疲弊する管理職。負担感の要因と活性化のポイントを解説

管理職に求められる期待役割が年々拡大する一方、負担感を感じる管理職も増えています。組織の要とも言える管理職が活性化し、本来の職責を果たし切るためには、どうすればいいのでしょうか。

役割を果たせない疲弊した管理職

管理職を称して「組織の背骨」という表現がなされることがあります。組織の中間に位置する管理職は、現場・経営層の両方への影響が大きく、組織全体を支える重要な役割を担っていることから、「背骨」という表現が使われるのです。

ところが、このような重責を担った管理職が、役割を充分に果たし切っていない組織が増えているようです。なぜ、管理職が役割を果たせていないのでしょうか。それは、管理職が心身ともに疲弊してしまって、戦える状態になっていないことが原因と考えられます。

参考記事：管理職はどこから？　求められる役割や必要なスキルを解説│ＰＨＰ人材開発

管理職の負担感の要因

パーソル総研の調査（※1）によると、管理職の負担感を増している要因として以下の3つが明らかにされています。

上記の調査結果からは、人員やコスト、労働時間等が削減されるにも関わらず、新たな業務への対応に追われている管理職の実態が垣間見えます。このように、矛盾した条件の下で喪失感、無力感、あきらめ感が高じ、その結果、疲れ切った管理職が大量培養されているのです。

参考記事：管理職は大変？　なりたくない理由と、ならないことの弊害│ＰＨＰ人材開発

管理職を活性化する方法

「組織の背骨」が機能しないということは、力強い事業活動をすることができなくなる由々しき問題であり、一刻も早く適切な処置をする必要があります。

管理職の負担感を軽減し、本来の活動に邁進できるようにするには、以下の3つのアプローチが効果を発揮します。

管理職育成に思い切った投資を

失われた30年を経ても、今なお日本企業が抜け出せない成長鈍化のスパイラル。ここから抜け出すカギは、人材開発の強化しかありません。下図（※2）が示すように、日本企業の人材投資を国際比較すると、そのレベルの低さが際立ちます。

※2　出所：日本生産性本部「生産性白書」（2020）

海外の企業は、人材を「コストの源泉」ではなく、「付加価値を生み出す源泉」と捉えているので、そこに投資を行います。わが国でも人的資本経営の概念が普及し、遅ればせながら人への投資が高まりつつあることは好ましい傾向です。
ただ、この議論の高まりを単なるブームと見るのではなく、新たな成長を生み出す好機ととらえる積極的な姿勢が必要です。そして、これまでとは違った発想で人材開発を企画し直し、管理職に対して思い切った投資を各企業で行うべきです。

マネジメント能力に長け、仕事に使命感を感じる「強い管理職」が増えれば増えるほど、既存の組織が持続的な成長をもたらす「強い組織」へと進化発展していくでしょう。

参考記事：管理職が不足するとどうなる？　マネジメント人材を育成するための考え方と手法│ＰＨＰ人材開発

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的場正晃（まとば・まさあき）
ＰＨＰ研究所　人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、ＰＨＰ研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。