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質問、指名、コメント~研修講義の基本心得

2016年5月31日更新

質問、指名、コメント~研修講義の基本心得

社員研修で受講生に質問、指名、コメントする際に、気をつけるべきこととは? 研修講義のコツをご紹介します。

新入社員研修やコンプライアンス研修など、研修の内製化をする場合、現場のリーダー層などに社内講師をお願いすることもあるだろう。指名だけして「あとは任せた」では、頼まれた方は多少なりとも不安が残り、研修成果につながらないこともある。

よくありがちなのが、一方的にレクチャーしておしまい、というケースである。そうならないために、人事部としては、研修講義の留意点をきちんと伝えておくべきだろう。そこで、質問、使命、コメントといった研修講義の基本心得を整理しておきたい。

受講生への質問

講師の一方的な情報提供に終始するのであれば、本を読ませたりVTRを鑑賞させたりすればよいだろう。しかし、研修のよさはほかにもある。それは、研修が受講者と講師の対話の場という点である。受講者への効果的な質問や、受講者からの質問に対する適切なコメントこそが、研修の味わいのひとつであろう。有効に使えば、活気ある雰囲気をつくり出すことができる。

質問の目的

・受講者との親近感を生み出す
・インストラクションの一方通行を阻止する
・受講者の理解度を確認する
・受講者の思考を促し、研修効果を高める
・適度な緊張感を醸成する

質問の順序

1)全体に問う 
2)しばらく間をおく(考える時間を提供する)
3)自発的発言者に当てる(いなければ指名) 
4)2~3名に繰り返す

質問の注意点

・質問の意図を明確に
・簡単すぎたり、難しすぎたりしないように
・詰問調にならないように
・全員に対して、考え、答える機会を提供するつもりで
・よくできる人ばかりを指名しない(公平に公正に)
・一対一でやりとりしない(一対一のやりとりを全体に伝える)
・答えてくれたことに対して感謝する、お礼を言う
・答えをきちんと受け止める
・たとえ答えられなくても誠実に対処する、あまりヒントを出しすぎるのも失礼

質問に対する講師コメントの注意点

コメント(Comment)というと、一般的に「注釈、解釈、評論、批判、意見」などと訳されるが、もともとの由来についても考えてほしい。「Com=共に」「Commit=自分の立場を明らかにする、言明する人物や事柄に関わる」。すなわち、コメントとは「言葉を通じて、その対象に働きかける」ことである。

コメントの注意点

・饒舌さは不要、自分の考え、自分の言葉で語ること
・相手を論理で説き伏せたり、知識をひけらかしたりするためのものではない
・白黒はっきりしていることであれば、明快に伝えればよい
・大切なことは「相手に気づきのメッセージ」を与えること
・分からない質問に対しては、知ったかぶりせず、正直に分からないことを伝える(ただし、後日調べて回答するのか、その場で全体に問うのか、分からないだけで終わらないように)
・あらかじめ、どんな質問がありそうか、想定しておくとなおよい
・平凡な日々の中で、非凡な「一日一発見」「言葉の探検」を積み重ねておく(こうした中から、含蓄のある言葉が紡ぎ出される)

一見、当たり前に見える事柄ばかりだが、心掛けると心掛けないでは大きな差が出るだろう。

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

茅切伸明(かやきり・のぶあき)

株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)

株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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