新入社員の育て方~成長度合いに応じた指導法とは
2023年3月13日更新
新入社員は、指導の仕方如何で成長に大きな差が出てきます。そこで本稿では、新入社員を指導する際の留意点について考察したいと思います。
新入社員を指導する際の留意点
人を育てる上で、「相手に成長してほしい」という愛情をもって接することは、指導対象がどの階層の社員であれ、共通して求められる大前提です。
ただ、具体的な指導方法については、対象が新入社員の場合、留意しておきたいポイントがあります。それは、新入社員は他の階層に比べて日々の変化の度合いが大きいということです。つまり、仕事をする上での意識と行動が日々、刻々と変わっていくので、入社直後の状態と1カ月後の状態が大きく異なるのです。
したがって、指導者は常に相手をよく観察して、「今の状態」を正確に把握しておく必要があります。
マチュリティ・レベルで成長の状態を把握する
相手の成長度合いに合わせた指導を考える際、「マチュリティ」という概念を援用すると、具体的な実践方法に関するヒントが得られます。マチュリティ・レベルという尺度では、相手の成長の状態(成熟度合い)を5段階に分類していますので、まずはそれを使って正しい現状把握を行います。
マチュリティ・レベル
1:仕事をこなす能力・意欲両面に問題がある
2:目標・プランがきちんと立てられない
3:指示されたことはできるが、自分で考え、行動することには問題がある
4:与えられた仕事の達成方法や手段を、自分で考えることができる
5:意欲も能力も高く、一人で仕事ができる
マチュリティ・レベルに合わせた指導法
相手のマチュリティ・レベルを把握できたら、それに合わせた指導を行います。それぞれのレベルに応じた指導法は以下の通りです。
それぞれのマチュリティ・レベルの相手に対する指導法
レベル1:教示的指導
・5W1H(2H)を念頭において、こと細かに教える
・やらなければどうなるかを教える
・担当業務は、許容範囲を考慮して与え過ぎない
・進歩が少しでも見えたら、大いにほめる
レベル2:説得的指導
・「なぜ」を説明し、疑問点を質問するよう促す
・仕事の進め方を一緒に考える
・成果につながる仕事の進め方(How)を教える
・少しでも改善・向上が図られたら、大いに励ます
レベル3:相談的指導
・積極的に相談にのる
・双方向のコミュニケーションを重視する
・先を読んで次のステップを決めるような習慣をつけさせる
・意思決定を一緒に行う
レベル4:参画的指導
・相手の自立(自律)を奨励する
・意思決定や仕事の進め方を任せ、意欲を高める
・何でも相談にのれるような雰囲気をつくっておく
・仕事の実情を十分に把握しておく
レベル5:委譲的指導
・できるだけ任せ、見守る
・相手主導のコミュニケーションを奨励する
・ゆるやかに監督する
・大きな夢や目標を持たせる
個々のレベルに応じた指導のポイントを具体的に述べてきましたが、ポイントは、相手の成長に合わせて「ティーチング・モード」(与える指導)から「コーチング・モード」(引き出す指導)へと指導スタイルを変えていくことです。相手とともに指導する側も変化していくことが大切なのです。
参考記事:ティーチングからコーチングへ~若手社員の「自ら変わる」力を引き出す教育を│PHP人材開発
Z世代の新入社員。知らないことは教える
Z世代と言われる最近の新入社員に関しては、ネットリテラシーの高さや、価値観の多様化等、長所・短所の両面からその特徴が指摘されます。時には、大人としてわきまえるべき基本や、社会生活を営む上で求められる常識が実践できておらず、上司や先輩をイライラさせることがあるかもしれません。
しかし、こうした「当たり前」が身についていない理由として、これまで学校や家庭で教えてもらえなかったという事情が多分にあるようです。
したがって、新入社員に「知らないこと、理解していないこと」をきちんと教えつつ、個々の長所を伸ばしてマチュリティ・レベルを上げる、そのような指導を上司、先輩、指導員の方には実践していただきたいと思います。
参考記事:コミュニケーションがうまく取れない新入社員を、どう指導する?│PHP人材開発
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。