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人事(HR)の仕事内容と役割~求められる知識・スキル・キャリアプランを解説

2022年10月13日更新

人事(HR)の仕事内容と役割~求められる知識・スキル・キャリアプランを解説

人事で行う業務は、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち「ヒト」に関する仕事です。その業務は多岐にわたり、人事担当には多くのスキルが求められます。本記事では人事の仕事に関心がある方や人事に配属された方、もしくは人事部門に異動になった方に、人事の仕事内容や求められるスキルを紹介します。

INDEX

企業における人事の役割

企業における人事の役割は、自社の企業理念に基づいた「求める人材像」に合致した人材を採用し、能力を発揮できる仕組みをつくり、適材適所に配置するなど、人材を経営に活かす活動を推進することです。
人事は総務と並べて語られることもありますが、業務範囲は異なります。総務部の業務範囲は広く、受付業務や備品管理など就業環境に関わる業務を行うほか、経理や法務、広報までさまざまな業務を含むものです。人事はその一部で、主に人材に関する業務や計画立案、遂行を担います。人事と総務の仕事がどのように行われているかは、主に会社規模によって異なり、人事と総務が分かれている会社もあれば、人事総務部として一体になっている会社もあります。

人事の仕事内容

人事の仕事内容は、大きく分けて以下の5つに分類されます。

●人材採用
●人材育成
●人事評価
●労務管理
●人事制度の企画立案

人事の役割は人材を活かして組織を活性化させることで、そのために社内や社外でさまざまな施策を行います。人事担当者が実際に携わる仕事内容は、同じ人事でも企業の規模により大きく異なるのが特徴です。人事の仕事内容について、大企業・中小企業・ベンチャー企業に分けて見ていきましょう。

大企業の人事の特徴・業務内容

社員数の多い大企業の人事部は、業務の効率化を図るため、業務ごとに縦割りの組織運営が行われる傾向があります。前述の5つの仕事内容に業務が分かれているだけでなく、さらに細かく分類され、それぞれに担当者が配置されるのが一般的です。
たとえば人材採用に関しては、新卒、中途採用、パート・アルバイトというように担当者がわかれ、さらに「採用プロモーション」や「面接管理」、「内定者フォロー」、「入社後フォロー」などそれぞれの分野で担当があり、各分野でのプロフェッショナルが育成されています。
そのため、人事担当者は他の業務を兼務することなく、人事の仕事に集中し、スペシャリストとして知識やスキルの向上を図ることができます。
ただし、幅広い業務に携わることがないため、人事の全体像を把握するのが難しいといえるでしょう。

中小企業の人事の特徴・業務内容

社員数の少ない中小企業は、大企業のように業務によって担当係やチームに分かれることはなく、幅広い人事業務を1人で担当する企業も少なくありません。場合によっては、人事担当者が一部の総務・経理業務を兼任するケースもあります。
そのため、中小企業の人事担当者は、さまざまな人事業務を幅広くこなせるマルチな能力が求められるでしょう。幅広い知識とスキルが必要になり、そのための自己啓発などが求められることもあります。
人事業務の全体像を掴みやすいのがメリットで、短期間で多くの経験を積んで責任のあるポジションを任せられる可能性もあるでしょう。

ベンチャー企業の人事の特徴・業務内容

ベンチャー企業は、一般的に社員が少なめです。設立まもない企業では、組織体制が十分に整備されていないケースもあります。そのため人事や総務を兼任することが多い傾向です。
基本的に中小企業と同じく1人が多くの業務を抱えることが多く、そもそも人事部がない企業も少なくありません。採用されたら、その会社の初めての人事担当者だったというケースもあります。ベンチャー企業は社員の裁量が大きいことが特徴ですが、人事担当者にも大きな裁量が与えられるケースは多いといえるでしょう。

人事に必要な8つの基本スキル・知識

人事に必要な8つの基本スキル・知識

人事の仕事にはさまざまなスキルや知識が求められます。まず、人材採用の場面ではプレゼンテーションやコミュニケーションのスキルが必要です。社会と社内それぞれの情報を収集する能力も欠かせません。また、特に中小企業やベンチャー企業ではマルチタスク処理能力が必要とされるでしょう。
ここでは、人事に必要とされる8つの基本スキル・知識をご紹介します。

