新入社員研修が「きつい」? その理由と対策を紹介
2025年2月10日更新
入社後に実施される新入社員研修は、新入社員の職場へのスムーズな定着をめざすものです。しかし、新入社員研修をきついと感じ、不安になり、早々に離職を考える新入社員もいるようです。中には「ブラック研修」などと言われかねないケースもあり、社員研修のあり方が見直されています。
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ブラック研修は社会問題にも?
人材育成には社員研修が欠かせません。しかし、研修の中には、受講者から「ブラック研修」と認識され、評判の悪いものもあります。メンタルヘルス不調を引き起こしたり、自ら命を絶ってしまうなど最悪の結果を招き、社会問題になった研修もあります。企業の責任や研修プログラムの是非が問われています。
「ブラック研修」の特徴としては下記のようなものがあげられます。
- 閉鎖的空間に押し込め、携帯電話などでの外部との連絡を遮断する
- 無理やり大声を出すことを強要する
- 講師が人格否定や罵倒の言葉をくりかえす
- 自己否定においこみ、アイデンティティを破壊する
- 過酷なスケジュールで十分な睡眠や休養がとれない
- 過度な課題を時間外労働にやらせて、しかも賃金を支払わない
もちろん、このような極端な研修を実施する企業は少ないです。ただし、新入社員は会社や業界のことをよく知りませんので、どうしても受け身の立場に終始するということは認識しておくべきでしょう。そんな新入社員が研修講師から厳しい言葉を何度も投げかけられたり、人事担当から過酷なことや不可解なことを強要されても、多くの新入社員は従うほかはありません。
新入社員の価値観や意識はもちろん、世間の企業研修を見る目も時代とともに変わってきています。かつては支持された「熱血研修」も、いまの時代にそぐわなくなってきているものもあります。「うちの研修、ブラックじゃない?」と新入社員にいわれないように、研修の目的を再度確認し、研修プログラムを適宜見直していくことも大切でしょう。
新入社員研修が「きつい」と感じる5つの理由
「ブラック研修」とまではいかなくても、新入社員が研修を「きつい」「つらい」と感じることは多々あります。新入社員研修は自社や業界への理解を深め、仕事の進め方やビジネスマナーを習得する良い機会ですが、それがなぜ、「きつい」「つらい」と感じてしまうのでしょうか。新入社員が研修を「きつい」と感じる理由には、次のようなものが挙げられます。
- 研修講師や担当者の指導が厳しい
- 環境の変化にストレスを感じている
- 研修で覚えること、学ぶことが多過ぎる
- プライベートの時間が少ない
- 研修に価値がないと感じている
それぞれの理由を確認していきましょう。
研修講師や担当者の指導が厳しい
研修講師や担当者のなかには、学生気分を払しょくし、社会人としての自覚を持たせるために、新入社員に対する指導を厳しくする人がいます。忍耐力をつける、すぐに弱音を吐かないようにするなど、それなりの理由があってのことでしょう。
しかし、新入社員は研修に付いていくことに精一杯で、研修講師から厳しく指導されれば、精神的に「きつい」「つらい」と感じるのがふつうです。新入社員同士も入社したばかりで人間関係を築けていないので、悩みを一人で抱え込むこともあるでしょう。厳しい指導が続けば、「自分はこの会社でやっていけるのだろうか」と不安な気持ちになり、早期退職が頭をよぎる新入社員も出てくるでしょう。
新入社員のためを思って指導したことが、逆に相手を精神的に追い詰めることもあるのです。
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環境の変化にストレスを感じている
新入社員研修が「きつい」「つらい」と感じる理由で多いのが、環境の変化にストレスを感じていることです。希望の会社から内定を受けて就活が終わると、入社するまでの期間は心にゆとりのある暮らしができます。
しかし入社した途端、毎日朝は早く起き、通勤がある場合は満員電車に乗らなければいけません。また、人によっては社会人から一人暮らしをスタートさせたり、社員寮に入居するなど、引っ越しを伴うケースもあります。社会人として当たり前の変化ではあるものの、少し前まで学生として生活していた新入社員にとっては大きなストレス要因になるのです。
上司や先輩、取引先など、慣れない人間関係に気を遣うことも多いでしょう。そうした状況下で厳しい指導が続き、適切なケアもなければ、焦りや不安が高まり、「つらい」と感じるようになるのは当然です。
研修で覚えること、学ぶことが多過ぎる
