ジョブ・アサインメントとは? 部下のやる気を引き出し、成長を後押しする仕事の任せ方
2023年2月24日更新
ジョブ・アサインメントとは、マネジャーや上司が、組織の業績目標を達成するために、部下に仕事を割り振ることです。
どんなに優れたマネジャーであっても、自分一人で仕事をこなすことはできません。また、部下が成長するためには、さまざまな仕事経験が必要です。したがって、マネジャーは部下に仕事を任せないといけませんが、ただ任せればいいというわけではありません。
なぜならば、任せ方の良し悪しが、仕事のパフォーマンスや部下の成長に大きく影響するからです。
そこで本稿では、部下のやる気を引き出し、確実に成果を上げ、結果として相手の成長につながるような、任せ方のコツをご紹介します。
孤軍奮闘するマネジャー
管理職を対象にした研修で受講者の発言に耳を傾けていると、任せることに苦手意識をもったマネジャーが多いことに気づきます。部下に仕事を任せられない理由として、「残業をさせられない」「短期的な成果を出さないといけない」「部下の能力が未熟」「自分でやったほうが早いし確実」といった事情があるようです。
任せない結果、多くの仕事をマネジャー自身が抱えて「孤軍奮闘」状態に陥る一方、部下は負荷がかからないので、やりがいを感じないし、成長することもできません。そうなると、ますます任せられなくなり、上司の疲弊、部下の停滞という悪循環に陥ることになるのです。
誤った任せ方 2つのパターン
もちろん、すべてのマネジャーが任せることを放棄しているわけではなく、意図的に任せるようにしている方もいるでしょう。ただ、「誤った任せ方」をしているケースが少なくないようです。
誤った任せ方としてありがちなのは、以下の2つのパターンです。
●任せっぱなし
「任せること」と「放任すること」はしばしば混同されがちです。任せた仕事の進捗状況を一切確認せず、結果報告だけを求めるというスタンスをとると、部下は孤独感・不安感を感じ、思い切ってチャレンジすることができなくなります。
●マイクロマネジメント
任せたにもかかわらず、微に入り細に入り仕事の進め方をチェックし、自分の思う通りのやり方を押し付けるのもよくあるパターンです。干渉し過ぎると、相手は「信用されていないな」と思うようになり、やりがいや責任感が低下して適当に仕事を流すようになってしまいます。
効果的なジョブ・アサインメントのコツ
ジョブ・アサインメントとは、「一人ひとりの部下に対する仕事の割り当て」のことを意味します。仕事の成果が上がり、取り組んだ個人の成長も図られるような、効果的なアサインのポイントは以下の3点です。
(1)意義の説明
任せる仕事の意義を説明し納得させることが重要です。この仕事が誰にどのような価値を提供することになるのか、腹落ちさせることで使命感・責任感が高まります。
「この仕事には、クライアント企業の組織活性化につながる重要な役割があるんだ」
(2)理由の説明
この仕事をなぜ任せるのか、その理由を伝えることも大切です。
「今回の仕事は、マーケティングの専門性を高めるいい機会なので、ぜひ君にお願いしたいんだ」
(3)勇気づけ、Let'sの精神
任された仕事に対して不安をもっている場合は、勇気づけや、伴走する姿勢を示すことで自信をもたせる必要があります。
「大丈夫、君ならできるよ」
「困ったことがあればいつでも相談にのるからやってみよう」
任せて任せず~松下幸之助のマネジメント
マネジメントは「他者を通じて成果を上げること」です。したがって、上手に仕事を任せることは、マネジメントの最重要課題であると言っても過言ではありません。
松下幸之助は、指導者に求められるのは「任せて任せず」の姿勢であると説きました。つまり、相手の主体性を引き出しつつ、決して放任しない、そのような「付かず離れず」の関わり方が人と組織を伸ばしていくのです。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。