1.プレゼンテーションスキル

人事担当は求職者に向けては会社の顔であり、会社説明会などで求職者を惹きつけることができるプレゼンテーションスキルが必要です。話したい内容を簡潔にまとめ、伝えたい主張はしっかりと明確に示して会社の魅力を伝えるプレゼンテーションスキルが求められます。
プレゼンテーションは社内研修などの場面でも必要ですから、まず身につけておきたいスキルといえるでしょう。話すスキルだけでなく、魅力的なプレゼン資料を作成する能力も求められます。

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2.コミュニケーションスキル(聴く力・伝える力)

人事は人と関わる場面が多く、コミュニケーションスキルが欠かせません。採用の場面では初対面の面接者とコミュニケーションを取り、人材育成や評価に関する業務では社員・管理職と連携を取るなどコミュニケーションスキルが必要になる機会は多々あります。
それ以外にも、人事制度の企画立案では、経営層と話し合う場面もあります。社会保険労務士や産業医といった専門家とともに仕事を進める機会も多くいでしょう。社内外の、さまざまな立場の人とスムーズなコミュニケーションを取る能力は欠かせません。
具体的には、相手の話に耳を傾ける「聴く力」と、自分の意見や会社の方針を相手に分かりやすく伝える「伝える力」が求められます。これらコミュニケーションスキルは、実際の業務を通じて磨くこともできるでしょう。

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3.情報収集力・情報管理力

人事の仕事には情報収集力・情報管理力も必要です。人に関する業務の全般を担う人事は、社内の細かな情報を把握しておかなければなりません。
社員がどのような要望を持ち、何に困っているのかなどの情報を拾い上げ、人事評価や福利厚生などへの反映させます。正しい情報を収集するには、社内のコミュニティに参加するなど社員との人間関係構築に努める必要があります。情報を集めることで適切な人員配置ができ、問題を早期に発見してトラブルを防止することもできます。
社内情報だけでなく、労務関係の法改正に関する情報の収集や、社会の動きを追うなど、社外の情報収集も大切です。

4.マルチタスク処理能力

中小企業やベンチャー企業など、人事担当が複数の仕事を兼任する場合に、特に必要になるのがマルチタスク処理能力です。マルチタスクとは、1つのタスクに集中しながら他のタスクの経過も追い、同時に複数の仕事を管理する能力です。
具体的には、予定を整理してタスクの進捗状況を把握できる、優先順位をつけて時間を有効に使える、スケジュールを立ててその通りにタスクを完了できるといった能力が求められます。
日常の定例業務を進める一方で、突発的に起こる業務にも柔軟に対応し、タスクごとに頭を切り替えながら仕事をこなしていく能力が必要になるでしょう。

5.ライティングスキル

人事にはライティングスキルも求められます。たとえば、求人広告など社外に出す資料を用意する、あるいは自社のWEBサイトに求職者向けの記事を作成するといった業務では、要点を押さえた読みやすい文章で求職者に会社の魅力を伝えるコンテンツを作成する必要があります。社内向けに情報発信することも多く、ライティングはさまざまな場面で必要になるスキルといえます。
ライティングスキルを高めるコツは、ライティングの数をこなすことです。慣れないうちは他の人の書いたものを参考にしながらできるだけ多くライティングし、クオリティを高めていくとよいでしょう。一度身につければ、人事以外の幅広い仕事に活用できます。

6.事務処理能力

他の業務と同じく、人事にも事務処理能力が必要です。事務処理能力とは、書類作成やデータ入力、数字の計算などデスクで行う処理作業をスムーズに行うスキルです。事務処理能力が高ければ業務効率も上がります。特にマルチタスクが要求される中小企業やベンチャー企業の人事担当には、高い事務処理能力が求められるでしょう。
オフィスのデジタル化が進んでいる今日、人事に関する資料の多くはWEB上のデータで管理されています。クラウドの人事・労務管理ツールを導入している会社も多いでしょう。そのため、人事の仕事にはツールを使いこなすスキルも必要になります。

7.モラルやコンプライアンスの意識

モラルやコンプライアンスの意識は、人事担当者だけではなく全社員に求められますが、人事は社内でコンプライアンス違反やハラスメントが起こらないように環境を整える部署でもあることから、担当者として十分に理解しておかなければなりません。と同時に、コンプライアンス違反が起きない環境づくりに努めることが求められます。

