失敗したときに出る真価~松下幸之助「人を育てる心得」
2017年6月22日更新
人間は、ときに思いもよらない過ちをし、失敗をするものです。会社で仕事をしていても、思わぬときに「しまった!」ということで頭をかかえこむことが生じてきます。
もちろん過ちや失敗は、初めからないにこしたことはありませんし、だれも失敗をしようと思ってやる人はありません。しかし、そこは完全無欠は望むべくもない人間のことですから、そういうことがときに起こるのも、一面やむを得ないといえましょう。
ただ、大切なのは、過ちをおかしたときに、これにどのように対処するかということだと思います。この処し方いかんによって、人間としてのほんとうの値うちが決まるといっても決して過言ではないと思うのです。
それでは、どうするのがいいのか。いちばんいいのは、やはり素直に自分の非を認め、すぐにこれを改めるということです。きわめて平凡なことながら、これよりほかに最善の道はないと思います。
よく失敗をした人の中には、「今さら後戻りもできない。それに自分のメンツもある」ということで、そのまま無理やり突き進み、失敗の上にさらに失敗を重ねるという人がいます。これは私は、最も危険なことだと思います。過ちをおかすことよりも、むしろこのことのほうがよほど恐ろしいといえましょう。
お互いに神様ではないのですから、長い一生のうちには、いろいろと過ちをおかすことがあると思います。そのときには、素直に改めるべきを改める。それは、上に立つ人ほどよけいそう心がけなければなりません。とかく上に立つ人は、その立場上、過ちと分かっていながらも、なんとか自分の失敗を隠そうという気になりがちです。その結果、かえって失敗の上塗りとなって、自分も困り、会社や周囲の人にもたいへんな損害を与えることがあります。
この点をお互いに十分戒めあいたいものですが、それと同時に、過ちをおかした人に対しては、これをあたたかく許すという寛容の気持ちをもつようにも心がけたいものだと思います。
【出典】 PHPビジネス新書『人生心得帖/社員心得帖』(松下幸之助著)