人事(HR)の仕事内容と役割~必要なスキルについて解説
2024年7月 4日更新
人事(HR)はどのような業務を担い、どのようなスキルが求められるのでしょうか。本記事では、人事の役割や具体的な仕事内容、担当者に求められるスキルや向いている人の特徴、目指せるキャリアプランまで詳しく解説します。
INDEX
なお、人事・労務担当におすすめの資格については、こちらの記事もご覧ください。
参考:人事・労務担当におすすめの資格12選! 資格の難易度や費用についても解説
企業における人事の役割
企業における人事の役割は、自社の企業理念に基づいた「求める人材像」に合致した人材を採用し、能力を発揮できる仕組みをつくり、適材適所に配置するなど、人材を経営に活かす活動を推進することです。
人事は総務と並べて語られることもありますが、業務範囲は異なります。総務部の業務範囲は広く、受付業務や備品管理など就業環境に関わる業務を行うほか、経理や法務、広報までさまざまな業務を含むこともあります。
人事はその一部で、主に人材に関する業務や計画立案、遂行を担います。人事と総務の仕事がどのように行われているかは、主に会社規模によって異なり、人事と総務が分かれている会社もあれば、人事総務部として一体になっている会社もあります。
人事の仕事内容
人事の仕事内容は、多岐にわたります。具体的には、以下のような業務を担当することが一般的です。
- 人材採用
- 人材育成
- 人事評価
- 労務管理
- その他人事制度の企画立案
人事が担う各業務について、詳しく解説します。
人材採用
人材採用は、人事の大切な仕事のひとつです。質の高い採用活動の実現を目指し、主に次のような業務を担当します。
- 採用方針や計画の策定
- 人材の募集
- 採用選考
- 労務管理
- 入社までのフォロー
このように、人事は人材の採用計画から入社に向けたフォローまで担います。企業によっては、人材の配属予定のある部門が採用選考などのプロセスに関わるケースもあるでしょう。
人材育成
採用した人材の能力を引き出し、伸ばすための施策を考え実行することも、人事が担う重要な仕事です。新人・中堅・管理職といった階層別研修や、実務を通じて教育訓練するOJT(On-The-Job Training)など、さまざまな教育研修制度の企画立案から実施までを担当します。
人材育成の重要性が叫ばれる昨今、教育研修の専門部署を設けている企業もあります。研修の担当者にも豊富な経験・高いスキルや専門性が求められるため、外部の研修会社にアウトソーシングするケースも珍しくありません。
人事評価
一人ひとりの社員の働き方に基づき、能力や業績の成果を正当に評価する人事評価を行います。社員の活躍を昇進や適切な給与として還元するため、目標管理制度や報酬制度、給与体系の設計といった「仕組み」をつくることも人事の仕事です。
もし社員が正当な評価を受けられなければ、モチベーション低下による業績不振や、優秀な人材の流出につながりかねません。社員に理解を得られるような、透明性・公平性のある人事評価制度の運用が求められます。
労務管理
社員の労働を管理する「労務管理」を人事が担当するケースもあります。具体的には、次のような幅広い業務が労務管理に当てはまります。
- 労働時間の管理
- 社会保険の手続き
- 健康診断の実施
- 福利厚生の手続き
- 安全衛生の管理
- メンタルヘルス対策
- 就業規則の管理
- 労使交渉の担当
労務管理は、社員が安心して働くための土台を築く重要な業務といえるでしょう。
その他人事制度の企画立案
給与体系や福利厚生制度など、人事に関わるさまざまな制度の設計・運用・改変にも携わります。企業が目標を達成するために、社員のモチベーションの維持・アップは欠かせません。人事制度の設計・運用・改変を通して社員のパフォーマンスを正当に評価し、気持ち良く働いてもらうための環境を整備することが大切です。
人事制度の企画立案は企業や社員に与える影響が大きく、さまざまな側面を考慮する必要があります。専門知識が求められる、難しい業務といえるでしょう。
【企業別】人事の特徴や業務内容
人事のあり方や業務内容は、企業の規模や設立からの年数などによって異なります。人事の職に進む場合、企業の種類別の一般的な傾向を押さえておくとよいでしょう。ここでは、大企業・中小企業・ベンチャー(スタートアップ)企業に分けて、それぞれの人事の特徴や業務内容の傾向を紹介します。
大企業の人事の特徴・業務内容
社員数の多い大企業の人事部は、業務の効率化を図るため、業務ごとに縦割りの組織運営が行われる傾向があります。前述の5つの仕事内容に業務が分かれているだけでなく、さらに細かく分類され、それぞれに担当者が配置されるのが一般的です。
