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新入社員~若手社員の成長過程と支援のあり方 「守破離」をフレームワークとして

2021年12月 6日更新

新入社員~若手社員の成長過程と支援のあり方 「守破離」をフレームワークとして

新入社員~若手社員、入社5年目までの成長を支援するためには、どのような考え方で取り組めばよいでしょうか。成長過程と支援のあり方を、日本の伝統における技能の修得過程を示した概念「守破離(しゅはり)」をフレームワークとして解説します。

INDEX

ほんとうの人材開発とは

変化の激しい時代、短期間で成果を獲得しようという風潮が社会全般で強まっています。その流れは、人材開発・教育の領域においても例外ではありません。オンライン上でいつでもどこでも気軽に学べるツール等が次々に開発され、教育関連企業各社が顧客獲得にしのぎを削っています。

しかし、簡単に入手した知識やスキルはなかなか定着しません。上面のお勉強ではない、本当に身につく学び、思考と行動の質を高める真の能力開発とは、どのようなものなのでしょうか。

日本の伝統における技能伝承

茶道や武道など、日本の伝統における技能の修得過程を示した概念に「守破離(しゅはり)」があります。

初心者が技能を修得する最初のプロセスは、型を徹底的に「守る」ところから始まる。師匠から教わった型を反復して練習し、コツをつかめるようになるまで、何度も何度も同じ所作を繰り返す。

師匠の教えに従って修業を積み、型を身につけた者は、自分に合ったより良い新しい型を模索し、既存の型を「破る」ことが許される。

さらに修業を重ねると、型と自分が一体化してくるので型を意識しなくても匠の技を実践できるようになる。つまり、最初に教わった型と、後に自分が確立した型の両方から「離れ」、自在となることができる。

このように、日本の伝統における技能伝承・人材育成の特徴は形(型)から入ることです。しかし、形の修得だけで修業の目的が達成されるわけではありません。
「伝統とは形を継承することを言わず、その魂をその精神を継承すること(※1)」ということばに示されているように、形に込められた精神を理解することが、守破離のプロセスに則った修業の究極の目的なのです。

企業人の成長過程と支援のあり方

「守破離」という考え方は、企業における人材育成にも当てはまる便利なフレームワークです。このフレームを使って、新入社員~若手社員の育成を考えてみましょう。

守(入社後6カ月~1年程度の期間)

新入社員には、社会人に求められる考え方や振る舞い、ビジネスマナー、仕事の進め方の基本、等々の型を教え、毎日反復的に練習をさせることが重要です。日々の練習の状況や変化を記録させ、それを上司(先輩、指導員)と共有して、今後の課題の見える化を図ることが必要になります。そのために、業務日誌の作成・提出や、日々の細かな報連相が欠かせません。また指導者の傾聴や承認が、新入社員の不安な気持ちを軽減し、やる気を上げることにつながることは言うまでもありません。

 

破(入社2年目前後の時期)

ある程度、型が身についてきたら、次のステップは、自分の担当業務を分析して、改善・改良できるように導くことです。上司(先輩)は、指示命令の量を徐々に減らし、質問を多用することで、相手の問題意識を高めます。
「どうすれば受注率が高まる?」
「残業を0にするためにはどうしたらいい?」
効果的な質問によって相手が深く考えることで、問題発見・解決力が磨かれるでしょう。隔週で実施する1on1面談はこの時期の社員には特に効果的です。

離(入社3年~5年目前後の時期)

この時期になると、仕事上で得た知識や経験もかなり蓄積されていますので、それらを参照しながら新しい知見を創造するよう導くことが指導者の役割です。
そのためには、常にストレッチ目標を提示しつつ、その達成の方法を自分で考え実行させることです。「任せて任せず」(松下幸之助)ということばにあるように、基本は任せながらも、報連相を通じた適時適切な指導や助言は必要です。
また、自律的な行動が求められるこの時期の社員には、フィードバックを通じて、軌道修正の気づきを提供することが大切です。それが今後の成長に大きな影響を与えるでしょう。

基本は反復と振り返り、持論化

ここまで述べてきた通り、企業における人材開発には練られたストーリーと相応の時間が必要になります。そして、人材開発の基本は、型を反復して練習し、都度その状況を振り返りながら、持論を生み出していくということに尽きます。

日本の伝統の技能継承において、師匠と弟子の関係があるように、企業における人材開発にも指導者の存在は欠かせません。よき指導者が数多く存在する企業では、若い人材が育ち、その人たちが職場の活性化やイノベーションの推進の担い手となって、企業の成長を牽引しています。
部下・後輩を指導する立場の現場リーダーの方には、「伴走者」として若手社員の成長を支援する役割を担っていただきたいと思います。

※1 柔道の創始者・嘉納治五郎(かのう・じごろう)のことば

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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