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企業成長を促進する「システム化・型決め」とは~成長ドライバのあるべき姿

2020年12月16日更新

企業成長を促進する「システム化・型決め」とは~成長ドライバのあるべき姿

「成長ドライバ理論」とは、企業の成果や成長を左右する原動力(ドライバ)とその関連性を明らかにし、経営の全体像として見える化したものです。今回は、成長ドライバ理論のメインドライバの一つ「システム化・型決め」について、松山大学経営学部教授・東渕則之氏に解説いただきます。

成長ドライバ理論のフレームワーク

ビジネスモデルに実効力を与えるシステム化・型決め

ビジネスモデルを確立できたとしても、効率的な生産体制やサービス提供方法が伴わなければ、業容を拡大していくことはできませんし、競合との競争によって淘汰されてしまいかねません。筋の良いビジネスモデルを構築しても、それを「一時的な成功」にとどめず安定的な成長を図るためには、「システム化・型決め」が必要なのです。

システム化・型決めは、ビジネスモデルや行動環境を効率的・効果的に動かし、実効力を与える仕組みづくりを意味します。筋の良いビジネスモデルにシステム化・型決めが伴うと、仕事の効率性が高まり、また、精緻化され、一時的ではない実効力を持つようになるのです。属人的な能力に依存することなく、普通の人が普通に働いて成果を上げることができるようになります。

したがって、システム化・型決めでは、誰が担当しても一定の手順を踏めばスムーズに遂行でき一定以上の成果が生み出せるよう、業務を標準化してその手順をマニュアル化することが求められます。仕組み化された個々の作業が「型」、それを決めることを「型決め」と呼びます。「型」が集まると「システム」と言えます。一連の作業を仕組み化することが「システム化」です。これらをまとめて、「システム化・型決め」と呼んでいるのです。

他のドライバの力を高めるシステム化・型決め

実は、システム化・型決めはビジネスモデルに限られるわけではありません。また、仕入れ・生産・販売のような会社の活動の中軸となるライン業務に限られるものでもありません。会社で行われるありとあらゆる仕事について「システム化・型決め」を考えなければならず、また、そうすることによって、企業活動のあらゆる面での生産性が高まり、また、社員の成長を促進してくことができます。良いシステム化・型決めは、人を伸ばす力を持つのです。

経営理念の唱和、商談における応酬話法、社員の人事考課と報酬制度、人材育成体系、部下の育成のための声掛けの方法などは、どの会社でも、程度の差はあれ実施のためのマニュアルを作ったりして、システム化・型決めを行っていると言えます。むしろ、日々の仕事がすべて対象になると言えます。財務会計・管理会計の視点でどのような指標やモニタリングの仕組みを設けるのか、また、技術革新の激しい種々のICTをシステム化・型決めのツールとしていかに有効活用するかということも考えなければなりません。さらに言うと、どのような組織体制にするのかということも仕事を進める仕組みの一環として考えられるので、システム化・型決めと言えます。

これらは、視点を変えて見てみると、システム化・型決めが他の成長ドライバを強化、向上させているということが言えます。

例えば、経営理念・ビジョンへの理解・共感を深めるためにクレド(クレドカード)とその読み合わせが有効であると言われています。クレドもその読み合わせもシステム化・型決めの一つです。クレドの読み合わせはクレドに書かれていることを単に唱和するということではありません。毎日、朝礼等の中で数人の輪を作って、クレドの中から一つの項目を取り上げ、社員一人ひとりが、日ごろの仕事に結びつけて気付いたことを話すのです。つまり、経営理念や行動指針などが自らの行動レベルに落とし込んでまとめられたものがクレドであり、毎日、朝会などの中で一項目を取り上げて、自らの体験と照らし合わせて解釈し、考え、他のメンバーに対して小スピーチをするのです。併せて、他のメンバーの小スピーチや意見を聴き、クレドの内容への理解を深め、自分の考えの幅を広げていきます。このような読み合わせの取り組みによって、日々、クレドの内容について自ら考えることになり、経営理念や行動の指針を深く理解し、身に付けることができるのです。

この例からも明らかなように、システム化・型決めをどのように設計するのかがポイントとなり、的確に設計されたシステム化・型決めは社員の力を伸ばし、企業を成長に導くものとなる一方、誤ったシステム化・型決めは、他の成長ドライバの改善、向上、強化を損ねてしまう恐れがあることに留意しなければなりません。

標準化・マニュアル化と日々の改善

システム化・型決めでは、標準化、マニュアル化がカギとなります。より良いものを目指して、標準化、マニュアル化に当たっては多くの企業のやり方を学び、ベストプラクティス(ベストなやり方)を手本にするのが良いでしょう。優れた会社へのベンチマーキング(視察訪問)もその機会となります。

マニュアル化する際には単に作業手順を記すだけではなく、各作業の目的あるいは合格基準が分かるようにしておく必要があります。例えば、「お皿を洗って、布巾で拭いて、食器棚に仕舞う」一連の作業の「布巾で拭く」作業は、「布巾で拭く」ではなく、「布巾で拭いて水分を取る」とすべきです。こうすることで、どのようになっていれば作業が完了したと言えるかが自ずと作業者に分かるからです。

また、いったんシステムや型が出来上がっても、機能向上や費用節減を目指して常に改善していくことが必要になります。マニュアル化というと、型通りの仕事のやり方に固執し融通が利かない、発展性がない、人間味がないなどとマイナスに見られがちですが、それは違います。一定以上の価値を生むことを保証できるツールなのです。それを超える臨機応変な対応はマニュアルの内容を踏まえた上で、さらに積み重ねるものです。また、マニュアルで記された作業方法がそのままで良いというものではありません。さらに良くする方法について、日々、作業者である人間が考えて、改善を重ねていくことが求められるのです。

無形資産として企業価値を高めるシステム化・型決め

そして、このような仕組み化を行っていくことは、企業が普遍的な競争力を保持、向上させていくために重要なものとなります。適切なシステム化・型決めがなされている会社、すなわち、メインドライバ「システム化・型決め」が有効に機能している会社というのは、創業者、社長を含む、ごく一部のスーパープレイヤーに依存した価値創出というレベルから脱却し、その仕組みを内包した組織自体に価値が認められる、中長期で安定的に事業継続・成長することのできる会社へと一段、ステップアップした会社だと言えます。

「普通の人が普通に働いて所期の価値を創出できる」ということは、そう容易にできることではありません。特に業績が順調に推移しているときなど、確かにこうした面倒なことはどうしても後回しにしがちなのかもしれません。しかし、有能な社員の突然の退職といった突発的な事象にも動じることのない盤石な事業・業務運営基盤を設けなければなりませんし、また、合理的な生産・サービス提供体制をベースとすることで社員を余計なストレスから解放し、さらなる付加価値向上のために能力をいかんなく発揮してもらい、また、成長することのできる環境を備えるということにもつながります。

このようにシステム化・型決めは、技術革新や競合環境などの変化に応じた会社の進化・発展を進めていく力を左右するものであり、企業価値を高める重要な一要素となる「無形資産」なのだという意識で取り組まれるとよいでしょう。

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