部下指導で使いたい! 目標達成力を高めるGROWモデルとSMARTモデル
2023年8月 7日更新
不確実な環境のもとでも目標を達成する力が、個人とチームに求められています。本稿では、部下の目標達成を支援するために、リーダーの方がたに知っておいていただきたい2つのフレームワークをご紹介します。
問題意識の高め方
問題意識の高低は、人の意識と行動に大きな影響を及ぼします。問題意識が高ければ、主体的に考え行動するようになりますが、問題意識が低ければ、行動を起こすための動機づけが充分に機能せず、活動が停滞するでしょう。言うまでもなく、人が成長し、仕事のパフォーマンスを上げるためには、問題意識を高める必要があります。
では、どうすれば問題意識を高めることができるでしょうか。やり方は極めてシンプルで、以下の2つの問いを投げかけ、相手から答えを引き出すのです。
●第1の問い
「どうしたい(どうなりたい)?」⇒ 相手からの回答
●第2の問い
「それに対して、現状はどうなっている?」⇒ 相手からの回答
このシンプルなやり取りを通じて、相手の頭の中で理想と現状のギャップが明確になり、そのギャップを何とかして埋めたいという意志が生まれます。
行動計画に落とし込む「GROWモデル」
理想と現状のギャップを見える化して問題意識を高めた後は、ギャップを埋めるための行動に落とし込む必要があります。その一連の思考・発想を整理するために考案されたのが「GROWモデル」です。
GROWとは、Goal(目標)、Reality(現状)、Resource(資源)、Options(選択肢)、Will(意志)の単語の頭文字をとったもので、この順番で問いかけたり、思考したり議論することで、目標達成や課題解決の道筋が明確になります。
問いかけ例
「3年後、どのよう専門性を身につけていたい?」(Goal)
「それに対して、現状はどのような状況なの?」(Reality)
「理想の状態に近づくためには何が必要かな?」(Resource)
「今、あげたこと以外にやるべきことはあるかな?」(Options)
「今、明確になった行動プランはいつからやる?」(Will)
計画の精度を上げる「SMARTモデル」
実行計画を立案する際、計画の精度を上げるために知っておきたい2つめのフレームワークが、「SMARTモデル」です。
SMARTとは、Specific(具体性がある計画か)、Measurable(実行度合いを測定できるか)、Attainable(達成の可能性があるか)、Relevant(目標達成と関連性のある計画になっているか)、Time-Phase(実行の期限が明らかになっているか)の各単語をつなげたものです。
GROWモデルで立案した実行計画を、SMARTモデルの5つの観点から内容を検討することで、計画の精度が上がり、目標達成力も高まるでしょう。
実行力と問題意識
ここまで、2つのモデルを使うことで、問題意識の向上と、目標達成までの道筋の明確化がやりやすくなることを述べてきました。
しかし、目標を達成する上でもっとも重要なのは実行力です。いかに精緻な行動計画を作ったとしても、それが実行されなければ成果が上がらないのは自明です。したがって、「やる」と決めた実行計画を確実にやり抜くことが不可欠ですが、そのためには最初に述べた問題意識の高さが重要になります。
つまり、GROWモデルのGoalとRealityをじっくり考え抜き、両者の間のギャップを正確にかつ真剣に見つめ、やる気に火をつけることが、実行力と目標達成力を高めるカギになるのです。
定期的に実施される1on1面談の場で、GROWモデルとSMARTモデルを上司が上手に使いこなすことで、部下の問題意識の向上、目標達成力の強化が図られるでしょう。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。