新入社員は、会社の一員として働くために多くのことを学ばなければいけません。就業規則、仕事の進め方、ビジネスマナーなどはもちろんのこと、配属先で必要になる業務の知識や現場で使える技術などもどんどん吸収しなければなりません。
社会人歴が長い人であれば簡単なことであっても、新入社員にとっては初めてのことばかりです。新しいことをゆっくり学んで習得したいところではありますが、昨今の新入社員の教育カリキュラムは、短期間での戦力化を目的とされていることが多く、じっくり時間をかけて、というわけにもいきません。
短い研修・教育期間で覚えることが大量にあるため、集中して取り組まないと周りに置いていかれてしまう。このようなプレッシャーのなか、ストレスを感じる新入社員も多いのです。しかも、コロナ禍以降はリモートワークによって、新入社員が自分の成長度合いを実感しにくい面もあり、そうした傾向に拍車がかかっているようです。
プライベートの時間が少ない
新入社員研修の期間中は、どうしてもスケジュールは過密になります。休憩時間やお昼休みなども少なからず制限され、研修会場に缶詰状態になることもあります。寮やホテルで生活しながら研修を受ける場合には、たとえ自由な時間があったとしても、周りに同期や研修担当者がいることもあり、気を抜けない状態が続くかもしれません。配属後も学ぶこと、覚えることが多く忙しい日々が続くでしょう。
そのため、新入社員はプライベートの時間がとりにくくなります。普段から一人の時間を大切にする若い人たちは、プライベートの時間を確保できないことに強いストレスを感じることが多いのです。
研修に価値がないと感じている
新入社員研修には、会社に就職したならば必ず参加しなければいけません。しかし、その内容に対して、「役に立つのか」と疑問を感じている新入社員は多いようです。「ムダな仕事」「意味のない研修」にいまの若い人たちはとても敏感です。価値がないと感じる研修を嫌々受けることはかなりのストレスです。いっぽうで、自分の成長のために必要なこと、やりがいにつながることであれば、多少「きつい」「つらい」研修であっても前向きに取り組みます。
人事としてはモチベーションが上がる研修プログラムに変更したり、研修の目的を丁寧に、しっかり伝えるなど、新入社員がその研修が「意味のあるもの」「役立つもの」と感じてもらえるようなアプローチが不可欠といえます。
「きつい」「つらい」と感じている新入社員を放っておくとどうなるのか
環境の変化や指導が厳しいなど、さまざまな理由で新入社員研修をつらいと感じる人はいます。そういった新入社員研修を放っておくと、以下のような問題が起こります。
- 研修の理解度が低くなる
- 早期退職に繋がる
- 企業の風評被害に繋がる
それぞれ詳しく確認していきましょう。
研修の理解度が低くなる
もし、新入社員が導入研修を「きつい」「つらい」と感じているようであれば、学ぼうとする意欲もまた低下しているはずです。当然、研修の理解度も下がりますから、ビジネスマナーや業務に関する知識・スキルを十分に身に付けないまま、職場に配属されてしまいます。そうなれば、現場で苦労し、研修だけではなく仕事も「きつい」「つらい」と感じてしまう悪循環に陥るかもしれません。
早期退職に繋がる
新入社員の「きつい」「つらい」という感情を放っておけば、当然、早期離職につながります。多くの時間と労力、お金をかけて自社に適した人材を見つけたにもかかわらず、また最初から採用活動を行わなければいけません。熱意を持って働き続けてもらうためにも、研修が「きつい」「つらい」と感じる新入社員に対し、前向きになれるような働きかけをしたいものです。
企業の風評被害に繋がる
新入社員研修は、新入社員が初めて臨む研修です。期待に胸をふくらませて研修に臨んだにもかかわらず、「きつい」「つらい」だけで学ぶ意義がわからないようであれば、愚痴の一つも言いたくなるでしょう。それらが学生時代のの同級生やその家族に伝われば、企業イメージの低下につながりかねません。うっかりSNSで拡散でもされてしまえば、思わぬ風評被害を招くかもしれません。
新入社員研修を「きつい」「つらい」と感じさせない7つの対策
研修がきついと新入社員に感じさせた状態のまま放置すると、早期退職や理解度の低下など、さまざまな弊害を引き起こす可能性があります。新入社員研修をきついと感じさせないための対策が必要です。人事としては、次のような視点でプログラム、カリキュラムを見直してみるとよいでしょう。
- 研修の目的、ゴールイメージを説明する
- 余裕のある研修プログラムを組む
- グループワークを取り入れる
- 研修ゲームを取り入れる
