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形から入って心を定める教育~「加賀屋流おもてなし」に学ぶ

2015年12月14日更新

形から入って心を定める教育~「加賀屋流おもてなし」に学ぶ

日本一の温泉旅館、加賀屋。そのおもてなしは、形から入って本質を追求し心を定めるという教育のプロセスによって実現されるといいます。形から入る教育は、新入社員研修についても重要であるという、PHP研究所研修企画部長・的場正晃のコラムです。

 

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「日本一の温泉旅館」と言われる「加賀屋」(石川県七尾市)。加賀屋が日本一と言われるゆえんは、国内外から年間30万人もの人たちが泊まりに来る事実と、その人気の原動力にもなっている「加賀屋流おもてなし」の質の高さにあります。

おもてなしの質を維持向上させるためには、当然のことながら従業員に対する教育は欠かせません。加賀屋でも教育は徹底されていますが、その内容は、いわゆる「マインド教育」ではなく、正しいことばづかいや、美しい立ち居振る舞い、好感のもたれるお辞儀など、もっぱら形にこだわったトレーニングが主体なのです。あるべき形をまね、何度も実践しているうちに、「加賀屋流おもてなし」の精神を理解・実践できるようになるので、あえてマインド教育を実施する必要がないそうです。

教育のあり方について考えさせられるもう一つの事例として、精密機械メーカーA社の取り組みをご紹介いたします。この会社では数年来、新入社員の定着率の低さが問題でしたが、導入研修の内容を見直して「形にこだわったプログラム」に切り替えところ、受け入れ側の上司・先輩から「今年の新人は、社会人としての心構えができている」と評判になるぐらい、短期間で新入社員の意識が変わり、定着率問題にも一定の成果を上げることができたのです。

加賀屋におけるおもてなし教育と、A社の事例が示唆しているのは、形から入る教育の重要性です。脳科学者の茂木健一郎氏が「形式化された行動の真似をするほうが、本質に迫れる」と述べているように、形から入って本質を追求し、心を定めるという教育のプロセスが確かに存在するのです。

特に、昨今のゆとり世代とも呼ばれる若手社員の教育に関しては、概念や理屈、理論を教えすぎるよりも、あるべき姿・形を実践させるほうが重要であり効果も高いでしょう。例えば、元気のいい返事や、さわやかな挨拶を理屈抜きでとにかく実践させてみる。その結果、自分の周囲にどんな変化が起きてくるか、自分の気もちがどうなるか、体験させる。そして、その体験さえあれば、良好な人間関係をつくる上でマナーがいかに大事かということを自分で気づき、理解・納得することができるでしょう。自発的な気づきを促すためにも、形の教育は重要なのです。

来春の新入社員研修についても、理屈は同じです。座学スタイルで一方的に話を聴かされるスタイルよりも、[読み・書き・話す・考える]機会の多い「参画型研修」のほうが意識変容・行動変容の効果は高いのです。人事・教育のご担当者様には、「形から入って本質を追求し、心を定める」というコンセプトに則った新入社員研修を企画実施することを強くお奨めしたいと思います。

 

参考文献:『加賀屋さんに教わったおもてなし脳』 (茂木健一郎著・PHP研究所刊)

 

 

 
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的場正晃(まとば・まさあき)

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。現在は(株)PHP研究所 直販普及本部研修企画部部長。
 

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