼を寄せていただけたことが大きな収穫です。それと支店内では、私たちの使命を果たしていくための考え方や行動が明確になり、共有されたのではないかと手応えを感じています」(西村支店長)

久我支店 西村崇支店長
対話などで関係の質が高まれば、思考の質、行動の質の向上がもたらされ、それがよい結果へとつながる――。研修プログラム「5つの原則」で強調されるダニエル・キム元MIT教授の「成功循環モデル」でいうグッドサイクルが、百万遍支店の取り組みに見てとれる。
「『成功循環モデル』については本当に目からウロコでした。今までは、結果の質を追求する意識から始まっていたために、メンバー間の関係も必ずしも良好とはいえず、思考も行動も振るわないというバッドサイクルに陥っていたことに気づきました。そうではなく、『関係の質』から始めればいいんだ、と。ですから、今の久我支店でも肯定的な人間観を大事にして、私が感銘したことを動画などでみんなに伝えて共有してもらえるように努めています」(西村支店長)

支店長で支店は変わる! 若手職員に生まれてきた変化
このような取り組みによって生まれつつある現場の職場風土の変化については、本部のほうでもひしひしと感じているという。On Your Side事業部の林次長は、こう話す。
「これまでにいろんな支店を見てきましたが、やはり支店は支店長次第で大きく変わるものなんですね。好循環が生まれている支店は、お客様への対応や業績はもちろんいいですし、それ以前に雰囲気も明るく整理整頓も行き届いていて、訪問すればすぐにわかります。逆にそうでない支店は、そもそも活気がなくて職員同士のコミュニケーションがよくありません。支店長と役席者や職員の向いている方向がバラバラというか......。だからいろいろと解決すべき課題があり、さらに雰囲気が悪くなる。それはお客様にも伝わってしまいますので、まさに悪循環です。
でも、支店長の姿勢や考え方、取り組みが変わると、職員にもそれが伝わって、いい流れが生まれてくる。実際に、今回のプロジェクトがきっかけでいい取り組みができるようになった支店の若手職員からは、支店長も支店の雰囲気もすごく変わってよかったという声が聞こえてきます」
事務サポート部の岩井由香次長(研修時は人事部)も若手職員の変化を感じている。
「支店を訪問して若手職員の意見を聞いてみると、悩みながらもいろんな意見を出し合って、取り組むことを考えていました。これまでは意見することに戸惑いもあったようですが、今回のリーダー育成プロジェクトを通じて、若手職員を中心に積極的に意見を出し合い、行動できるようになってきていると感じています」

事務サポート部 岩井由香次長
同じく若手職員の成長に手応えを感じている戦略企画部の上田未来業務役は、職場の活性化に期待を寄せる。
「若手職員の話を聞くと、先ほどの野菜づくりもそうですし、挨拶や掃除に力を入れるなど、自分で考えて率先して取り組もうとしてくれています。それによって支店内だけでなくお客様ともいい関係が生まれてきて、小学校で出前授業を行なったりと、活動が少しずつ発展していっているのです。
"No Play,No Error"ではなくて、まずはやってみる。それがどんな結果につながるのか最初はわからなくても、自分たちの発想を生かして協力し合ううちに、何か収穫が得られるということを、若手職員たちは実感してくれているようです。職場でわくわくしたり、どうやったらもっと楽しくなるかという発想を持つようになってきているのが本当にうれしいですね。職場にいい影響が生まれていると感じます」

戦略企画部 上田未来業務役
PHP理念経営研究センター 主席研究員で、「5つの原則」プログラムの開発責任者でもある的場正晃(取材時は人材開発企画部長)によると、人材育成において本部の施策と現場の取り組みが乖離している例がよく見られるが、ここまでうまく連動しているのは稀だという。それは現場を本部がきめ細かくサポートし、よい取り組みがあればその情報を汲み上げて横展開を図っているからだろう。京都中央信用金庫が大事にする「寄り添う」姿勢は、そんなところにも見てとれる。これからもどんな好循環が生まれていくのか、期待は高まるばかりだ。
取材・文:佐々木賢治 写真撮影:白岩貞昭
※部署名や役職名は、取材時のものです。
本記事は、電子季刊誌『[実践]理念経営Labo』Vol.2(2022年7月)から転載したものです。登録不要、全編無料でお読みいただけますので是非ご覧ください。





































































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