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経営のわかる人材とは? 経営人材の要件と育成のポイント

2023年5月 8日更新

経営のわかる人材とは? 経営人材の要件と育成のポイント

人的資本経営に関する議論の高まりを背景に、人材投資を増やす動きが活発になってきました。特に、経営人材の育成に重点的に投資を行う企業が増えている印象を受けます。そこで本稿では、経営人材の育成について、経営のわかるリーダーという文脈から、そのポイントを考察いたします。

INDEX

経営人材の要件とは?

VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代における競争力の格差は、企業間の経営力の格差に起因します。そして、企業の経営力は「経営のわかるリーダー」が存在して初めて発揮されるものです。そうした背景をもとに、経営のわかるリーダーの育成に取り組む企業が増えているのです。

経営のわかるリーダーは、自主責任意識が強く"自分ごと"の発想をします。また、利他的で公の精神をもち、何が正しいかにこだわります。さらに、健全な危機意識をもって"日に新たな"精神でチャレンジし続けます。そして、何よりも本気です。

企業存続のカギは、現在および将来の経営を担う経営人材を「経営のわかるリーダー」に育てあげ、その層をいかに厚くするか、その一点にかかっていると言っても過言ではありません。

見直しを迫られる経営人材育成

経営のわかるリーダーを育てるために、各企業でさまざまな取り組みがなされていますが、必ずしもそれらが効果を上げているわけではありません。

ある調査では、経営人材育成の取り組みについて企業に聞いたところ、「満足していない」(62.8%)と「不満である」(18.1%)の回答の合計が全体の79.9%に達しました。
また、今後の取り組みについて聞いたところ、
「ベースとなる思想までは変えないが、体系全体を大きく見直す」(31.9%)
「基本となる思想から大きく見直し、体系・施策もゼロベースで変革する」(9.6%)
という回答が得られ、大幅にアプローチを変えようと考えている企業が41.5%に達することが明らかになりました。

これら調査結果が物語っているのは、従来型の経営人材育成のやり方が限界に達しており、これからの取り組みについては、新しい発想で構想する必要があるということなのです。

※1 調査名:経営者育成とサクセッションの進化ステージに関する調査
実施会社:コーン・フェリー
回答期間:2020年6月~7月
調査方法:オンラインアンケート形式
有効回答数:95社

松下幸之助に学ぶ経営のコツ

「事業は人にあり」という信念をもち、実際、多くの経営者を育てることで巨大企業グループを築き上げた松下幸之助。彼が、経営人材を育てるために大切にしていたのはどのような考え方であったのか、著作の一節からご紹介しましょう。

経営学は学べますが、生きた経営のコツは、教えてもらって「分かった」というものではない。(※2)

知識は教えて教えられるし、習うこともできる。けれども、悟りということは、話を聞いても悟れない。なにかフッとした拍子に、自分がインスピレーションを感じて、それで無言のうちに悟るものだ。(※3)

食うや食わずの状態に三年間難行苦行したら、わかるかもしれない。その難行苦行もせずにわかるはずがない。単に大学で勉強してきて、そして多少頭がいいということで、わかっている程度では、悟りは開けない(※4)



※2 出典:『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』松下幸之助著(PHP研究所)
※3 出典:『リーダーを志す君へ』松下幸之助著(PHP研究所)
※4 出典:同上

幸之助の言う「経営のコツ」は、知識や情報として他人から教えられるものではなく、自分で苦労した体験から紡ぎ出すしか獲得の方法はないのです。つまり、経営人材を育成するために大切なことは、「体験」と「自得」だというのが、幸之助の持論でありました。

経営人材を育成する3つのポイント

経営人材を育てるための育成施策を設計する際に、押さえておきたいポイントは以下の3点です。

「反復」と「釘打ち」

東洋思想では、人材育成の要諦は「反復」にあると考えられています。経営人材育成においても、経営のコツを体得するまで、特定の学びや実践を何度も繰り返すことが重要です。また、いったん獲得した気づきは薄らいだり、高揚した思いも時間の経過とともに低下してしまいがちです。したがって、それがずり落ちてこないように、文字化したり発話するなどして、「釘打ち」して固めることが必要です。

 

「問答」を通じて気づきを得る

自社(自部門)で現在起きている「生の課題」を取り上げ、その解決のための実践を行います。そして、実践で得た体験を問答と内省を通じて振り返ることで、自分なりの知見(持論)が形成され、経営のコツを徐々に体得できるようになるのです。

したがって、研修設計にあたっては、「座学」⇒「実践」⇒「問答」⇒「内省」⇒「持論化」というアクションラーニングの考え方に則ったプログラムを選択するべきでしょう。

共通言語化する

次に考えるべきは、個人の「気づき」を組織の「共通言語」にし、全員経営の状態をつくることです。そのために、研修受講者が「伝道師」となって、自分が学んだことを各職場で伝えていきます。教えることによって、その人自身の理解が促進すると同時に、周囲の成長も後押しされ、個人の能力開発と職場の組織開発が同時進行するでしょう。

今はまさに、人材育成の好機

リーダーシップ開発の研究領域には、「修羅場経験が人を育てる」という考え方があります。
そういう意味では、現在の経営環境(コロナ禍を機に見直しを迫られるビジネスモデル、原材料価格の高騰、多様化する価値観をもった人材のマネジメントの仕方、等々)には修羅場経験があふれていて、今まさに人材育成の好機と言えるでしょう。

経営者・人事担当の方がたには、現在の状況を、経営のわかるリーダーを育てる絶好の契機と捉え、できることから実践していただきたいと思います。

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的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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