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フィードバックを進んで受ける部下は、なぜ成長するのか?

2020年2月10日更新

フィードバックを進んで受ける部下は、なぜ成長するのか?

自分から進んで上司や周囲の人にフィードバックを求める部下は、「できるビジネスパーソン」へと成長していきます。その理由とは?

INDEX

部下にも求められる「フィードバック」の理解

新しい人材育成手法である「フィードバック」に注目が集まり、管理職を対象にしたフィードバック研修を社内で実施する企業が増えてきました。
通常のフィードバック研修は、上司の視点に立ってフィードバックの考え方とスキルを学び、部下に対して耳の痛いことを伝えるようになるのがねらいです。しかし、部下の側も、フィードバックの意義を理解したうえで、それを正面から受け止める姿勢をつくっておかないと、フィードバックはうまくいきません。
そこで本稿では、PHP研究所で現在開発中の「フィードバック研修(部下編)」(仮称)のコンテンツである、「(部下が)フィードバックを受ける意義」についてご紹介いたします。

仕事ができる人は自己認知力が高い

昨今の欧米の人的資源管理の研究分野で、リーダーシップ開発に関するさまざまな議論が展開されています。また、ジャック・ウェルチや松下幸之助など、経営の実務家たちによって構築されたリーダーシップの持論が、彼らの著作などで紹介されています。このようにリーダーシップに関して、さまざまな知見や主張がありますが、いずれにも共通しているのが、自己認知(Self-Awareness)の重要性を指摘している点です。
自己認知とは、自己の性格、長所・短所、欲求、役割について深く理解すること、つまり自分を正しく知るということです。
自己認知の重要性に関しては、いくつかの実証研究があります。例えば、コーネル大学のD.ダニングとJ.クルーガーは、「能力の低い人物が自らを高く評価してしまうような認知バイアスが存在する」と主張しました。(※1) 一方、「成果を上げる人ほど、自己認知能力が高い」という研究成果(※2)も発表されています。
これらの研究成果から言えることは、「仕事ができる人」になりたいなら、自己認知をしっかりしなければならないということでしょうか。

※1 ダニング・クルーガー効果
※2 Church AH (1997)  Managerial self-awareness in high-performing individuals in organizations.

なぜ自己認知が大切なのか?

ではなぜ、自己認知が大切なのでしょうか。現代のような、目の前の状況が刻々と変わっていく環境下では、受け身の姿勢で変化に対処してしまいがちです。しかし、受け身の姿勢からは、喜びや楽しさは生まれず、徒労感が高まる一方です。
そうならないためには、「自分は何をしたいのか」「何が強みなのか」「周囲から何を求められているのか」といった問いにしっかり向き合うことが大切なのです。なぜならば、そうした営みを通じて形成された自らの拠りどころが、変化を乗り切るために必要な、やる気、勇気、自信、知恵を生み出す原動力になるからです。

「ジョハリの窓」~自己認知を深める2つの方法

ここまで自己認知の重要性を述べてきましたが、自分を知るという行為は簡単なことではありません。心理学の分野で頻繁に紹介される「ジョハリの窓」では、自己には「公開されている自己」(開放の窓)と「隠されている自己」(秘密の窓)があると共に、「自分は知らないが他人は知っている自己」(盲点の窓)や「誰にも知られていない自己」(未知の窓)もあるとされています。

ジョハリの窓

「ジョハリの窓」のフレームワークを使うと、自己認知を深めるためには2つの方法があることがわかります。

(1)「開放の窓」を広げる:自分のことをもっと周囲に語る(自己開示)
(2)「盲点の窓」を狭くする:他人から自分に対する指摘(フィードバック)を受けて、自分が知らなかった自分に気づく

上記(1)に関しては自己努力で実践できますが、(2)は指摘をしてくれる人がいなければ成り立ちません。自己認知を深め、成長したいと思うなら、自分から周囲の人にフィードバックを求めていく姿勢が必要なのです。
時には耳の痛い指摘もあるでしょう。それでも、他者からのフィードバックを受け続ける積極性・素直さがあれば、自身の成長が促進され、「できるビジネスパーソン」へとバージョンアップしていけるはずです。

中原淳監修フィードバック研修・教材はこちら

フィードバック研修カリキュラム(DL)はこちら

的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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