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執行役員とは? 取締役との違いや設置の際の注意点をわかりやすく解説

2022年8月17日更新

執行役員とは? 取締役との違いや設置の際の注意点をわかりやすく解説

現場のリーダー的な役割を担う執行役員を設置する企業が増えています。今回は、執行役員を設置するメリットや取締役との違い、導入する際の注意点、そして契約形態や勤怠管理といった事前確認事項について解説します。

INDEX

リーダー的な役割を担う執行役員とは

執行役員には、取締役や監査役など会社法上の役員が下した決定を現場に伝え、現場の従業員を統率して事業を遂行する役割があります。1997年にソニー株式会社が執行役員制度を導入したことをきっかけに日本でも広まりました。

執行役員制度が導入されたのは、取締役は現場で社員を指揮するだけの時間的な余裕がないためです。取締役は会社経営を円滑に進めるため、一般社員が代行できない経営に関わる重要事項に集中しなければいけません。
そこで、業務を分散させるために執行役員が設置されました。企業経営に関わる役員と、事業を遂行する執行役員とで業務を明確に分けることで、負荷の分散が可能になったのです。

執行役員と取締役の違いは?

執行役員と取締役には大きな違いがあります。まず、取締役は会社と委任関係にあるのに対し、執行役員の多くは従業員に属する役職です。取締役とは異なり、執行役員には会社経営に関する重要事項の決定権を与えられているわけではありません。
また、株式会社の場合、取締役を最低1名以上任命することが必要です。取締役会を設置している場合は、最低3人の取締役を置くという決まりがあります。一方、執行役員は会社法によって規定された機関ではなく、設置は任意となっています。

参考記事:PHP人材開発「取締役とは? 仕事内容や責任範囲、必要な能力を解説」

執行役員を設置する4つのメリット

執行役員を設置する4つのメリット

執行役員を設置するメリットには、次のようなものがあります。

●取締役との役割を分けられる
●経営人材を育成できる
●報酬はすべて経費扱いにできる
●役員と現場の従業員との仲介役ができる

実際に執行役員を導入した会社では、経営陣と従業員にそれぞれ良い効果が出ているといわれます。どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

1.取締役との役割を分けられる

執行役員を設置することで、取締役と役割分担ができるというメリットがあります。執行役員を置かない場合、取締役は、経営と現場指揮の2つの役割を担うことになります。
取締役が現場指揮に忙殺されると、本来注力すべき会社運営に関わる業務が疎かになることもあるでしょう。執行役員を設置すれば、取締役は現場指揮を担う必要がなく、ステークホルダーへの対応を含めた経営に関わる業務に注力できます。

2.経営人材を育成できる

執行役員は、現場のトップとして事業経営を担うことになりますが、こうした経験は貴重です。執行役員として業務を円滑に進めるには、役員と現場の声をそれぞれ聞きながら従業員を統括するマネジメント能力が必要です。
ここで培ったマネジメント能力が、取締役に就任したときにも活かせます。社内の優秀な人材を重要なポジションに置いて活躍の場を広げられるのは、執行役員を設置するメリットの一つです。

3.報酬はすべて経費扱いにできる

執行役員は従業員の立場(雇用契約)であることが多いため、給与はすべて経費扱いにできるメリットがあります。取締役の場合は会社と委任契約になるため、毎月支払う報酬を経費として計上できません。
高額な役員報酬を支払わなければいけない取締役が増えると、会社の資金を圧迫するおそれがあります。取締役の報酬を損金扱いにしたい場合は、給与を毎月同額にしたり、事前に税務署に届け出を提出したりしなければいけません。
執行役員であれば役職手当を経費に計上できるため、結果的に節税につながるメリットを得られます。

4.役員と現場の従業員との仲介役ができる

執行役員には、経営陣が下した決定を現場の従業員に伝える役割があります。経営に関する意思決定を担う経営陣と現場で働く従業員は、距離感が生まれることも多いものです。
経営陣から直接難題を押し付けられることで現場では反発が生まれることもありますが、現場をよく知る執行役員を介することで、経営陣の意思が現場に正しく届くことになるのです。
逆に、従業員にとっては、現場で指揮をとる執行役員には、意見を伝えやすいでしょう。執行役員を置くことで、現場の状況や意見が経営陣に届きやすくなるというメリットもあります。

執行役員を設置する際の3つの注意点

会社に執行役員を設置することで、先述のとおり、経営を担う取締役と負荷を分散できたり、経営人材を実践的に育成できたりするなど、多くのメリットがあります。しかし、執行役員を置くメリットを得るには、ケアしておくべき注意点がいくつかあります。順にご紹介します。

