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モノづくり系社員のやる気を育てる学習システム

2016年5月19日更新

モノづくり系社員のやる気を育てる学習システム

モノづくり系社員のやる気を醸成し、主体的能力の形成を促すためには、「行動学習」を取り入れた学習プログラムが有効です。PHPゼミナール講師・中津留秀男氏のコラムです。

製糖会社の教育プログラム

先般、私は、製糖会社の砂糖製造のオペレーションを担当する社員の教育プログラム作成を担当し、学習システムの設計から実践までに携わってまいりました。このプログラムは、産業技術の高度化、社会の情報化・国際化に対応する、人間の主体的能力の形成をめざすものです。人間の心、意思、技術などの働きのすべては、行動を通じてのみ有機的に育て得るものであり、学習(=行動)の場をつくることによって育てられるという、脳科学の考え方に基づくプログラムになっています。

砂糖が作られ出荷されるまでには、原料糖→洗糖・熔解→炭酸飽充→ろ過→脱色・脱灰→結晶化→分蜜→乾燥・冷却→熟成→ふるい分け→貯蔵→包装→製品倉庫→出荷 といった工程があります。ところが、製糖会社の工場では、コンピュータの導入によってオートメーション化が進み、そこで働く人は集中制御室において計器を見て数字を判断し、ボタン、つまみを操作するというのが主体業務になっています。新入社員研修で、製糖の知識やオペレーションシステムは学習するものの、実際砂糖が作られる工程は経験してないのが現状です。

以前、原子力発電所の見学に行った時に「全ての制御機器が安全にコントロールされています。オペレータは異常が検知されたときに対応することが主な業務になっています」という説明をうけましたが、そこは、この製糖会社でも同じというわけです。

モノづくり系社員に欠かせない「行動学習」

今回の学習プログラムでは、この製糖における、原料糖から分蜜までの各工程のミニ実験を行い、各工程で原料糖がどう変化していくのかを、受講者が「体験」します。また、要所ごとの管理基準にもとづいて、実際に数値を測定し、結果をワークブックに記録していきます。ビーカーや試験管を使っての実験によって、受講者は、計器が示す値を見ることから各行程で砂糖がどのようになっているのか実感できるようになります。そして、日常業務の認識は、計器をみてボタンやつまみを操作するという作業から、「砂糖をつくる」という仕事へと変化していきます。この意識の変化から、働く人の意欲・やる気が醸成され、主体性、創造性を発揮する力が生まれてくるのです。

体験する、考えることの大切さ

昨今、私たちの生活のなかから、考えて行動する機会が少なくなりつつあるように思います。たとえば、何かわからないことがあったとき、一昔前までは、自ら書籍を探し、辞書をめくって情報を得ていました。そうした情報を自分の中で整理し、考えをまとめてから行動することも、あたりまえであったでしょう。ところが、スマートフォンなどの情報端末が普及したこともあって、今では「見る」ことのみで簡単に情報が得られます。そこには「考える」という要素が入る余地が無くなってきているといえます。

しかし先述のように、人間の心、意思などの働き、主体的能力の形成には、自ら行動し考えるという体験は欠かせないものです。今後、オートメーション化がさらに進んでいくなかで、モノづくり系社員の教育・訓練では、「行動学習」を取り入れた主体的能力の形成がますます重要になるということを実感した事例でした。

【講師プロフィール】中津留 秀男 (なかつる・ひでお)

パナソニック・モノづくり研修センター製造研修チームのチームリーダーとして、安全教育の体験型プログラムの開発を始め、モノづくり系社員の教育・訓練を企画・運営を担当。現在、パナソニック バッテリー エンジニアリング株式会社に在籍し、現場力強化支援をはじめ、教育・訓練企画運営、講師を担当している。PHPゼミナール講師。

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