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コーチング、1on1、フィードバック――人材育成スキルの関係性

2021年5月24日更新

コーチング、1on1、フィードバック――人材育成スキルの関係性

人材育成のスキルにはいくつかの種類がありますが、代表的なものは、コーチング、1on1、フィードバックの3つでしょう。本稿では、各スキルの関係性や活用方法を明らかにすると同時に、研修のあり方についても考察したいと思います。

INDEX

コーチングの目的

今や、多くの企業で人材育成スキルの習得を目的とした研修が花盛りです。しかし、それを学んだ現場のマネジャーの方がたが、実際の部下指導で的確に使いこなしているケースは少ないようです。その理由は、各スキルの特徴や活用する目的の違いが理解されていないことに起因すると思われます。

PHPゼミナールでは、コーチングの定義を「相手の自主的な前進をサポートする指導スキル」としています。かつてのように右肩上がりの成長を続けていた経済環境のもとでは、会社や上司から出される指示・命令に素直に従って仕事をしていれば成果が上がりました。しかし、昨今のように経済成長が鈍化し、かつ変化が激しい状況下では、指示命令型のマネジメントは機能しません。一人ひとりが目の前の状況をよく見ながら、今何をすべきか、自主的に考え前進する組織でないと生き残ることは難しいです。そういう個人や組織をつくるのがコーチングの目的なのです。

その目的に近づくために、コーチ(上司・先輩・指導員等)は、相手の可能性を信じたうえで、3つの基本スキル(傾聴・承認・質問)を駆使しながら、気づきややる気を引き出していきます。でも、そのスキルは奥が深いので、正しく理解し使いこなせる状態になるためには、継続的な学習と実践が欠かせません。

1on1成功のポイントとは?

1on1成功のポイント

昨今、大企業を中心に導入が進んでいるのが1on1です。
テレワークの普及に伴い、かつてのように、上司-部下が同じ時間と空間を共有し、「俺の背中を見ろ」式で指導育成が成り立つ時代は終わりました。各種調査・指標によると、テレワーク下において仕事上の不安や悩みを抱えている若手社員が増えていることが明らかにされています。しかし、こうした不安や悩みの多くは、上司とのコミュニケーション(対話)の改善で解決できることが多いものです。昨今、1on1を導入する企業が増えてきたのも、そういう背景が一つの要因になっていると思われます。

1on1にはさまざまな定義がありますが、PHPゼミナールでは「部下の行動の振り返りを、上司と部下がペアで行い、お互いの成長につなげる人材育成の手法」と定義づけています。
この定義が示しているように、1on1の目的は部下の成長支援であり、そのための手段として面談を繰り返していくのです。

「1on1」を成功させるためには、面談だけを重視するのではなく、「事前準備」「事後フォロー」も含めてセットで取り組む必要があります。また、「1on1」を実施する側の上司のハードルを下げてあげることも重要です。
現場で実務を担う上司の方がたは、プロのコーチング技術をもっているわけではありません。その人たちに、高度な指導スキルを学ばせたり、それを部下指導に活かしたりすることを求めることは現実的ではないでしょう。「ただ、相手の話を聴ききる、それだけでいい」と伝えることで、上司の心理的負担感はかなり軽減します。スキルが未熟であったとしても、とにかく対話の量を増やしていくことが重要です。「量質転化」ということばがあるように、一定量を越えると必ず質の変化が起きるものです。

今なぜ、フィードバックなのか

3つめのスキルがフィードバックです。フィードバックは「耳の痛いことを部下にしっかり伝え、彼らの成長を立て直す手法」と定義されているように、ネガティブな内容を扱うことが多くなるのが特徴です。人が成長するためには、心地よい経験ばかりではなく、痛みを伴う経験も必要です。最近の若い世代の中には、「耳の痛い」指摘を受けることが、自身の成長につながるという考え方をもつ人が増えてきました。しかしながら、彼らを育成する立場にある上司の側に、遠慮があったり、耳の痛いことを伝える勇気がないため、部下へのフィードバックが行われないケースが多いのです。成長願望が強い前向きな若手ほど、フィードバックをもらえないと不満を感じ、それが高じると離職につながります。
多様な価値観や属性(性別、国籍、雇用条件等)もった人材を束ね、チームを運営していく上で必須のスキルがフィードバックなのです。

フィードバックで部下の納得感を高めるには?

フィードバックには5つのステップ(①信頼感確保 ②事実通知 ③腹落とし対話 ④振り返り支援 ⑤期待通知)(※)がありますが、中でも重要なのが「事実通知」と「腹落とし対話」です。

フィードバック

事実通知とは、自分がつかんだ情報を、主観を交えず、鏡のように客観的に事実を伝えることです。

例:「先ほどのオンライン営業会議で一言も発言しなかったね。そんな君の姿勢は、周囲の人たちから『消極的だ』という印象で見られているよ」

事実を「伝える」行為をしたからといって、即座に相手に「伝わる」ものではありません。たとえ、ことばに出さなくても、必ず異論・反論が相手の内側に生じるものです。だから、伝えた後、相手の反応を見ながら対話を重ねて納得感を高めていく「腹落とし対話」が欠かせません。ここでも、議論に打ち勝つことを目指すのではなく、相手の言い分を聴ききることが大切です。聴ききってもらったという感覚を相手が感じられれば、意外と納得感が高まり、「確かに上司の言い分にも一理あるな。自分にも反省すべき点、改める点があるかもしれない」という気づきにつながり、腹落としが促進します。

コーチング、1on1、フィードバック 3つのスキルの関係性

ここまで3つのスキルについて、それぞれの定義や目的を述べてきましたが、それらはどのような関係にあるのでしょうか。下記のイラストは、3つのスキルの関係性を表現した図です。

人材育成の3つのスキル

コーチングは既述の通り、広い概念と奥の深い手法で構成されたスキルなので大きな円で描いています。
一方、1on1は、コーチング・スキルの一部を使って実施する面談であり、「プチコーチング」という表現が適切かもしれません。したがって、繰り返しになりますが、1on1を実施する現場のマネジャーにはあまり高度なスキルの発揮を求めるべきではありません。「部下の話を最後まで聴きとること、まずはそこからやりましょう」というように、実施のハードルを下げてあげること、それが1on1を成功させるポイントです。

そして1on1を継続的に実施している過程で、さまざまな情報が収集・蓄積されていきます。その情報をベースにしながら部下に対して耳の痛い指摘をするのがフィードバックです。従って、フィードバックが成り立つためには、継続的な1on1が不可欠なのです。(制度としての1on1が会社に導入されていないとしても自分なりの1on1を実践すること)

3つのスキルの関係性を考慮した研修企画を

研修企画

以上が3つのスキルの関係性です。これらスキルの習得を目的とした研修を企画する際は、それぞれの特徴と関係性を考慮した研修デザインが必要です。

コーチング研修を企画する際は、単発で終わらせるのではなく座学と実践を数回繰り返すアクションラーニング型の構成が理想的です。1on1研修に関しては、高度なスキルの習得を志向するのではなく、ハードルを下げてあげること。そして、フィードバック研修に関しては、1on1の実践を前提とした内容に仕上げることが大切です。

本稿で取り上げた3つの人材育成スキルは、正しく理解し確実に実践されれば、人材開発・組織開発に大きな成果をもたらすことは多くの成功事例からも明らかです。だからこそ、それを学ぶ場の設計には、一工夫も二工夫も加えたいものです。

※引用:『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』(中原淳著・PHPビジネス新書)

中原淳監修フィードバック研修はこちら

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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