- 配属先の上司との面談を設ける
- メンター制度を活用する
- 人事部が積極的にフォローする
研修の目的、ゴールイメージを説明する
先にも述べましたが、新入社員の中には、研修の目的やプログラムの意図を理解せずに、研修自体を「つまらない」「無意味」と受け取ってしまう人がいます。あからさまに態度に示す人は少ないですが、そういう新入社員の興味関心をひきつけて意欲を引き出すのは、経験豊富な研修講師でも難しいものです。それでも、絶対にやっておくべきことがあります。それは、新入社員研修の目的をきちんと伝えることです。この研修を通じてどのようになってほしいのか、具体的なゴールイメージをしっかりと描かせるのです。例えば、「この研修を通して、社会人としての基礎力を身につけて配属を迎えてほしい。そうすれば、これから出会う上司や先輩、お客様も喜んでくれるはず。」などと声を掛けます。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、この点がすっぽり抜け落ちているために、新入社員の意欲が高まらないということは少なくありません。
余裕のあるプログラムを組む
新入社員研修では、限られた時間の中で新入社員を教育しなければいけません。しかし、あまりにつめこみすぎるのは厳禁です。「休憩時間が短い」「終了時刻が遅い」といった不満がたまらないよう、余裕のあるプログラム、スケジュールを組んでください。また、余裕のあるプログラムを組むことで、新入社員からの質問に答える時間も確保できます。質疑応答というインタラクティブな学びの要素を取り入れることで、研修効果が高まります。
グループワークを取り入れる
新入社員研修では、グループワークを取り入れるのがおすすめです。グループワークを取り入れることで、参加意欲も高まり、刺激も得られるはずです。同期との人間関係をつくる良い機会にもなります。じっと座って講義を聞いているだけというのは、ベテラン社員でもきついものです。インプットだけではなく、グループワークを通してアウトプットすることで、新入社員の主体性も生まれますし、学んだことの定着にもつながります。
研修ゲームをとりいれる
研修ゲームを取り入れる方法もあります。例えば、新入社員同士の距離を縮めるために「共通点探しゲーム」などをプログラムに組み込んでみてはどうでしょうか。出身地や好きな食べ物など、意外に共通点があるものです。会話の中で共通点を見つけられると、お互いの距離をグッと縮められます。そのほかにも、自己紹介ゲームや他己紹介ゲームなど、ゲームに使える要素はさまざまありま。新入社員の緊張を解き、心理的安全性を確保した状態で研修がすすめば、効果も高まるはずです。
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配属先の上司との面談を設ける
新入社員の配属先がすでに決まっている場合は、配属先の上司との面談を設けるのもいいでしょう。上司との面談では業務内容だけではなく、配属される人材に対してどのようなことを期待しているのかを説明してもらいます。配属先の業務が明確になるため、自分が何をすべきかを把握するいい機会になるかもしれません。積極的に検討してみて下さい。
メンター制度を活用する
メンター制度を活用して新入社員の精神的な負担を軽減する方法もあります。メンター制度とは、経験豊かな先輩社員が年齢の近い後輩社員をサポートする制度のことです。サポートする側をメンター、サポートを受ける側をメンティといいます。直接の上司や先輩とは異なる先輩社員がメンターとしてサポートしてくれるため、メンティが人間関係の悩みなどを相談しやすいといった点がこの制度のメリットです。
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人事部が積極的にフォローする
人事部においても、新入社員のメンタル面をサポートしましょう。採用活動からコミュニケーションをとってきた人事部は、新入社員にとって本来、もっとも頼りになる存在のはずです。「いつでも、どんなことでも気軽に声をかけてほしい」と表明するだけでも、新入社員には心強いものです。オンラインミーティングやビジネスチャットを上手に活用し、職場の上司や先輩、同期には話しにくいことの相談に乗る姿勢を示しましょう。
慣れない環境や習得すべき情報量の多さにストレスを感じ、新入社員研修を「きつい」「つらい」「無意味」と感じる新入社員はたしかにいます。研修目的やゴールイメージを明確にしたうえで、スケジュールに余裕を持たせたり、グループワークや研修ゲームを取り入れることで、前向きな意欲を引き出していきましょう。