例えば人材採用に関しては、新卒、中途採用、パート・アルバイトというように担当者が分かれ、さらに「採用プロモーション」や「面接管理」、「内定者フォロー」、「入社後フォロー」などそれぞれの分野で担当があり、各分野でのプロフェッショナルが育成されています。
そのため、人事担当者は他の業務を兼務することなく、人事の仕事に集中し、スペシャリストとして知識やスキルの向上を図ることができます。
ただし、幅広い業務に携わることがないため、人事の全体像を把握するのが難しいといえるでしょう。
中小企業の人事の特徴・業務内容
社員数の少ない中小企業は、大企業のように業務によって担当係やチームに分かれることはなく、幅広い人事業務を1人で担当する企業も少なくありません。場合によっては、人事担当者が一部の総務・経理業務を兼任するケースもあります。
そのため、中小企業の人事担当者は、さまざまな人事業務を幅広くこなせるマルチな能力が求められるでしょう。幅広い知識とスキルが必要になり、そのための自己啓発などが求められることもあります。人事業務の全体像を掴みやすいのがメリットで、短期間で多くの経験を積んで責任のあるポジションを任せられる可能性もあるでしょう。
ベンチャー(スタートアップ)企業の人事の特徴・業務内容
ベンチャー企業は、一般的に社員が少なめです。設立まもない企業では、組織体制が十分に整備されていないケースもあります。そのため人事や総務を兼任することが多い傾向です。基本的に中小企業と同じく1人が多くの業務を抱えることが多く、そもそも人事部がない企業も少なくありません。採用されたら、その会社の初めての人事担当者だったというケースもあります。ベンチャー企業は社員の裁量が大きいことが特徴ですが、人事担当者にも大きな裁量が与えられるケースは多いといえるでしょう。
人事に必要な8つの基本スキル・知識
人事の仕事にはさまざまなスキルや知識が求められます。まず、人材採用の場面ではプレゼンテーションやコミュニケーションのスキルが必要です。社会と社内それぞれの情報を収集する能力も欠かせません。また、特に中小企業やベンチャー企業ではマルチタスク処理能力が必要とされるでしょう。ここでは、人事に必要とされる8つの基本スキル・知識をご紹介します。
1.プレゼンテーションスキル
人事担当は求職者に向けては会社の顔であり、会社説明会などで求職者を惹きつけることができるプレゼンテーションスキルが必要です。話したい内容を簡潔にまとめ、伝えたい主張はしっかりと明確に示して会社の魅力を伝えるプレゼンテーションスキルが求められます。
プレゼンテーションは社内研修などの場面でも必要ですから、まず身につけておきたいスキルといえるでしょう。話すスキルだけでなく、魅力的なプレゼン資料を作成する能力も求められます。
2.コミュニケーションスキル(聴く力・伝える力)
人事は人と関わる場面が多く、コミュニケーションスキルが欠かせません。採用の場面では初対面の面接者とコミュニケーションを取り、人材育成や評価に関する業務では社員・管理職と連携を取るなどコミュニケーションスキルが必要になる機会は多々あります。
それ以外にも、人事制度の企画立案では、経営層と話し合う場面もあります。社会保険労務士や産業医といった専門家とともに仕事を進める機会も多くいでしょう。社内外の、さまざまな立場の人とスムーズなコミュニケーションを取る能力は欠かせません。
具体的には、相手の話に耳を傾ける「聴く力」と、自分の意見や会社の方針を相手に分かりやすく伝える「伝える力」が求められます。これらコミュニケーションスキルは、実際の業務を通じて磨くこともできるでしょう。
3.情報収集力・情報管理力
人事の仕事には情報収集力・情報管理力も必要です。人に関する業務の全般を担う人事は、社内の細かな情報を把握しておかなければなりません。
社員がどのような要望を持ち、何に困っているのかなどの情報を拾い上げ、人事評価や福利厚生などへの反映させます。正しい情報を収集するには、社内のコミュニティに参加するなど社員との人間関係構築に努める必要があります。情報を集めることで適切な人員配置ができ、問題を早期に発見してトラブルを防止することもできます。
社内情報だけでなく、労務関係の法改正に関する情報の収集や、社会の動きを追うなど、社外の情報収集も大切です。
4.マルチタスク処理能力
中小企業やベンチャー企業など、人事担当が複数の仕事を兼任する場合に、特に必要になるのがマルチタスク処理能力です。マルチタスクとは、1つのタスクに集中しながら他のタスクの経過も追い、同時に複数の仕事を管理する能力です。
具体的には、予定を整理してタスクの進捗状況を把握できる、優先順位をつけて時間を有効に使える、スケジュールを立ててその通りにタスクを完了できるといった能力が求められます。
