こんなにある!「1on1」の失敗事例。その原因とは?
2021年6月25日更新
人事部主導で「1on1」を導入したのに、部下育成に効果がみられない、説教の場になっている、制度として定着しない――そんな失敗事例が続々と生まれています。どこに原因があるのでしょうか。
1on1の失敗事例はこんなにある!
1on1は、ここ数年で、もっとも普及した人材育成の方法のひとつといえます。「ヤフーの1on1」として有名になり、導入する企業が続々と増えてきました。ところが、1on1を導入した企業では、さまざまな失敗事例が生まれているようです。
1on1の失敗事例
・上司も部下も「忙しい」と言って、次第に面談の場がなくなった
・話すことがなく、「雑談タイム」になってしまった
・上司が「昔の武勇伝」を語る時間になってしまった
・15~30分の会話のつもりが、気づけば上司が2時間も説教していた
・部下が「急ぎの仕事が......」といってドタキャンした
・オンラインで1on1をしようとしたところ、上司が不慣れでうまく接続できなかった
・部下がにぎやかな場所にいたので、オンラインでの会話が成立しなかった
みなさんの周りでも、このような失敗が生まれていないでしょうか。
せっかく導入したにもかかわらず、期待される効果が発揮できないばかりか、「1on1って意味あるの?」とネガティブな印象を持たれてしまうのは非常にもったいないことです。
中原淳氏と再確認した「1on1の定義」
PHP研究所では、人材開発・組織開発の第一人者である中原淳氏(立教大学経営学部教授)とともに、「世にはびこる1on1失敗を撲滅する」という目的を掲げ、2019年秋から1on1の研究とコンテンツ開発を行なってきました。
プロジェクトのスタート直後、私たちは「1on1の定義」を数カ月かけて議論しました。その時点ですでに1on1はブームのようになっていて、一定のイメージができあがっていましたが、企業の現場でうまくいっていない現状を踏まえて、定義から見直すことにしたのです。
そこでまとまった一つの考えが、「1on1は上司と部下の共同作業である」です。一般に、「1on1は会社が実施する施策」「上司が部下を呼んで実施する面談」というイメージが強いものでしたが、1on1の真の目的が「部下の振り返りをサポートし、成長を促す」である以上、部下の積極的な参画が不可欠だと考えたわけです。その思いが「共同作業」という言葉に込められています。
【PHP研究所バージョンの1on1の定義】
部下の行動の振り返りを、上司と部下がペアで行ない、お互いの成長につなげる人材育成の手法
1on1を実施するための部下(メンバー)への支援が足りない!
PHP研究所では、2020年10月、講師派遣型「上司と部下がペアで進める1on1入門研修」と DVD『上司と部下がペアで進める「1on1」』の完成お披露目をかねて、中原淳氏のオンライン講演会「1on1の失敗学」を開催いたしました。本講演会には、弊社とご縁のある企業の人事ご責任者・ご担当者に参加いただきました。終了後には、1on1や人材育成に関するアンケートを実施したのですが、その結果が興味深いものだったので、一部ご紹介します。
「1on1推進にあたって、上司と部下に対して、会社側がどの程度の支援(サポート)を行なっていますか? 」という設問に対して「少ない」「中程度」「多い」から一つ選んで回答(N=258)。左のグラフが上司に対する支援、右が部下に対する支援の回答割合。
このイベント自体、これから1on1の導入を検討している人事部門の方々の参加が多かったこともあり、全体的に支援が少なめという結果でしたが、それでも上司に対する支援に比べ、部下への支援が少ないという結果がはっきりと出ました。先述のとおり、1on1は「上司と部下の共同作業」であるにもかかわらず、この調査からは「共同作業」の一方の担い手である、部下(メンバー)への教育が十分に行われていない実態が読み取れます。
メンバー向け1on1DVDの開発
このオンラインイベント開催後、私たちはすぐに、部下(メンバー)に1on1について学んでもらうDVD教材の制作にとりかかりました。それが、8月に発刊予定の中原淳氏監修 DVD『経験を成長につなげる1on1』です。(詳しい内容はリンク先でご確認いただけます。)
このDVDでは、メンバークラスが1on1を実施するための考え方や進め方だけでなく、1on1におけるもっとも重要な要素の一つ「振り返り」についての解説も収録。「自分で自分の経験を振り返る方法」「他者の力を借りて経験を振り返る方法(=1on1)」という2つの振り返りの方法を、ケースドラマの主人公たちの仕事がうまくいかずに悩み奮闘する姿を通して学んでいきます。
また、このDVDには「1on1の典型的な会話ケース」も収録されていますが、これは、上司向けDVD『上司と部下がペアで進める「1on1」』と同じケースドラマになっています。解説部分については、それぞれ上司向け、部下向けになっていますので、この2つのDVD教材を同時にご活用いただいた際に、学びを共有していただけます。
1on1の失敗をなくし、その成果を最大限に引き出すために、メンバークラスへの1on1教育もぜひご検討いただきたいと思います。(PHP研究所 産業教育制作部)