やらされ感のないマネジメント 成功のための5つのポイントを紹介
2024年10月 1日更新
人は本来、自分の意志で行動をするときに、もっともやりがいや生産性が上がります。ところが、現実の企業の現場ではその逆の状態が常態化しているようです。どうすれば「やらされ感」を排除することができるのか、マネジメントの観点からその成功ポイントを考察いたします。
生産性の低さの要因
国際的に見て、わが国の産業界の生産性が低いという指摘がなされて久しくなります。生産性が高まらない理由にはいくつかの要因が考えられますが、最大の要因は現場のモチベーションの低さにあると考えられます。そして、モチベーションが低い要因は、指示・命令を受けて他動的に仕事をしている人が多いこと、つまり多くの人が「やらされ感」で仕事をしていることに起因しているようです。
やらされ感のないマネジメント 5つのポイント
やらされ感が、モチベーション低下、生産性低下の一因であるとするなら、どうすれば、やらされ感を排除することができるでしょうか。
やらされ感のないマネジメントは、従業員が自発的に仕事に取り組む環境を作り出すことを目指します。このアプローチは、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の生産性向上につながります。
1.心理的オーナーシップ
まず、やらされ感を解消するためには、心理的オーナーシップを育むことが重要です。これは、従業員が自分の仕事に対して責任感や愛着を持つことを意味します。リーダーは、従業員に対してその仕事の意義や目的を明確に伝え、自分の役割が組織全体にどのように貢献するかを理解させる必要があります。これにより、従業員は「やらされている」という感覚から解放され、自分自身の意思で行動するようになります。
2.ジョブクラフティング
次に、ジョブクラフティングという手法が有効です。これは、従業員が自らの仕事を再構築し、自分にとって意味のあるものにするプロセスです。具体的には、タスクの内容を工夫したり、人間関係を見直したりすることで、自分自身の仕事への関与度を高めます。このような取り組みは、従業員が仕事に対してより深い満足感を得る手助けとなります。
参考記事:ジョブクラフティングとは? 期待できる効果や実践方法を解説│PHP人材開発
3.健全な危機意識
また、健全な危機意識を持たせることも重要です。危機感は、従業員が主体的に考え行動する原動力となります。マネジメントは、従業員が挑戦的な目標に向かって取り組むよう促し、その過程で得られる学びや成長を強調することが求められます。
4.マネジメントスタイルの見直し
さらに、マネジメントスタイルも見直す必要があります。上意下達の指示命令型から脱却し、従業員とのコミュニケーションを重視したスタイルへと移行することで、信頼関係を築きます。これにより、従業員は自分の意見やアイデアが尊重されていると感じるようになり、自発的な行動が促進されます。
5.フィードバックと評価
最後に、日常的なフィードバックと評価も欠かせません。定期的なフィードバックは、従業員が自分の進捗や成果を確認できる機会となり、その結果としてさらなるモチベーション向上につながります。これらの要素を組み合わせることで、やらされ感のない職場環境を実現し、高いエンゲージメントと生産性を維持することが可能になります。
人が活きるマネジメントを
人は本来、自分の意志で行動したいという欲求をもっていますし、そういう状況に置かれたとき、もっともモチベーションが上がり、創造性も発揮されるのです。生成AIなどが注目を浴びる昨今、あらためて人はどういう存在なのか、人間に対する探求と理解が企業経営にはこれまで以上に求められているように思います。
人間の本質に立脚し、人が活かされるようなマネジメントを試行し、実践を続ける組織が変化の激しい時代を生き延びていくでしょう。
参考記事:『やらされ感』では成長しない。研修を成功させるポイントとは?│PHP人材開発
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。