8.関連する法律の知識

人事担当者は、労働法や社会保障などの法律知識を身につけておく必要があります。労働法は企業で働く労働者について定めた複数の法律の総称で、特に労働三法といわれる「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」は重要です。
他にも「労働契約法」や「男女雇用機会均等法」など、人事担当が知っておくべき法律は数多くあります。特に労務系の法律は改正されることが多く、最新情報の確認は欠かせません。改正にあわせた就業規則の変更など、社内整備は迅速・的確に行う必要があります。

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将来の人事により一層求められる5つの役割・スキル

人事部門はこれまで、制度の運用や労働環境の整備といった管理業務がメインとされてきましたが、昨今は、人材開発やモチベーションの喚起などが重視される傾向です。人事担当者は現場に足を踏み入れて現状を把握し、これからますます重要になるこうした課題に取り組むことが求められています。
ここからは、将来の人事に特に求められる役割やスキルについて、見ていきましょう。

1.人材育成・教育の役割

急速に変化するビジネス環境においては、スピード感をもって、人的リソースを適切にマネジメントしていく重要性が増しています。
変化が激しい時代においては経営環境の変化も大きく、変化に対応して自らも変革できる人材が必要です。求められる人材が変化するとともに、人事に期待される役割も変化しています。迅速に人的リソースをマネジメントすることが重視されており、そのような状況で注目されているのが「戦略人事」という言葉です。戦略人事とは、経営戦略を達成するために人材育成に取り組むという考え方です。

「企業は人なり」といわれますが、社員の活躍は業績に直結するものであり、人材育成・教育は経営上の最重要課題といえるでしょう。将来の事業のあり方を踏まえ、必要なスキルを分析し、中長期的な視点をもって、継続的に人材育成に取り組むことが求められます。
戦略人事を実現するには、自社の経営戦略を理解し、現場に出向いて現状を把握し、課題を発見し、そして人事面での解決策を提示できる能力が求められます。経営戦略を遂行する能力は、これからの人事担当者に求められる力の一つといえるでしょう。

2.社員のモチベーションを向上させる役割

社員のモチベーションは、企業の生産性に直接的に影響を与えます。モチベーションが低下すると、最悪の場合、社員の離職を招くこともあります。そのため、人事には社員のモチベーション向上を図る施策の立案、遂行が求められます。
そのひとつが、人事考課制度の見直しです。人事考課については、社員の関心が高く、また一般的に社員の不満を生みやすい場面であるともいわれます。特に考課者訓練が不十分でアンコンシャスバイアスに対応できていない場合、社員は上司への不満から会社への不信感をもつこともあります。こうした状況を防ぐためにも、人事部門では経営層とともに、社員が納得できる人事考課制度を設計し、考課者訓練にも取り組む必要があります。人事考課が納得できるものであれば「自分の働きが認められている」と感じ、社員のモチベーションを高めることができるでしょう。

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3.戦略構築力

これからの人事には、戦略構築力が求められます。例えば、優秀な人材の採用により業績が上がる、管理職のマネジメントスキルが向上することで組織力が強まるなど、人事戦略とそれに基づく施策は、経営に大きく影響します。
人事には人材採用や人材育成・制度の見直しなど複数の手段があり、課題解決や目標達成のための施策を行いやすいのがメリットです。人事戦略を考えるうえで、経営戦略を理解することは欠かせません。人事担当者には、経営視点からの戦略を考える能力が求められるでしょう。

4.マーケティング能力

社員の価値観が多様化するなかで優秀な人材を確保するために、人事担当者にもマーケティング能力が必要になります。マーケティング能力が求められるのは、次のような場面です。

●自社の目指すビジョンや理念を新入社員に発信する
●スキルアップやキャリア形成できる制度の意義を周知させる
●社員向けイベントの企画やコミュニケーションツールを導入で社内カルチャーを形成する

マーケティングの考え方では、「誰」に「どのような価値」を「どのようにして提供するか(伝え方)」という3つのステップが重要です。人事において「誰」とは採用における「求める人材」であり、社内人事では「社員」です。「求める人材」に対しては会社の魅力を伝え、「社員」に対しては、企業とともに成長してもらうための施策を伝えるのが、人事におけるマーケティングです。