●組織が複雑化する
●現場の意見や状況が経営判断に活かされにくくなる
●役職が形骸化する

それぞれの注意点を確認していきましょう。

1.組織が複雑化する

執行役員は、会社法で定められている役職ではないため、会社ごとに設置規定やルールを決めることができます。そのため、企業によっては立ち位置が不明瞭になり、本部長や事業部長など現場を指揮する役職との違いがわかりにくくなったり、意思決定のプロセスが複雑化したりといった不利益が発生するおそれがあります。
さらに執行役員が複数いる場合は、執行役員同士の連携、役員との連携が必要になり、迅速な経営判断を阻害してしまいかねないということを考慮する必要があります。

2.現場の意見や状況が経営判断に活かされにくくなる

執行役員を設置することで、取締役が現場の業務から離れることになるため、従業員の意見や現場の状況を把握しづらくなり、取締役の意思決定が実務に即さないものになる可能性があります。
執行役員は経営陣と従業員との橋渡し役ではあるものの、あくまで取締役の意思決定に従う立場であるため、方向性を決めることはできません。この橋渡しの役割が機能しない場合、現場の状況に即した経営判断ができにくくなる可能性があるのです。

3.役職が形骸化する

執行役員には、経営陣の意思決定を従業員に伝え、現場を指揮する役割があります。しかし、取締役がそうした領域に踏み込んでくると、執行役員の存在意義が薄まることがあります。そうなると執行役員という役職自体が形骸化してしまうおそれがあります。

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執行役員を設置する際の5つの確認事項

執行役員を設置する際の5つの確認事項

会社で新たに執行役員を設置する際には、事前に確認しておくべき事項がいくつかあります。順にご紹介しましょう。

●契約形態
●勤怠管理
●任期や定年
●保険加入
●給与や退職金

1.契約形態

執行役員の契約形態には、雇用契約と委任契約があります。
雇用契約とは、従業員と同じく会社と雇用関係になる契約のことです。会社は執行役員を使役し、執行役員は会社の指示に従わなければいけません。基本的には、取締役の意思決定に従って執行役員としての職務を果たすことになります。
委任契約とは、執行役員としての職務を委任する契約を結ぶものです。雇用関係とは異なり、委任契約では会社と対等な立場になるため、経営陣との上下関係を気にせず業務を執行できます。社内からではなく、外部から執行役員を選任する場合には、委任契約を結ぶのが一般的です。

2.勤怠管理

従業員のなかから執行役員を任命するとしても、外部から優秀な人材を選任するとしても、会社では特別な立ち位置になります。従業員とは別に就業条件や規則を明記した執行役員規程を作成するのが一般的です。
執行役員規程は労働基準法や各企業の就業規則に基づいて作成しますが、執行役員の働きやすさにも影響するため、待遇や条件をどのように設けるのかを検討する必要があります。

3.任期や定年

執行役員の任期や定年は、雇用形態によって異なります。
委任契約で選任された場合は、会社ごとに任期を設定していることが多いようです。また「執行役員規程」で定めた内容を判断基準として、取締役会で適任ではないと判断された場合などは、契約解除されることがあります。
一方、雇用契約で執行役員として働く場合には、執行役員の役職を解任されたとしても、その後、従業員として定年まで勤めることが多いようです。

4.保険加入

執行役員を設置する際、必ず確認しておくべきなのは、保険です。執行役員の契約形態には委任契約と雇用契約がありますが、どのような雇用契約を結ぶかによって保険適用対象が異なります。
雇用契約において執行役員に任命された場合は、従業員と同じ扱いです。雇用保険や労災保険が適用されます。
一方、委任契約の場合は、保険適用対象外になるため、注意する必要があります。

5.給与や退職金

執行役員は、大きな責任を負いながら従業員の先頭に立つ役職であり、比較的高い給与が支払われる傾向にあります。
年収の相場は900万〜1,600万円で、一般職より大幅に上回るのが一般的です。しかしあくまで平均額であるため、上場企業であればさらに好待遇で働いているケースもあります。
退職金の扱いは、雇用契約の場合は退職金制度が適用されるのが一般的です。
一方、執行役員を会社役員として扱う場合は、委任契約になるため、昇進時に会社を退職する形がとられます。委任契約の場合は、基本的に退職金は支払われません。

まとめ

取締役とは別に、現場で事業を取り仕切るリーダー的な役割を担う執行役員を導入する企業が増えています。執行役員は会社法などで設置が義務付けられているわけではなく、就任する人数等についても会社独自に決めることが多いようです。また、執行役員を置かない企業もあります。
執行役員を導入することによって、取締役が経営に専念できるようになったり、報酬を経費扱いにできたり、経営人材を育成できたりなど多くのメリットが得られます。
しかし、組織が複雑化したり、意思決定が遅くなったり、立ち位置が不明瞭になったりなど、導入時に注意すべき点があることも事実です。新たに執行役員を設置する場合は、こうした注意点を踏まえて慎重に準備を整えることが必要です。

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