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経営の基本メカニズムを押さえた「良い会社」のつくり方

2020年11月18日更新

経営の基本メカニズムを押さえた「良い会社」のつくり方

「成長ドライバ理論」は、松山大学経営学部の東渕則之教授が長年にわたり「良い会社」の調査・研究をしてきた結果をもとに、企業の成果や成長を左右する原動力(ドライバ)とその関連性を明らかにし、経営の全体像として見える化した理論です。

シンプルな一枚のフレームワーク図に経営の全体像、経営の基本メカニズムが明快に表現されています。良い会社づくりを進めるには、経営の基本メカニズムを確立・機能させた上で社員を大切にすることがポイントとなります。今回は、成長ドライバ理論のフレームワーク図を用いて、「経営の基本メカニズム」を解説します。

成長ドライバ理論のフレームワーク

企業成長の原動力となる、5つのメインドライバと5つのサブドライバ

成長ドライバ理論のフレームワーク図には、企業の円滑な運営や安定的な成長を生み出す原動力となる要素である「社長」「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」の5つの大きな要素が表現されています(これらを「メインドライバ」と呼んでいます)。

「社長」が自分の事業に懸ける思いや将来像を「経営理念・ビジョン」として掲げ、社員に浸透させます。「経営理念・ビジョン」の実現が企業目的であり、それを実現するために、効率的・効果的に価値を創造し、社会に提供してお金を稼ぐために「ビジネスモデル」を設定します。そして、それを普通の能力の社員が普通に働いて実現できるように仕事を仕組み化、つまり「システム化・型決め」します。「ビジネスモデル」も「システム化・型決め」も進化・発展する必要がありますが、それを実現するには社員が成長する必要があるので、仕事を通じて社員が育つような「行動環境」が同時に整備されている必要があります。

5つ目の「行動環境」は、ざっくりと言うと、いわゆる会社の風土や雰囲気、においのことです。社員が成長するためには、仕事を通じて学習と成長が起こるような行動環境であることが望ましいと言われています。そして、社員が育つ行動環境を生み出す原動力としては、「ストレッチ」「サポート」「自律」「規律」「信頼」の5つの要素がポイントとなります(これらを「サブドライバ」と呼んでいます)。

「ストレッチ」とは、今の力を上回る仕事に背伸びして挑戦し、お客様により喜んでもらいたいと考えること姿勢のことで、社内の雰囲気としても、そのような姿勢を称賛するようなものになっていることが望まれます。

「サポート」とは、上司の役割のことで、社員が成長している会社では、上司は部下を管理するよりも部下が仕事を進めるうえで相談に乗ったり、ストレッチすることを支援したりする割合が多くなっています。

「自律」とは、部下がいちいち上司にお伺いを立てて行動するのではなく、自分で判断して行動することです。もちろん、このためには会社の経営理念・ビジョンを自分の価値判断基準に同一化しておく必要があります。

「規律」とは、会社や部署で決まったことを守ったり、また、しっかりとやり切る、継続したりすることです。せっかくよい取り組みをしていても、途中でフェードアウトしてしまうようでは、社員は成長しません。

そして、「信頼」です。社員の会社や社長、上司、同僚への信頼です。経営が傾いたり、社内の雰囲気がよくなかったりする企業では、この「信頼」が低下しています。「信頼」が低下すると、「ストレッチ」「サポート」「自律」「規律」も機能しなくなります。

次に各ドライバ間の矢印ですが、各ドライバが影響を与える方向を示しています。それぞれのドライバは独立しているものではなく、メインドライバは相互に影響を及ぼし合っていることを示しています。また、サブドライバも同じで、相互に影響を及ぼし合っています。

会社経営にあたって考慮すべき企業環境分析と成果分析

これらドライバに加えて考慮しないといけないことが2つあります。その1つは「企業環境(分析)」です。時流に合ったビジネスをすることが、経営を軌道に乗せる上で非常に重要です。時流に合えば事業は自然に軌道に乗りますが、同じだけあるいはそれを超える努力を傾けても時流に合わないビジネスはうまくいきません。ときには抗いきれない大きな環境変化もあるでしょう。そのため、社長は、経営に当たって、社内だけを見てメインドライバ、サブドライバをコントロールすればよいというものではありません。未来の企業環境を予測し、時流を読んだ上で、ドライバをコントロールすることが求められるのです。

考慮しないといけないもう1つは「成果分析」です。ドライバをコントロールする際に、操縦席の計器の役割を果たすのが「成果分析」の行為です。経営行為の成果の中には、社員の成長、仕事の効率化・仕組み化、顧客満足の向上、など非財務的な成果と、売上高や利益額、利益率など財務的な成果などがあります。それらの中で社長はしばしば、財務的な成果のみを性急に求めがちです。とは言え、経営努力が財務的な成果となり、目に見えるようになる前に、質的な成長が起こっていることを見落としてはいけません。ここでいう質的成長とは、社員の成長(やる気、やりがい、モチベーションの向上も含む)、仕事の効率化・仕組み化、顧客満足の向上などです。

上昇スパイラルを描く良い経営とは

中堅・中小企業において、以上のようなメカニズムを構想し、つくり出すのは、「社長」です。そして、指針として社員に示し、リードしていくために「経営理念・ビジョン」が存在します。社長は事業に思いを持って、これを高く掲げ、基軸にしながら、「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」を作り込み、率先垂範して実行していく役割を担っているのです。

そして、経営の基本的なメカニズムがうまく回っているというのは、「社長」「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」が互いに整合性を持ちながら、ダイナミックに刺激し合い、相互に引き上げ合い、上昇スパイラルを描いている状態を指しています。そして、このようにメインドライバ、サブドライバをうまく回るようにコントロールしていくことが、正に経営行為の要諦であると言えます。そして、これがうまくいくためには、社員を大切にする思いやそれに裏打ちされた行為が有効なのです。言い方を変えると、良い会社づくりの鳥瞰図は、この図のすべてに社員を大切にする思いや行為が散りばめられている図だと言えるのです。

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東渕則之(とうぶち・のりゆき)

松山大学経営学部教授。一橋大学大学院商学研究科修了。悩める中小企業の経営者が使える経営学を構築することを目指して、20年以上にわたり実践的なフィールドワークを通じた統計学に依拠した調査・実験による研究を重ね、企業経営のフレームワークとして「成長ドライバ理論」を体系化した。このフレームワークの有効性と正確性は、日本経営品質学会、日本経営診断学会等で高く評価されている。 著書に『建設会社でも2ケタ成長はできる!』(東洋経済新報社)、『経営統計学のマネジメント的研究』(千倉書房)、『読んで使える!Excelによる経営データ解析』(共立出版)などがある。

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