部下が上司を評価する仕組みを作る~ガリガリ君の赤城乳業に学ぶ
2015年8月 4日更新
アイス業界のメガヒット商品「ガリガリ君」で知られる赤城乳業の、部下が上司を評価する仕組みを『[図解]ガリガリ君が教える! 赤城乳業のすごい仕事術』からご紹介します。
部下が上司を評価する仕組み
多くの会社同様、赤城乳業でも担当業務の状況や異動希望などを社員一人ひとりから聞く自己申告の仕組みが導入されている。
他社と大きく異なるのは、自己申告の中に委員会やプロジェクトでの貢献に関する項目があることと、自己申告に加えて、部下が上司について評価する「上司評価シート」が用意されていることである。
上司評価は、上司に対する社員の本音を聞き出すものだ。だから、評価シートは上司を経由せず、人事担当者に直接送られる。目を通すのは社長、専務、管理担当役員のみだ。
上司評価シートの内容は各本部によって多少異なるが、約20の質問項目からなる。コミュニケーションの程度、方針や指示の明確さ、支援や助言の程度など、上司にとってはシビアな項目が列挙されている。
どの本部のシートも、一番最初の質問項目はコミュニケーションについてだ。
井上社長は対話の重要性を強調し、「管理職の仕事の8割は部下との対話だ」と言い続けている。それが実践されているかを確認し、問題点を洗い出すのが、評価シートの目的だ。
たとえば開発本部では「上司は定期的にミーティングを実施していますか?」という質問があり、回答の選択肢として、(1)毎日、(2)週一、(3)不定期、(4)実行していない、の4つが用意されている。評価シートによって、現場の実態があぶり出される。
緊張感がよいコミュニケーションを生む
シートの最後には、「あなたの上司を評価すると?」というきわめてストレー卜な質問が用意されている。回答の選択肢は、開発本部だと次の4つになる。
(1)80点以上......一緒に頑張れる
(2)60点以上......学ぶ点は多いが物足りない
(3)40点以上......あまり期待していない
(4)40点未満......早くこの上司から離れたい
営業本部では、この(1)が「尊敬している。自分自身の目標の人物である」「尊敬している。仕事にやりがいを感じさせてくれる」の2つに分かれている。
部下によるこのような本音の評価は、上司に緊張感を与える。部下に見られているという意識を持ち、言動に注意を払い、より積極的に部下を育て、支援するように動く。部下にも緊張感が生じる。総務部のKさんはこう言う。
「人事異動を見ると、上司評価が反映されているなと感じる時がある。ちゃんと見てくれていると思うと、いい加減な評価はできないし、責任を感じる」
「評価は上が下に対して行うもの」というのが一般的だが、赤城乳業では「下も上を評価する」仕組みが定着している。相互に評価することによって、フラットな関係性が生まれるのだ。
「仕事が楽しくなる」「人が育つ」強小カンパニーが大切にしていること。アイス業界のメガヒット商品「ガリガリ君」を生み出した赤城乳業のユニークな仕事術を、豊富なイラストとともに解説する。
【著者略歴】遠藤功(えんどう・いさお)
1956年、東京都生まれ。早稲田大学大学院商学研究科(ビジネススクール)教授、(株)ローランド・ベルガー日本法人会長。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機(株)、米系戦略コンサルティング会社勤務を経て、現職。ローランド・ベルガードイツ本社の経営監査委員、カラーズ・ビジネス・カレッジ(CBC)学長、中国・長江商学院客員教授なども務める。おもな著書に『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』(以上、東洋経済新報社)『課長力』(朝日新聞出版)『伸び続ける会社の「ノリ」の法則』(日経プレミアシリーズ)『経営戦略の教科書』(光文社新書)『ビジネスの"常識"を疑え!』(PHPビジネス新書)など多数ある。