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居心地のよい職場・悪い職場

2016年1月21日更新

居心地のよい職場・悪い職場

強い組織をつくるためには、そこで働く人材がやる気にあふれ、存分に能力を発揮することのできる居心地のよい職場づくりが求められます。アドラー心理学では、そのために「勇気づけ」の重要性を説いています。永藤かおる氏の解説です。

職場の居心地は人間関係で決まる

「職場の居心地」について、考えたことがあるでしょうか?

「毎日いろいろあるけれど、まあいいほうじゃないかな」「意見が合わないこともあるけれど、そんなに雰囲気悪くないよ」という方もいれば、「朝起きて会社行くことを考えただけで胃が痛くなる」「1日も早く他部署に異動したい」「あの上司が異動してきてから、もう本当に居心地最悪ですよ」という方もいらっしゃるでしょう。

「仕事は仕事。居心地がよかろうと悪かろうと、そこに所属して給料をもらっているんだから、そんなことは関係ないじゃないか」

そんな意見もあるかもしれません。

でも、少し考えてみてください。会社員の場合、いわゆるワーキング・デイには、1日8時間またはそれ以上、何らかの形で職場という場所に在席し、同僚たちと顔を突き合わせているわけです。寝る時間、通勤時間を除けば、1日の大半を過ごすのが職場です。愛する家族よりも、恋人よりも、友人よりも長い長い時間を同僚たちとともに過ごす場所。1年を通して、人生の中で最も長い時間と空間を共有する場所が職場です。その職場の居心地が悪かったとしたら? 長時間の精神的苦痛を耐えることになり、人生そのものを左右することになるのではないでしょうか。それは仕事のみならず、生きるモチベーションにも大きく関わってきます。そう考えると簡単に割り切ることはできません。

職場の居心地が悪い主な原因は、人間関係です。物理的な居心地(騒音、日当たり、狭さ、異臭など)の場合もゼロではありませんが、人間関係の善し悪しは居心地に直結します。では、この人間関係、どのポイントが問題の出発点となってしまっているのでしょう。

モチベーションを失わせる「勇気くじき」とは

居心地の悪い職場の人間関係におけるキーワードは、「勇気くじき」です。

ここでは勇気を、「困難を克服する活力」と定義づけます。どんな職種であろうとも、そこに共通するのはある種の課題解決であり、そのためにはチーム一丸となって目の前の課題に立ち向かう必要があります。対価が生じるものですから、その課題は簡単なものばかりではありません。時には大きな困難を伴う場合もあるでしょう。それを誰かに代わって克服し、解決していくのが仕事です。

それなのに、職場で「困難を克服する活力をくじく」ような人、たとえば士気を下げるような発言を乱発する、協力姿勢を見せない、否定的なものの見方ばかりする、他人の足をひっぱる、疑心暗鬼に満ちている、などの人がいると、私たちはモチベーションを失います。居場所に安心感を持てず、不信感ばかりが募るような場所でやる気を出したりチーム力を高めたりすることは無理な話です。

強い組織に不可欠な「勇気づけ」に満ちた職場づくり

では、やる気を出したりチーム力を高めたりするには、何が必要なのでしょうか。アドラー心理学では、「勇気づけ」の重要性を説いています。先ほどの定義を再確認すると、「困難を克服する活力を“与える”」のが勇気づけです。職場一人ひとりの士気を高めるのは、潤沢な資金や新しい設備だけではなく(もちろんそれを否定するわけではありません)、チームメンバー同士がお互いに尊敬・尊重しあい、信頼し合い、理由なく否定・批判することなく協力し合うことではないでしょうか。  

それは飲み会や遊びの機会を設ければいいというような、なあなあの「仲良しグループ」をつくることではありません。職場の第一目的は、民の場合利益を上げることであり、官の場合はよりよい公共サービスを効率的に行うことです。その目的を達成させるためには、個々が自分の仕事に誇りをもち誠実に取り組み、仲間に貢献し、チームとして強力になり結果を出すことが必要です。

そうした目的を達成する強い組織をつくるためには、そこで働く人材がやる気にあふれ、存分に能力を発揮することのできる居心地のよい職場、そうした「勇気づけ」に満ちた職場づくりが欠かせないのです。

*「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

通信教育「リーダーのための心理学入門コース」はこちら

永藤かおる(ながとう・かおる)

(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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