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「良い会社」とは、どういう会社なのか?

2020年11月11日更新

「良い会社」とは、どういう会社なのか?

「成長ドライバ理論」は、松山大学経営学部の東渕則之教授が長年にわたり「良い会社」の調査・研究をしてきた結果をもとに、企業の成果や成長を左右する原動力(ドライバ)とその関連性を明らかにし、経営の全体像として見える化した理論です。

シンプルな一枚のフレームワーク図に経営の全体像、経営の基本メカニズムが明快に表現されています。今回は、良い会社づくりが企業成長の要諦であることを、東渕氏に解説いただきます。

成長ドライバ理論のフレームワーク

「良い会社づくり」が長期安定的な成長をもたらすキーワード

「いい会社をつくりましょう」
「日本でいちばん大切にしたい会社」
「リストラなしの『年輪経営』」
「日本一社員がしあわせな会社のヘンな"きまり"」
「社員にもお客様にも価値ある会社」
「人本経営」
「ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み」

これらは2000年以降に上梓された「人を大切にする会社」を扱った書籍のタイトルです。ほんの一部をここに挙げさせていただいたもので、2000年以降、同様のテーマを扱った書籍が数多く出版されてきました。このように、近年、「良い会社」、「いい会社」「人を大切にする経営」というフレーズを耳にする機会が増えています。こうした会社、経営への注目が高まっているのでしょう。では、「良い会社」とはどのような会社でしょうか。

私は、「社員を大切にし、社員と会社がともに成長する会社」が「良い会社」であると考えています。
「社員を大切にする」と言うと、社員を甘やかせるというように捉えられることがありますが、そうしたことを指すのではありません。また、給与・賞与や休日などの待遇、福利厚生の制度が充実していることなどを指すものでもありません。会社が業績を上げることを中心に考えるのではなく、一人一人の社員がやりがい、働きがい、生きがいを感じているかどうか、そして、仕事を通じて社会に貢献していることを実感し、成長できていると感じられるか。そうしたことを重視する会社、経営を意味しています。
そして、会社の成長についても、売上や利益など会社の業績を伸ばしていくことや、社員数など規模を大きくしていくということを指すのではなく、「質の成長」という面を重視しています。社員が高い意欲を持ってイキイキと仕事に取り組み、社員が成長することで、業務の仕組みも改善進化し、それらが相俟って、より良い商品が生まれ、お客さまに対するサービスも良くなります。結果的に売上げや利益も伸びていきます。お客さまからの感謝も多くなり、社会からの信頼も高まり、職場に良い雰囲気が醸成され、安心して仕事ができるようになります。これらを通じて、会社への信頼感や社員の働きがいや成長意欲もますます高まっていきます。そのような状態になっていくということを「質的な成長」と言い表しています。
以上を総合して、社員を大切にし、社員と会社がともに成長する会社を良い会社としているわけですが、こうした良い会社が注目されるようになったのは必然のことであったと考えられます。すなわち、バブル崩壊後の長期にわたる経済低迷の時代を通じて起こってきた人口構造の転換、価値観の変化、そして産業構造の変化が、「人」中心の会社経営への転換を促進させたのだと言えます。

少子高齢化、生産年齢人口の減少は、働く人を惹きつける会社づくりをしなければ事業継続が危ぶまれる事態すら起こり得るということに加え、量的成長を目指すことを唯一の価値観としていたのでは経済が成り立たないということにもつながります。物的な豊かさを追い求めるのではなく、持続可能性の重視、人と人との絆やつながり、共感性への着目など価値観の転換、多様化が進みました。そして、産業構造もバブル崩壊後は1次・2次産業を含めてすべての産業が「サービス化」し、「モノを生産/製造し提供してその対価を得る」ことから「顧客ニーズに対し価値を提供し対価を得る」ことへ事業が変わっていきました。
こうしたことを背景に、社員を大切にする経営、人を重視した良い会社づくりへの関心が高まっていったのです。

経営の基本メカニズム=成長ドライバ理論のフレームワーク

もちろん、社員を「表面的に」大切にするだけでは決して良い会社は作れません。
そもそも、経営の基本的なメカニズムがうまく回っているということが大前提となります。会社が何のために存在しているのか、社会に対してどんな価値を提供し、それが実現できるとどんな状態となっているのか。具体的に取り組む事業はどのようなものか。顧客を絞り込み、顧客に対して必要とされる価値を効率よく提供できているか。その価値を求める潜在顧客に会社や商品・サービスを知ってもらい、価値に見合った対価が得られているか。普通の能力の社員が普通に働いて、この事業を回し、事業成長を実現する適切な仕事の仕組みが作られているか。社員が仕事を通じて成長できるような環境になっているか。これらの経営の基本的なメカニズムがうまく回っていることが前提で、それに加えて社員を大切にするのです。それによって、経営の基本メカニズムがよりよく回って、ビジネスモデルや会社のさまざまな仕組みの進化、お客さま満足度の向上、ひいては財務的な成果に結びついていきます。

社員を大切にすること。その前提として、経営の基本メカニズムがきちんと確立・機能していること。この2つがそろうことで、「良い会社」へと成長していくことができるのです。

経営の基本メカニズムを確立・機能させた上で社員を大切にする。では、「経営の基本メカニズム」とはどのようなものなのか整理しておきましょう。
長野県に本社を置く伊那食品工業株式会社の最高顧問、塚越寛さんが、ある講演会で「経営とは、遠きをはかり、事業や組織に関するありとあらゆることに目配り、気配りをし、適時に的確な手を打つこと」とお話しされていたのを伺ったことがあります。私が約20年間にわたって研究してきたことは、正にその一言に集約されていたのでした。
「遠きをはかり、事業や組織に関するありとあらゆることに目配り、気配りをし、適時に的確な手を打つこと」とはどういうことか。会社の円滑な運営や成長を生み出す原動力となる要素、それらの相互関係を1枚のフレームワーク図にまとめた私の研究成果が、その疑問に明快な回答を与えることができます。このフレームワーク図こそ、ぜひ、会社を経営する際に、常に脳裏に描いておいていただきたいものです。
「社長」「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」の5つが経営の原動力、会社を成長させていくために重要なポイントだと考えています。

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東渕則之(とうぶち・のりゆき)

松山大学経営学部教授。一橋大学大学院商学研究科修了。悩める中小企業の経営者が使える経営学を構築することを目指して、20年以上にわたり実践的なフィールドワークを通じた統計学に依拠した調査・実験による研究を重ね、企業経営のフレームワークとして「成長ドライバ理論」を体系化した。このフレームワークの有効性と正確性は、日本経営品質学会、日本経営診断学会等で高く評価されている。 著書に『建設会社でも2ケタ成長はできる!』(東洋経済新報社)、『経営統計学のマネジメント的研究』(千倉書房)、『読んで使える!Excelによる経営データ解析』(共立出版)などがある。

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