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部下が、ついていきたくなるリーダーとは?~【対談】田口佳史・田村潤

2021年8月 2日更新

部下が、ついていきたくなるリーダーとは?~【対談】田口佳史・田村潤

「どうすれば部下がついてきてくれるのか」と悩むリーダーは少なくない。次々に出される上からの指示を伝えると、現場からは「こんなこと、できません」と声が上がり、板挟みに苦しむこともある。1996年、アサヒビールにトップシェアを奪われ、全国でも営業成績が最下位クラスになっていたキリンビール高知支店でも、現場に徒労感や挫折感が漂い始めていた。

そんななか支店長として赴任した田村潤氏は、営業一人ひとりの意識改革によって高知支店の営業成績をV字回復させている。2009年には全国の指揮を執って、キリンビールのシェア首位奪還を実現。著書『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社+α新書)は22万部を超える大ヒットとなった。

今回は、「PHP松下幸之助経営塾」 の特別講師として登壇されている田村潤氏と田口佳史氏(東洋思想研究家)の対談から、リーダーの役割や組織のあり方についての内容をご紹介する。

※本稿はPHP新書『人生に奇跡を起こす営業のやり方』(田口佳史/田村潤 著)を一部抜粋編集したものです。

部下がついてくるかどうかは何で決まるのか

田口 世の中には部下がついてきてくれないと悩むリーダーが多いですね。東洋思想に関心を持つビジネスマンのなかにも、東洋思想を通じて、リーダーのあり方を学ぼうとしている方々が多くいらっしゃいます。

では、どうすれば部下がついてきてくれるのか。単純に突きつめてしまえば、大きいのは「気が合うかどうか」です。「気が合う」というのは、文字どおり「気合い」が関係しています。人間関係に「気合い」が入らないとダメなのです。なぜなら、真剣勝負で対面しないと魂のふれあいにならないからです。おそらく、(田村氏が1995年に支店長として赴任し、営業成績をトップに押し上げた)高知支店は、支店長と社員に、同じ「気合い」が入っていた。

田村 「気合い」というのはおもしろいですね。高知支店で、なぜ「気合い」が入ったのかというと、視点がお客様に定まったからではないでしょうか。本社でなく、お客様に視点を置いた。そうすると、ブレなくなります。本社から何かいってきても、それを利用してお客様に喜んでもらおうと考える。

しかし、普通はブレるものです。リーダーの視点が上だけに向いていれば、上からいわれたことを、そのまま下に流してしまう。下のメンバーは解釈にバラつきがありますから、どんどんブレてくる。これでは、気の合わせようがありません。高知でも最初のころはそうでした。「気が合った」のは、全員の視点がお客様に向いたからだと思います。

田口 佐藤一斎は、人間がブレないで生きていくには「志」が重要だと何度もいっています。『言志四録』の第一巻『言志録』の三十三に、次の言葉があります。

「志有るの士は利刃の如し。百邪辟易す。志無きの人は鈍刀の如し。童蒙も侮翫(ぶかん)す」

「志」を胸に抱いている人は、切れのいい刃物のようなもので、あらゆる邪(よこしま)なものも恐れて逃げだす。一方、志がない人は、切れ味の悪い鈍った刀のようなもので、子供からも侮られる、という意味です。

「志」は切れのいい刃物だというのは、実にわかりやすいたとえですが、では、何を切るのか。それは、誘惑や妄想です。そういうものに侵されるからブレるので、「志」があると鋭い刃物が全部切ってくれる。「俺は、これ一途に生きていく。それ以外のものはいらない」と切っていくのです。

田村 「志有るの士は利刃の如し」というのは、とても勇気づけられる言葉ですね。明快な研ぎ澄まされた行動というものをイメージできます。

リーダーは、本社からの指示を「手段」として活用する

田村 普通の会社は、今年の利益計画をつくり、各組織の目標をつくり、さらに分解して実現するための施策を決め、各支店に指示を出す。本社からの指示を、達成すべき「目的」と支店は捉えます。

しかし高知支店の目的は、あくまで高知の人に喜んでもらうことですから、その目的のために、本社からの指示を「手段」として、使えるものは何でも使おうと考えました。

お客様の立場から見たら、「こんな指示はとんでもない」と思える指示が本社などから来たとする。その場合、無視せざるをえない。あくまでもお客様が大事なのですから。もちろん指示のなかには、ちょっと疑問だけれども、悪くはないかもしれない、という指示もけっこうある。指示にも、色々なランクがあります。

ですから、本社からの指示をランク分けして、メリハリをつける。だいたい二種類に分けていました。「徹底してやろう」というものと、「流しておこう」というもの。幸い、本社からの指示で、「無視する」というランクに入るようなものはめったになかったので、ほとんどは「徹底してやろう」と「流しておこう」の二つになりました。その判断はメンバーと相談したり、メンバーに任せたりしていました。

「流しておこう」というのは、「まあ、適当にやっておこう」ということです。もちろん、上には「ちゃんとやっている」という報告はしました。

現場のリーダーから、「本社の指示が多すぎる」と相談されることもありました。多すぎる指示をそのまま下に流すと、下はやる気にならず、「こんなこと、できません」と声が上がる。あるいは沈黙の不服従となる。現場のリーダーが板挟みになってしまうのです。

田口 松下幸之助さんの有名な逸話があります。あるとき、幸之助さんが突然、「いま事業部や営業所からとっている報告書、あるいは本社から出している定期的な通達を全部持ってきてほしい」と指示した。それでみんな持ってくるわけですが、幸之助さんはそれらを会議用の机の上に積み上げて放っておいて、自分で見ているふうでもない。まだコピーが普及していない時代ですから、書類は社内にそれしかありません。「そろそろ書類を返していただかないと、仕事にならないので困ります」といってきた人には、「そうか。持っていきなさい」と中身を見ることもなく返した。そうして二十日たったところで、「この書類は、今日かぎり廃止や。二十日間も見ないですむ書類を、なんで集めたり出したりしているのか」とおっしゃった。まさに「仕事のための仕事」になってしまっているものを、誰の目にも見える形で、ドラスティックに切り捨てたのです。

田村 幸之助さんのおられるときでもそうなら、普通の会社はそうなるということですね。会社のなかには、意味もなく出している指示や、集めている報告が多すぎて、ご指摘のように、それが「仕事のための仕事」になってしまっている。「顧客にとって、いいことかどうか」で判断して、不要なものは廃止しました。迷ったときはいったん廃止して、必要があれば復活するとしました。

近年、特に本社ではホールディング制をはじめ組織を増やす傾向にあり、間接部門が多すぎる弊害が大きくなっています。間接部門を減らし、その分、値段を安くすれば、お客様は喜んでくださるのではないか。お客様を中心に考えたら、間接部門を減らす行動力だって出てくるのです。

要は、リーダーの自立の話なのです。「上がこういっているからやれ」では部下は納得しない。けれども「上はこういってきているが、お客様のことを考えて、これはそこそこにしておこう。そのかわり、ここに集中しよう。本社の方針のここが問題だと思うから、このような提案をするつもりだ」といえば、このリーダーについていこうという部下が出てきます。

出典:PHP新書『人生に奇跡を起こす営業のやり方』(田口佳史/田村潤 著)

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