研修講師の探し方~知っておきたい「研修講師4タイプ」
2016年1月29日更新
自社研修に外部から講師を招く場合の講師の探し方は? 自社が求めている研修内容に合った講師派遣の依頼方法をご紹介します。
研修講師の探し方
外部講師は、教育機関に所属している場合と、1人で活躍している場合がある。教育担当者は、日ごろから講師とのネットワークを持った外部機関や人脈と関係性を持っておくとよい。また、自分自身で、インターネットや情報誌などアンテナを張り巡らせ、情報収集をしておくことも必要だ。
1)外部の研修会社に依頼して探す
外部の研修会社は、一般には知られていない専門情報や業界情報を持っている。講師の専門領域や評価、講師料、実績など詳細なデータを持っており、失敗のリスクは小さい。しかし、各会社が専門としている特徴がそれぞれ違うので確認しなければならない。MBAの知識を教える会社、自社の専門講師を抱える会社、独立した個人のコンサルタントを抱える会社、営業・マーケティングを得意とする会社など、特徴と提供する講師の領域を理解しておかなければならない。
一般的に、研修会社は一番評価の高い講師や流行の研修ができる講師をすすめてくる。自社の課題に合ったプログラム内容と講師であるかどうかを見極める必要がある。
2)書籍、雑誌を通して探す
書籍、雑誌には、著者の熱い思いが語られているので、これらを読めば著者の考え方や専門分野を理解でき、すぐにテーマに合った講師を探すことができる。著者の連絡先は、発刊している出版社に問い合わせれば、特別な事情がない限り聞くことができる。注意をしなければならないのは、書籍、雑誌で素晴らしいことが書かれていても、自社が求めている研修ができるとは限らないことである。文章を書くのが得意でも、研修やセミナーで話すことが苦手な人もいるので注意を要する。
また、大学の教員の場合は、理論は大変素晴らしいが、話の内容が大企業向けであったり、具体的な事例が少なかったりすることもある。彼らは研修が本業ではないということを忘れてはならない。
3)講師の紹介や口コミで探す
外部講師は、同業の講師人脈を持っていることが多い。現在、依頼している講師がいる場合は、他の講師を紹介してもらうことも確実な方法である。なぜならば、研修を実施してもらっている講師なので、自社の問題点や課題を理解しているからである。しかし、自分自身よりもレベルの低い講師を紹介することが多いので注意されたい。
また、関連会社や得意先、同業他社など、同じような仕事をしている人からの情報も信頼度が高い。特に、その企業での研修実績があれば、研修評価を聞くことができる。教育担当者は、日ごろから社外でできるだけ多くの人と交流し、他社の教育担当者の人脈をつくることが重要である。教育担当者が集まる場は、探せばたくさんあるので日ごろから情報収集をすることをおすすめする。
公開セミナーに参加することは、比較的容易に人脈を広げられるので、活用するべきである。異分野の方々との人脈をつくれる最も効果的な方法である。また、得意先など仕事の仲間を集め、勉強会や研究会を発足して講師を発掘していく方法もよい。
4)ホームページで探す
インターネットには、さまざまな団体や講師が工夫を凝らしたページが掲載されている。自らの欠点や問題点、不得意な分野などを掲載していないことを前提にチェックしなければならない。その団体や講師の教育理念やポリシーは研修の内容や品質を決定する重要なポイントである。その団体・講師の考え方と自社の考え方が共感・共鳴できるのであれば、相談するべきである。
5)研修会社のセミナー・パンフレットから探す
研修会社が発行している年間セミナー冊子は、体系的にまとめられており、講師やプログラムを探すのに便利である。自社の課題に対して、どの講師やどのプログラム内容がよいのかを探すときには、大変参考になるが、自社のプログラムにカスタマイズしなければならない。パンフレットでは講師の見極めができないため、セミナーに参加して、講義内容や話し方・人柄をチェックできれば、講師の選択で失敗することはない。
知っておきたい「研修講師4タイプ」
研修講師は、4つのタイプに分かれる。求めている研修内容と期待する効果に合った、講師タイプを選ばなければならない。
1)感動型スター講師
コンサルティングスキルとインストラクションスキルを両方兼ね備えた講師。自社のオリジナル内容にカスタマイズしてくれ、受講者にやる気を与えることにより、行動を促すことができる。
2)コンサルタント型講師
論理的に課題を解決してくれるコンサルティング型研修を実施してくれる。気づきも多く、自社のオリジナル内容にしてくれ、成果を出してくれる。実務的ではあるが、わかりやすく話す技術が低いため、眠くなり、モチベーションを上げることに期待できない場合もある。
3)セミナー型講師
素晴らしいインストラクションスキルを持っているが、具体的な課題や解決策には触れない傾向がある。自社に合わせたオリジナル内容にするのが難しく、決められたシナリオ通りに講義を進める。標準的な知識やスキル習得型の研修に適している。知名度があるため講師料は比較的高い。
4)研修型講師
新入社員研修や管理者研修など定型プログラムを持っている。自社の課題や要望に合わせてカスタマイズしてくれる場合もある。経営者の立場で実務的で分かりやすく指導するタイプが多い。内容重視なので感動を与えることは少ない。講師料は比較的安い。講義力が低く、品質が悪い講師もいるので注意したい。
できるだけよい講師を選ぶことは大切だが、感動型スター講師になると講師料が高額になる傾向があるので、目的と予算に合わせて検討すべきである。
※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。