「働きやすさ」と「働きがい」~働きがいを高める5つの方法とは?
2024年11月26日更新
労働力不足を背景に、各企業で「働きやすさ」という観点から労働環境・職務条件を見直す動きが本格化しています。一方、社員の側に視点を向けると、「働きがい」を追求する人が若い世代を中心に増えています。企業の業績を向上させるためには、働きやすさと働きがいをいかにして両立させればいいのでしょうか。
業績に影響を与える2つの要因~「働きやすさ」と「働きがい」
企業の業績に影響を与える要因として、「働きやすさ」と「働きがい」の2つがあります。これらは、従業員の満足度向上と企業の業績拡大を左右するという点では共通項がありますが、その構成要素は大きく異なります。
働きやすさ
働きやすさは、主に外的要因によって決まります。具体的には以下のような要素が含まれます。
- 労働環境の整備
- 充実した福利厚生制度
- ワークライフバランスの実現
- テレワーク環境の整備
- 育児・介護との両立支援
働きがい
一方、働きがいは、個人の内面から生まれる感覚で、以下のような要素が関係します。
- 仕事への誇りや興味
- 適切な評価と認識
- 仕事の意義や重要性の理解
- 上司からの労いの言葉
- 自己成長の機会
モチベーションの研究領域で有名な「動機付け-衛生理論」の観点に立てば、働きやすさは「衛生要因」(仕事上の不満足につながる要因)であり、働きがいは「動機付け要因」(仕事上の満足につながる要因)と考えられます。
したがって、衛生要因(働きやすさ)を相応のレベルに整えて不満足を抑え込むと同時に、動機づけ要因(働きがい)を改善することで、社員の満足度が高まるのです。
働きがいと業績の関係
企業の業績向上には、働きやすさよりも働きがいの方が、影響力が大きいのです。
各種研究結果(※1)によると、働きがいのある会社は、そうでない会社と比較して売上の対前年伸び率が高いことが示されています。具体的には、「働きがいのある会社ランキング」にランクインした企業の売上対前年伸び率が平均33.9%であったのに対し、ランクインしなかった企業は平均12.0%でした。
これは、働きがいの高さが業績向上と関係があることを示唆しています。
※1 Great Place To Work® Institute Japanの調査
働きがいを高めるための5つの方法
働きがいを高めるための効果的な方法には以下のようなものがあります
1.成長と承認の機会創出
資格取得支援や社内表彰制度を導入し、社員の成長と承認欲求を満たします。
2.適切な目標設定
公平感と納得感のある目標を設定し、達成感を得られるようにします。
3.仕事への興味喚起
1on1ミーティングや社内公募制度を通じて、社員が興味を持てる仕事を見つける機会を提供します。
4.権限と責任の付与
適切なタイミングで昇進やエンパワーメントを行い、社員の裁量を広げます。
5.目的の明確化・共有
企業のビジョンや方針を明確にし、各業務の目的を共有します。
これらの施策を総合的に実施することで、社員の働きがいが高まり、組織の活性化。業績の向上につながるのです。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。