日常の定例業務を進める一方で、突発的に起こる業務にも柔軟に対応し、タスクごとに頭を切り替えながら仕事をこなしていく能力が必要になるでしょう。
5.ライティングスキル
人事にはライティングスキルも求められます。たとえば、求人広告など社外に出す資料を用意する、あるいは自社のWEBサイトに求職者向けの記事を作成するといった業務では、要点を押さえた読みやすい文章で求職者に会社の魅力を伝えるコンテンツを作成する必要があります。社内向けに情報発信することも多く、ライティングはさまざまな場面で必要になるスキルといえます。
ライティングスキルを高めるコツは、ライティングの数をこなすことです。慣れないうちは他の人の書いたものを参考にしながらできるだけ多くライティングし、クオリティを高めていくとよいでしょう。一度身につければ、人事以外の幅広い仕事に活用できます。
6.事務処理能力
他の業務と同じく、人事にも事務処理能力が必要です。事務処理能力とは、書類作成やデータ入力、数字の計算などデスクで行う処理作業をスムーズに行うスキルです。事務処理能力が高ければ業務効率も上がります。特にマルチタスクが要求される中小企業やベンチャー企業の人事担当には、高い事務処理能力が求められるでしょう。
オフィスのデジタル化が進んでいる今日、人事に関する資料の多くはWEB上のデータで管理されています。クラウドの人事・労務管理ツールを導入している会社も多いでしょう。そのため、人事の仕事にはツールを使いこなすスキルも必要になります。
7.モラルやコンプライアンスの意識
モラルやコンプライアンスの意識は、人事担当者だけではなく全社員に求められますが、人事は社内でコンプライアンス違反やハラスメントが起こらないように環境を整える部署でもあることから、担当者として十分に理解しておかなければなりません。と同時に、コンプライアンス違反が起きない環境づくりに努めることが求められます。
8.関連する法律の知識
人事担当者は、労働法や社会保障などの法律知識を身につけておく必要があります。労働法は企業で働く労働者について定めた複数の法律の総称で、特に労働三法といわれる「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」は重要です。
他にも「労働契約法」や「男女雇用機会均等法」など、人事担当が知っておくべき法律は数多くあります。特に労務系の法律は改正されることが多く、最新情報の確認は欠かせません。改正にあわせた就業規則の変更など、社内整備は迅速・的確に行う必要があります。
人事担当者に向いている人の特徴
人事の仕事には、どのような人が向いているのでしょうか。一般的に、以下の特徴がある人は人事担当者として活躍しやすいでしょう。ここでは、人事担当者に向いている人の特徴について紹介します。
人間観察力が高い人
人事担当者は、業務を通して多くの人と関わります。そのため、人間観察力が高く相手のことをしっかりと考えられる人が向いているでしょう。
例えば、人間観察力を駆使して社員の適性を把握できれば、適切な人員配置を実現可能です。人材採用の場面でも、限られた面接時間のなかで応募者の適性を見極める必要があります。
「人に興味・関心がある」「相手を理解したい」といった気持ちがあり、人間観察力に長けている人は、人事の適性が高いといえるでしょう。
秘密を厳守できる人
「秘密を厳守できること」は、人事担当者に必要不可欠な要素といえます。人事の仕事では、社員のプライバシーに関わる情報や企業の機密情報などを取り扱う機会があるためです。
業務で知り得た機密情報は、周囲に漏らしてはなりません。もし口外すれば、人事の信頼を損なうだけでなく、社員からの反発を招く恐れもあります。また、業務に関係ないにもかかわらず社員のマイナンバーや給与額、人事評価などを調べて漏らすようなことは重大なコンプライアンス問題です。
口が堅いことはもちろん、秘密にすべき情報を慎重に扱う責任感も求められます。
物事を論理的に考えられる人
筋道を立てて物事を考えられる人も、人事担当者に向いているでしょう。採用計画の立案や要件定義、予算管理や手法の選定など、人事では論理的に考えて遂行すべき多くの業務を担当するためです。
人との関わりが強い業務だからこそ、感情が先行してしまうこともあるかもしれません。しかし、情に流された状態で正しい判断を下すことは難しいでしょう。
例えば個人的な感情を理由に一部の社員を特別視すれば、組織の秩序が乱れるだけでなく、企業にとって利益のある人事判断ができなくなってしまいます。そのため、自身の感情に惑わされない、冷静な判断力が必要です。
目的意識を持ちながらさまざまな情報を多面的に分析し、問題解決までの過程を論理的に考えられる人が人事担当者に向いています。
社員を的確にサポートできる人