5.ブランディング能力

採用活動においては昨今、「採用ブランディング」が注目されています。会社説明会や面接、研修などで人事は会社の顔となります。求職者にどれだけ自社の魅力を伝えられるかは、人事のブランディング能力にかかっているといえるでしょう。
また、会社の魅力を伝えるということだけでなく、高めるという点においても、働きやすい環境づくりや人事考課制度の改善、福利厚生の充実など、人事主導で進められる施策はたくさんあります。魅力が高まれば応募する人材が増えるだけでなく、既存社員も「ずっとこの会社で働き続けたい」と思うようになり、定着率が高まるでしょう。

人事担当者のキャリアプラン一例

人事担当者のキャリアプランは、さまざま方向で考えることができます。人事部内で昇進し、活躍するというパターンでも、スペシャリストとゼネラリストの道があります。また、人材採用で磨いたスキルを活かし、人事から広報・採用広報へ異動するのもキャリアプランの一例です。専門性を高めてからフリーランス人事として独立するという選択肢もあります。
ここでは、人事担当者のキャリアプランについて、いくつかご紹介します。

人事部内で昇進して活躍する

人事担当者のキャリアとして考えやすいのが、人事部内で昇進を重ねていくというプランです。人事部内でのキャリアプランには、2つのパターンがあります。人事業務のスペシャリストになるパターンと、バックオフィスのゼネラリストとなるパターンです。

人事業務のスペシャリストになるパターン

人事業務のスペシャリストは、採用担当、研修担当のように人事の業務が細部化されている大企業で選べるキャリアプランです。担当業務を数多くこなしながら専門的な知識とスキルを身につけ、人事部門の管理職へとキャリアアップします。最終的には人事部門を統括する役職へと昇格し、全社的な人事戦略を担うことになります。

バックオフィスのゼネラリストとなるパターン

もうひとつのパターンは、バックオフィス業務のゼネラリストになるキャリアプランです。中小企業やベンチャー企業など1人で幅広い業務を担当する場合に選べるパターンです。ゼネラリストは幅広い知見と広い視野により、さまざまな分野の担当者たちをまとめ上げる役割を担います。
人事だけでなく総務や法務、経理などの幅広い業務を担当して幅広い知識やスキルを身につけながら各部門のマネジメントを経験することで、企業のバックオフィス業務をまとめる総合管理職へのキャリアップを目指します。

広報や採用広報へ異動する

採用担当から人事のキャリアをスタートし、広報や採用広報へと異動するキャリアプランもあります。人事の採用担当が応募者とやり取りしたり会社説明会でプレゼンテーションしたりするのは、広報活動と共通する部分があります。そこで磨いたスキルを活かし、広報や採用広報に異動するパターンです。
採用広報は求職者に自社を就職先・転職先として検討してもらい、応募・採用につなげるための広報活動です。人材不足により求人情報を媒体に掲載するような受け身の採用手法では採用が難しくなっている現在、自社で働くことのメリットを求職者に伝える採用広報は、今後も重要な業務となるでしょう。

フリーランス人事を目指す

人事担当者として経験を積み、専門性を身につけ、フリーランス人事として独立するキャリアプランもあります。フリーランス人事は、近年注目を集めている仕事です。
中小企業などでは、専任の採用担当者がいないために採用に関するノウハウを持たない会社も多いのが実情です。自社の採用力を高めるため、専門性の高いフリーランス人事に依頼する企業が増えています。
フリーランス人事に依頼することで企業は人事のプロフェッショナルからノウハウを得ることができ、求める人材を獲得することができる確率が高まります。自社で人事担当の社員を雇用よりもコストを抑え、大きな効果を手にすることが可能になります。
求人倍率が高まり採用が年々難しくなっていく今日、フリーランス人事のニーズは高まる傾向にあるしょう。

まとめ

企業における人事業務は幅広く、求められるスキルも少なくありません。基本的なスキルとして、プレゼンテーションやコミュニケーションのスキル、情報収集能力などが必要であり、1人が幅広い人事業務を受け持つ中小企業、ベンチャー企業では、マルチタスク能力も求められるでしょう。
急速に変化するこれからのビジネス環境においては、人事の役割も変わってきます。経営目標を達成するための人材育成や組織づくりという視点に立ち、戦略を構築する能力も必要になります。
まずは、人事担当者として経験を積み、キャリアプランを描いていきましょう。

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