「ほめる人材育成」で理念経営、業績アップを加速する!
2020年2月18日更新
朝礼で経営理念を唱和するだけでは、人は育たず、業績向上にもつながらない? ラーメン屋の洗い場からコンサルタントへと転身した原邦雄氏が提唱する「ほめる人材育成」で理念経営を加速する方法とは?
(原邦雄著『今すぐできる! 今すぐ変わる! 「ほめ育」マネジメント』より)
理念経営をしている経営者が陥りがちな落とし穴
近年、経営理念の重要性が叫ばれるようになったのにともない、経営理念を中心に置いた理念経営を行う企業が増えてきました。
そのような企業がよく行っているのは、経営理念を書いた紙を額装して全事業所に飾ったり、毎日朝礼で経営理念を唱和したり、リッツ・カールトンのようなクレドカードを作ってスタッフに携帯させたりといったことです。
また、年に1回程度、社長がスタッフの前で、「我が社の経営理念はこうで、ミッションはこうで、ビジョンはこうで、これを実現するためにみんなで一丸となってがんばろう!」と檄を飛ばす会社もあります。
しかし、このようなことをいくらやっても、残念ながら経営理念がスタッフに浸透していくことはありません。
なぜなら、単なる唱和はもちろんのこと、社長のそんなスピーチではスタッフの心に全く響かないからです。
スタッフにとっては、経営理念は単なるお題目にしか聞こえず、自分とはかけ離れた遠い世界のことにしか思えないのです。
そこで、ほめ育マネジメントでは、スタッフ一人ひとりの長所や業績アップにつながる行動をみんなでモデリングすることで全体のレベルアップを図る目的で、ミーティングや全体会議の場でがんばっているスタッフを前に呼び、彼の行動をほめつつ、みんなにシェアするということを行っています。
このとき同時に「○○さんの行動は経営理念のこのことです」とか、「○○くんの行動はこの経営理念の実現につながっています」といった話をすることで、経営理念を身近に感じることができるようになるのです。
社長のスピーチも同じで、このようなスタッフのエピソードと絡めて経営理念のことを話すようにすれば、スタッフにも伝わりやすくなるといえます。
さらに、このようなミーティングの場を設けることで、これまで他人に関心のなかった若者たちも、次第に他人の行動に関心を持つようになり、「どうすれば、そんなことができるようになるの?」「どういう勉強をしているの?」といった学習意欲を持つようになります。
今の若者は学び方を知らないだけで、このような場を作ってあげれば、自然にやり出すようになるのです。
「○○十訓」を作ろう
朝礼などの場で、経営理念をみんなで唱和している企業を見るたびに、思うことがあります。
それは「経営理念よりも『○○十訓』を唱和したほうがよっぽど効果があるのに......」
ということです。○○十訓というのは、KGIとKPIを使って、10通りの行動基準を作成したものです。
たとえば、宅配ピザの会社、ピザーラでは、ポスティングにおける行動基準を10個にまとめた「ポスティング十訓」なるものを作成。それを毎日みんなで唱和することで、売上アップを実現しています。
それまで同社では、ポスティングを業者に頼んでいましたが、業者はほかのチラシと一緒に入れるし、住民と会っても挨拶もしないので、スタッフがまかなければダメだということになったのです。
ところが、ポスティングを面倒がって、自分のノルマの分をコンビニのゴミ箱に捨てるスタッフも出てくる始末。
そこで、同社はいかにきちんと配るかという行動目標を考えることにしたのです。
まずチラシをまく地域をスタッフごとに割り当てました。その地域から注文が入れば、誰がチラシをまいたのかがわかるようにするためです。
その上で、ポスティング中に住民と会ったら、帽子を取って「こんにちは、ピザーラです!」と挨拶するとか、チラシを入れる向きを決めるとか、子供がいたら「お母さんに渡しておいて」と声をかけるといったことを決めていったのです。
そして、決めた行動項目を一生懸命やった結果、ポスティングしたチラシの枚数と売上が比例して上がるようになり、「ポスティングを制する者が、ピザーラの売上を制する」と言われるほど、チラシの効果が出るようになったのです。
その行動項目がピザーラの「ポスティング十訓」で、これを毎日みんなで唱和することで、成果を出し続けているのです。
では、なぜ唱和することが成果につながるのか?
それは、毎日唱和することで、スタッフの意識の中に刷り込まれ、ポスティングを行う際に、自然とその行動が出るようになるからです。
このような「○○十訓」も、ほめる基準作りの一つですので、参考にしてみてください。
『今すぐできる! 今すぐ変わる! 「ほめ育」マネジメント』
「スタッフのやる気が感じられない」
「アルバイトがすぐ辞める!」
「部下も育てたいけど、業績も上げないと......」
人材難の現代において「今いるメンバーで業績を劇的に上げる」必要性は日に日に増してきている。
そんな中「現場を知らなければ一流のコンサルタントにはなれない」と一念発起し、ラーメン屋の洗い場に転職した経験を持つ著者が語る、「今いるメンバーで業績を劇的に上げる」ためのキーワード。「現場」にこだわりきった著者の「ほめ育」マネジメントで、人も企業も輝くこと間違いなし!
原邦雄
「ほめ育」コンサルタント
株式会社スパイラルアップ代表取締役
一般財団法人 ほめ育財団 代表理事(本社 東京、支部/アメリカ・ノルウェー)
「ほめ育」コンサルタント。一般財団法人 ほめ育財団 代表理事。(本社 東京、支部/アメリカ・ノルウェー)。1973年、兵庫県芦屋市生まれ。兵庫県立芦屋高等学校卒業。船井総合研究所コンサルタントからラーメン店の洗い場に転職し、現場から積み上げた"ほめ育" ノウハウで、多くの業種にコンサルティングを行っている。「世界中の人たちを輝かせる!」をミッションに、日本・アメリカ・ノルウェー・中国・シンガポールなどに「ほめる人材育成」を広める活動をしている。誰でも気軽に受講できる講座から、企業の業績アップのための研修まで、のべ3万人が受講。196ヵ国に広げるビジョンを掲げ、爆発的に広めている。ハーバード大学やリッツカールトンホテルでのセミナーをはじめ、年間200回以上の講演を行う。ほめ育マネジメントの第一人者として、150社の企業の業績を次々に上げる独特の人材育成のノウハウは、日本だけでなく、アメリカ、中国、東南アジアの企業からもオファーが止まらない。テレビ朝日『報道ステーション』、NHKにも出演。著書に、『売上が上がるほめる基準』(商業界)、英語・中国語にも訳された『やる気と笑顔の繁盛店の「ほめシート」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。」