社員を的確にサポートできる人も、人事担当者に向いています。新入社員から経営幹部まで、立場、年齢、性別、就業条件など、組織にはさまざまな背景を持つ社員が集まっています。キャリアに対する考え方も一人ひとり異なるでしょう。そのような中で、人事担当者は社員から配属や働き方に関する相談を受けることもあります。
社員の立場を理解し、個性を見極めたうえで適切なアドバイスを行ってモチベーションを高められる人は、人事担当者として活躍できるでしょう。
これからの人事に求められる5つの役割・スキル
人事部門はこれまで、制度の運用や労働環境の整備といった管理業務がメインとされてきましたが、昨今は、人材開発やモチベーションの喚起などが重視される傾向です。人事担当者は現場に足を踏み入れて現状を把握し、これからますます重要になるこうした課題に取り組むことが求められています。ここからは、将来の人事に特に求められる役割やスキルについて、見ていきましょう。
1.人材育成・教育の役割
急速に変化するビジネス環境においては、スピード感をもって、人的リソースを適切にマネジメントしていく重要性が増しています。
変化が激しい時代においては経営環境の変化も大きく、変化に対応して自らも変革できる人材が必要です。求められる人材が変化するとともに、人事に期待される役割も変化しています。迅速に人的リソースをマネジメントすることが重視されており、そのような状況で注目されているのが「戦略人事」という言葉です。戦略人事とは、経営戦略を達成するために人材育成に取り組むという考え方です。
「企業は人なり」といわれますが、社員の活躍は業績に直結するものであり、人材育成・教育は経営上の最重要課題といえるでしょう。将来の事業のあり方を踏まえ、必要なスキルを分析し、中長期的な視点をもって、継続的に人材育成に取り組むことが求められます。
戦略人事を実現するには、自社の経営戦略を理解し、現場に出向いて現状を把握し、課題を発見し、そして人事面での解決策を提示できる能力が求められます。経営戦略を遂行する能力は、これからの人事担当者に求められる力の一つといえるでしょう。
2.社員のモチベーションを向上させる役割
社員のモチベーションは、企業の生産性に直接的に影響を与えます。モチベーションが低下すると、最悪の場合、社員の離職を招くこともあります。そのため、人事には社員のモチベーション向上を図る施策の立案、遂行が求められます。
そのひとつが、人事考課制度の見直しです。人事考課については、社員の関心が高く、また一般的に社員の不満を生みやすい場面であるともいわれます。特に考課者訓練が不十分でアンコンシャスバイアスに対応できていない場合、社員は上司への不満から会社への不信感をもつこともあります。こうした状況を防ぐためにも、人事部門では経営層とともに、社員が納得できる人事考課制度を設計し、考課者訓練にも取り組む必要があります。人事考課が納得できるものであれば「自分の働きが認められている」と感じ、社員のモチベーションを高めることができるでしょう。
3.戦略構築力
これからの人事には、戦略構築力が求められます。例えば、優秀な人材の採用により業績が上がる、管理職のマネジメントスキルが向上することで組織力が強まるなど、人事戦略とそれに基づく施策は、経営に大きく影響します。
人事には人材採用や人材育成・制度の見直しなど複数の手段があり、課題解決や目標達成のための施策を行いやすいのがメリットです。人事戦略を考えるうえで、経営戦略を理解することは欠かせません。人事担当者には、経営視点からの戦略を考える能力が求められるでしょう。
4.マーケティング能力
社員の価値観が多様化するなかで優秀な人材を確保するために、人事担当者にもマーケティング能力が必要になります。マーケティング能力が求められるのは、次のような場面です。
- 自社の目指すビジョンや理念を新入社員に発信する
- 社会保険の手続き
- スキルアップやキャリア形成できる制度の意義を周知させる
- 社員向けイベントの企画やコミュニケーションツールを導入で社内カルチャーを形成する
マーケティングの考え方では、「誰」に「どのような価値」を「どのようにして提供するか(伝え方)」という3つのステップが重要です。人事において「誰」とは採用における「求める人材」であり、社内人事では「社員」です。「求める人材」に対しては会社の魅力を伝え、「社員」に対しては、企業とともに成長してもらうための施策を伝えるのが、人事におけるマーケティングです。
5.ブランディング能力
採用活動においては昨今、「採用ブランディング」が注目されています。会社説明会や面接、研修などで人事は会社の顔となります。求職者にどれだけ自社の魅力を伝えられるかは、人事のブランディング能力にかかっているといえるでしょう。
