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経営理念をいかに浸透させるか~松下幸之助が実践した3つの取り組み

2025年2月21日更新

経営理念をいかに浸透させるか~松下幸之助が実践した3つの取り組み

パーパス経営を取り入れる企業が増えるなど、経営理念の重要性が改めて問われています。しかし、経営理念はあるものの、社内への浸透に課題を感じる経営者も少なくありません。この記事ではパナソニック(旧松下電器産業)を創業し、世界的企業へと成長させた松下幸之助がどのように経営理念を浸透させてきたか、具体的な取り組みについてご紹介します。

INDEX

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経営理念の確立

松下幸之助が経営理念を模索し始めたのは、社員数が100名を超えた頃でした。順調な経営を続ける一方で、さまざまな経営上の課題に直面します。例えば、同業他社との競争による道義的な悩みや、代理店の経営依存に対する責任の問題、税務署との見解の相違などがありました。
これらの葛藤を経て、幸之助は「松下電器は人様の預かり物である。忠実に経営し、その責任を果たさなければならない」という信念を持つようになります。そして、1929年には経営の基本方針である「綱領」と「信条」を確立しました。その後も理念を深化させ、1932年には松下電器の根本理念である産業人の使命を明確にし、1933年には「松下電器の遵奉すべき精神」、1935年には「松下電器基本内規」を制定しました。これらの経営理念は一部改訂を経ながらも、40歳頃までにはほぼ確立されました。

経営理念浸透のための3つの手段

経営理念は経営者だけでなく社員全員が共有することで初めて効果を発揮します。幸之助は、自らの理念を浸透させるために、主に「語ること」「書くこと」「伝道師をつくること」の3つの手段を用いました。

1.みずから語る

1941年の資料に『社主一日一話』というものがあります。これは、1933年5月から1934年4月までの間、松下幸之助が松下電器の朝会や午後の納会で行った訓話、およびその後断続的に行われた社員向け訓話をまとめた速記録です。訓話は228回にわたり、社員の人生観や仕事観の向上を意図していました。40歳にも満たない青年経営者が毎日何かしらの話題を見つけ、それを語るというのは、話材を集めるだけでも相当な意識と努力が必要だったはずです。それを幸之助は一年間やり通しました。この記録からは、幸之助がとにかく社員に「語ろう」とする強い姿勢を持っていたことがよくわかります。また、1961年に会長職に退いた後は、講演の機会が増え、社内外を問わず広く理念を発信するようになりました。その講演内容は、『処世雑感』『経営雑感』『青雲雑話』などの講演集にまとめられ、1963年から1964年にかけて刊行されました。

2.みずから書く

幸之助は、話すことだけでなく、多くの社内媒体を通じて理念の浸透に努めました。特に、終戦直後の1948年ごろから高度成長期に入り、松下電器の経営が安定するまでの時期は、活発に執筆活動を行いました。経営状況が厳しいときこそ、従業員に対して積極的に思いを伝えようとしたのでしょう。
その中でも特徴的なのは、1953年から始めた給料袋に入れるリーフレットです。これは、当時従業員数が7,552名いた松下電器において、社員一人ひとりと直接話す機会が減ったことを補うための取り組みでした。ハガキ大の紙に、幸之助の写真とメッセージが添えられ、社員に向けた手紙のような形式で発行されました。幸之助の理念伝達は、単なる経営方針の共有にとどまらず、彼の社会観や人生観そのものを反映していました。例えば、1953年3月の給料袋に入れた「心に青空を」というメッセージでは、自然の移り変わりと人の心の在り方を結びつけ、組織人としての姿勢や人生の味わいについて語っています。幸之助はリーフレット以外でも『社内新聞』や『PHP』誌を通じて、さまざまな連載企画を展開し、社員に経営理念を伝えました。

3.伝道師をつくる

松下幸之助の自らの経営理念を伝えようと努力する姿勢は、経営幹部たちを「理念の語り部」として育てることにつながりました。なかでも、松下電器で会長を務めた高橋荒太郎はその代表格であり、「ミスター経営理念」と称されるほど、幸之助の理念を広めることに尽力しました。
また、経営幹部たちは幸之助から受けた指導や対話の経験を誇りとし、後輩社員に伝えていきました。その一環として、1978年から1980年にかけて、『PHPゼミナール特別講話集 松下相談役に学ぶもの』(PHP研究所編・非売品)が発行され、経営理念の伝承に貢献しました。これらの取り組みは、幸之助が経営の現場を離れた後も、松下電器の理念を深く根付かせる役割を果たしました。

思いの強さが経営理念を伝承する

松下電器の理念に対する強い伝統が企業価値の根幹にあると社内外から認められるようになったのは、ほかならぬ幸之助自身の並々ならぬ「語り続ける」努力の賜物だといえます。
幸之助は、「何のための事業か」「何のための仕事か」を問い続け、経営理念を確立しました。そして、事業に対する強い思いがあったからこそ、自身の経営理念に重みを与え、それを社員に伝える努力につながったのです。
経営者が理念に対する強い思いを持っていなければ、どんな工夫をしてもその理念は力を持ちません。経営理念を単なる言葉で終わらせず、企業文化として根付かせるには、経営者自身が理念に対する情熱を持ち続けることが大切です。その思いの強さが、企業の未来を築く原動力となるのではないでしょうか。

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