メンバーのやる気を引き出すには? タイプに応じた向き合い方を紹介
2023年6月12日更新
若い世代を中心に仕事や人生に対する価値観が多様化しています。価値観が異なると、当然相手に対するやる気の引き出し方が変わってきます。職場の価値観が多様化する中で、マネジャーはいかにしてメンバーの心に火をつけていけばいいのか、本稿ではその方法論を考察いたします。
一丸となれない、昨今のチーム
かつての日本企業の現場は「金太郎あめ」と揶揄されたように、社員の価値観や個性という観点から、同質性がその特徴と言われてきました。こうした状況でチーム一丸の状態になるのは難しいことではありませんでした。
しかし、「失われた30年」を経て社会情勢が大きく変化するうちに、若い世代を中心に人びとの価値観が多様化してきました。そうなると、マネジャーが方針を掲げ指示命令しても、即座にチームが一つになるというわけにはいかなくなりました。
このような変化を前提にしてチームを動かすためには、メンバーの価値観に合わせて、やる気の引き出し方を変えていく必要があるのです。
「心の火」のつきかた 4つのタイプ
やる気の源泉となる「心の火」のつきかたは人それぞれ異なりますが、大きく分けると以下の4種類にタイプ分けされます。
(1)自然発火タイプ――自分で心に火をつけることができる
自分なりの仕事や人生の目的・目標を設定し、セルフマネジメントができるタイプの人たち。
(2)キャンドル・サービスタイプ――他者から点火してもらえば心に火がつく
上司や先輩、周囲の人たちからの刺激を受けて心に火がつく人たち。組織の中で、もっとも多いタイプかもしれません。
(3)不燃物タイプ――何をしても、心に火がつかない人
周囲からの働きかけや、いろいろな体験を重ねても、火がつかないタイプ。昨今、このタイプの若手社員が増えていると言われています。
(4)消火剤タイプ――他者の心の火を消す
「そんなことやっても無駄だよ」と、チームの雰囲気に水を差すタイプの人たち。こうした人たちが増えると、組織が内側から崩壊していきます。
タイプに応じた向き合い方
それぞれのタイプに応じて向き合い方を変えないと、一人ひとりを効果的に動かすことはできません。では、タイプに応じて、現場のマネジャーはどのような対応をすればいいのでしょうか。
(1)自然発火タイプへの対応
主体的に行動して高いパフォーマンスを上げてくれるありがたい人たちですが、往々にして独断専行になりがちです。会社の方針や重視している価値観をしっかり理解させ、それに沿った活動をするよう促すと同時に、仕事は任せつつも、こまめに報告することを求めることが大事です。
(2)キャンドル・サービスタイプへの対応
仕事の意味を説明したり、相手に対する期待を伝えるなど、対話を密にすることで心に火をつけます。ただ、いったんついた火が消えることもあるので、対話を続けて灯った火を消さない努力が必要です。
(3)不燃物タイプへの対応
価値観の違いから、上司が良かれと思っている向き合い方が響いていないのかもしれません。また火がついていないように見えても、実は内側に火がついていることも往々にしてあります。したがって、このタイプに対しては、傾聴と承認を中心にした徹底した対話が欠かせません。
(4)消火剤タイプへの対応
人の行動には必ず何らかの意図があります。このタイプの人が、なぜ他者のやる気をそぐような言動をするのか、その意図をつかむ必要があります。本人は自分の行動の悪影響に気づいていない可能性があるので、客観的事実をフィードバックして気づかせることが重要です。
組織は人から成り、人は心をもっている
企業は組織での活動を通じて仕事上の成果を上げようとしています。そして「組織」は「人」で構成され、人は「心」によって動き方が決まります。つまり、社員一人ひとりの心の状態が、企業の業績を左右するのです。
したがって、組織を預かるマネジャーの方がたは、さまざまな部下への対応を試行しながら、そこで得た知見をもとに、「人はどういう時に心が動くのか」という自分なりの人間観をもった「人間通」になる必要があるでしょう。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。