また、会社の魅力を伝えるということだけでなく、高めるという点においても、働きやすい環境づくりや人事考課制度の改善、福利厚生の充実など、人事主導で進められる施策はたくさんあります。魅力が高まれば応募する人材が増えるだけでなく、既存社員も「ずっとこの会社で働き続けたい」と思うようになり、定着率が高まるでしょう。
人事担当者のキャリアプラン一例
人事担当者のキャリアプランは、さまざま方向で考えることができます。人事部内で昇進し、活躍するというパターンでも、スペシャリストとゼネラリストの道があります。また、人材採用で磨いたスキルを活かし、人事から広報・採用広報へ異動するのもキャリアプランの一例です。専門性を高めてからフリーランス人事として独立するという選択肢もあります。ここでは、人事担当者のキャリアプランについて、いくつかご紹介します。
人事業務のスペシャリストになるパターン
人事業務のスペシャリストは、採用担当、研修担当のように人事の業務が細部化されている大企業で選べるキャリアプランです。担当業務を数多くこなしながら専門的な知識とスキルを身につけ、人事部門の管理職へとキャリアアップします。最終的には人事部門を統括する役職へと昇格し、全社的な人事戦略を担うことになります。
バックオフィスのゼネラリストとなるパターン
もうひとつのパターンは、バックオフィス業務のゼネラリストになるキャリアプランです。中小企業やベンチャー企業など1人で幅広い業務を担当する場合に選べるパターンです。ゼネラリストは幅広い知見と広い視野により、さまざまな分野の担当者たちをまとめ上げる役割を担います。
人事だけでなく総務や法務、経理などの幅広い業務を担当して幅広い知識やスキルを身につけながら各部門のマネジメントを経験することで、企業のバックオフィス業務をまとめる総合管理職へのキャリアップを目指します。
HRビジネスパートナー(HRBP)となるパターン
HRビジネスパートナー(HRBP)となるキャリアプランもあります。HRビジネスパートナーとは、事業成長を人と組織の面からサポートする経営者や責任者のパートナーのことです。企業によって、事業部門所属の人事担当者を指すケースもあれば、部門に対して人事コンサルティングを行う担当者を意味するケースもあります。
経営者と同じ目線に立ち、事業成長の問題解決をサポートすることが主な役割です。採用活動から研修、制度設計まで幅広い業務を担うため、人事のプロフェッショナルとしてのスキルが求められます。
広報や採用広報へ異動する
採用担当から人事のキャリアをスタートし、広報や採用広報へと異動するキャリアプランもあります。人事の採用担当が応募者とやり取りしたり会社説明会でプレゼンテーションしたりするのは、広報活動と共通する部分があります。そこで磨いたスキルを活かし、広報や採用広報に異動するパターンです。
採用広報は求職者に自社を就職先・転職先として検討してもらい、応募・採用につなげるための広報活動です。人材不足により求人情報を媒体に掲載するような受け身の採用手法では採用が難しくなっている現在、自社で働くことのメリットを求職者に伝える採用広報は、今後も重要な業務となるでしょう。
フリーランス人事を目指す
人事担当者として経験を積み、専門性を身につけ、フリーランス人事として独立するキャリアプランもあります。フリーランス人事は、近年注目を集めている仕事です。
中小企業などでは、専任の採用担当者がいないために採用に関するノウハウを持たない会社も多いのが実情です。自社の採用力を高めるため、専門性の高いフリーランス人事に依頼する企業が増えています。フリーランス人事に依頼することで企業は人事のプロフェッショナルからノウハウを得ることができ、求める人材を獲得することができます。自社で人事担当の社員を雇用よりもコストを抑え、大きな効果を手にすることが可能になります。求人倍率が高まり採用が年々難しくなっていく今日、フリーランス人事のニーズは高まる傾向にあるしょう。
まとめ
人材を経営に活かす活動を推進する人事は、人材の採用から育成・評価・制度づくりまで、幅広い業務を担当します。次に挙げる8つは、人事担当者に特に必要な基本スキルや知識です。
- プレゼンテーションスキル
- コミュニケーションスキル(聴く力・伝える力)
- 情報収集力・情報管理力
- マルチタスク処理能力
- ライティングスキル
- 事務処理能力
- モラルやコンプライアンスの意識
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人事担当者は、人事部内で昇進を重ねるほか、人事業務のスペシャリスト・バックオフィスのゼネラリスト・HRビジネスパートナー(HRBP)などへのキャリアアップを目指せます。業務を通じてスキルを磨き、理想のキャリアを実現しましょう。