リーダーはチームの存在理由を明確にできているか~目標と目的の違いとは?
2018年12月19日更新
成長を続けるチームのリーダーは、「目標」と「目的」の意味と違いを明確に認識し、メンバーと共有しています。「成長し続けるチームが共有している6つの項目」から、チームビルディングの秘訣を学びます。
前回は、「チームが成長を続けるために、リーダーが果たすべき3つの役割」というテーマで、成長し続けるチームの「感動・感激の共有」について解説を行いました。今回は、【成長し続けるチームが共有している6つの項目】である、「目標・目的の共有」について紹介します。
【成長し続けるチームが共有している6つの項目】
1.逆境
2.感謝・愛
3.感動・感激
4.目標・目的
5.達成感・追求感
6.互恵学習
4.目標・目的の共有
成長を続けるチームでは、目標と目的、この2つの言葉の意味と違いがしっかりと明確になっており、その内容もしっかりと共有されています。筆者は研修会や講話に登壇するとき、よく参加者の皆さんに「目標と目的の違いを明確に理解できている方は手を挙げてください」と、質問をします。すると、会場の中で自信を持って挙手をされるのはおおむね3割程度です。
目標と目的というこのよく似た2つの言葉は、「チームビルディング」にも「リーダーシップ」にも「組織と人の成長」にも、そして「チームの成果」にも重要な役割を持った言葉です。しかし多くの人はその意味や役割の違いといったものが曖昧になっており、その本質を理解していないままになっています。
目標と目的の違いとは?
では、目標と目的の違いとは何か。目的とは簡単に言うと「何のために」物事を行うのかという、意味や理由や動機を表す言葉です。それに対して目標とは、物事を「いつまでに、何を、どこまで(または、どれくらい)」行うのかという、その取り組みそのを指す言葉なのです。
たとえば、「今日中にリンゴを10個売る」というのは目標です。いつまでに、何を、どれくらい行うのかの視点だからです。では目的は?
目的はリンゴを売る理由です。もしかすると「家族を養うため」という理由かもしれませんし「自分のつくった自慢のリンゴを多くの人に知ってもらいたい」という理由かもしれませんし、「このおいしいリンゴを通じて、たくさんの人に笑顔を届けたい」という理由かもしれません。
顧客満足度No.1で人が育つ組織としても有名なトヨタの自動車ディーラー、ネッツトヨタ南国の取締役相談役である横田英毅さんは目標と目的の違いについて、次のような言葉を残しておられます。
目標は見えやすく、目的は見えにくい
目標は物質的で、目的は精神的
目標は達成するもので、目的は追求し続けるもの
この、横田さんの言葉は、目標と目的の本質を分かりやすく表現した大変素晴らしい言葉で、ぜひとも憶えておきたい名言です。ビジネスの古い格言にも「目標は、目的追求の手段なり」という言葉がありますが、つまり目標とは目的追求を可視化するためにあるものだということです。
サン=テグジュペリの言葉に学ぶ、チームビルディングの秘訣
結婚披露宴のスピーチなどでよく紹介される名言のひとつに、『星の王子様』の著者で有名なアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「幸せの秘訣はお互いを見つめることではなく、二人が同じ星を見つめることである」という言葉があります。
なぜ筆者が今、この言葉を紹介しているのかというと、それはこの言葉が夫婦の幸せだけに当てはまる言葉ではない、「成長し続けるチーム」にとっても重要な、まさに本質をついた言葉であると感じているからです。
上記のサン=テグジュペリの言葉を「幸せ⇒チームの成長」「二人⇒チームの仲間」と置き換えてみると、よくわかります。そしてこの言葉にある「星」とは、追求し続ける「目的」そのものと言えるのでないでしょうか。
多くのチームでは、目標設定や目標達成に多くの時間を費やす一方で、目的の部分をしっかりとチームメンバー同士で共有し理解するために必要な手間暇をかけていません。しかし目標に深い意味づけを行うのは目的です。
目標の適否は、目的に照らしてこそ判断できます。自分たちが何を追求し、どこに向かっているのかも分からないまま、目先の目標だけを達成するというのは、チームのメンバーにとっては、自分にとってはあまり「意義を感じられない作業」をやらされているのとさほど大差がありません。
成長し続けるチームのリーダーは、そのことをよく理解しているため、チームの動きを「目的を追求する、その道すがらを可視化するために目標を達成する」という手順を踏み外すことがありません。
目標と目的の違いを理解すると、チームが成長する理由
では、なぜ目標と目的の違いを理解すると、チームが成長するのでしょうか。そこには2つのポイントがります。1つ目のポイントは、目標と目的の違いを明確に理解できるようになるとチームメンバー一人ひとりに「自分なりの働く動機」が生まれるからです。自分が何のために働くのか、その意味が理解共感できるため、主体的に自分のたちの仕事に幹会えるようになります。そして2つ目のポイントは、「自分で考え、工夫できるようになる」ということです。
メンバー同士が自分の仕事の意味を考えるようになると、自分なりに行動するようになります。そこには「自分で考え、工夫する」という、主体的な動きがあるのです。この、自分で考え工夫するという行動は人の成長にも、チームの成長にも大きなプラスの影響をもたらしてくれるのです。
チームの目的とは、自分たちのチームの存在理由
最後に、チームメンバーが共有する目的とはいったい何でしょうか。それはチームの存在理由です。何のために自分たちのチームが編成されているのか。成長し続けるチームのリーダーは、そのチームの存在理由をメンバー全員にしっかりと共有しています。自分の言葉で語ることもしますが、何よりもメンバーの皆に考えてもらうことをしています。
チームは会社組織の一部です。会社の存在理由はその組織の理念にありますが、成長し続けるチームのリーダーは自分たちのチームの存在理由を会社の経営理念で済ませるのではなく、会社の理念をベースとしたうえでしっかりとチーム理念をつくり上げ、メンバーに共有しているのです。
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延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。