自分らしくリーダーシップを発揮するには?
2020年7月14日更新
どんなことでも「無理」は長続きしませんし、周囲の人に「息苦しさ」を感じさせる原因にもなります。リーダーシップはあくまでも「自分らしく」発揮することが大切。そのためには、まず自分をよく知らなければなりません。
自分らしさを生かしたリーダーシップをめざそう
前回、「リーダーシップ行動に必要な4つの要素」をご紹介し、「自己理解」が重要であると述べました。今回は「自己理解」がなぜ重要なのか、どうすれば自己を理解できるようになるのかなどについて考察していきましょう。
リーダーシップについてイメージするとき、多くの人が、
「有名なあの経営者のように振る舞うべきではないか」
「尊敬するあの上司のようにならなければいけないのではないか」
と考える傾向があります。それは「自分の外」にあるリーダーシップ像を追いかけていることになります。もちろん、そのお手本が自分にフィットして成功するケースもあるかもしれません。しかし、自分とは違うタイプの人の真似をしようとして、無理が生じ、うまくいかないことも多いはずです。
それよりも、自分自身のタイプ、キャラクターを正確に把握し、自分のもつ長所を発揮できる方法でリーダーシップ行動をとるほうが、周囲の人たちに違和感なく受け止めてもらえるでしょう。そのほうが結果として「影響力を高められる」と考えられます。
PHP通信ゼミナール『「新しいリーダーシップ」入門』には、次のように述べられています。
あこがれの人や過去の上司などの自分の外にあるリーダーシップ像を目指すのではなく、自分の延長線上にあるリーダーシップ像を目指して、つまり、自分らしさを生かした形にカスタマイズしてリーダーシップを発揮していくことが求められるのです。(中略)こうした自分らしさを生かしたリーダーシップは、「パーソナリティ・ベースド・リーダーシップ」とも呼ばれています。
企業研修にとりいれたい「自己理解を深める4ステップ」
「自分の延長線上にあるリーダーシップ像」を目指すためには、まず「自分自身」をよく知らなければなりません。しかし、古代ギリシャに「汝自身を知れ」という格言があり、あまたの哲学者が「自分を知る」ことを探求してきた事実からも察せられるように、「自分自身を知ること」は思いのほか難しく、ある意味人類の永遠のテーマであるともいえます。
誰でも自分のことは自分がいちばんよくわかっていると思いがちですが、実は「自分が見ている自分」と「他人が見ている自分」との間には、想像以上に食い違いがあることが多いものです。そこで同テキストでは、「周囲の人に声をかけて、自分という人間の特徴を尋ねてみる」という方法が紹介されています。人に自分の特徴を聞くのは、かなり恥ずかしく感じられることですが、自分自身を知り、成長させていくためにも、そのハードルを飛び越えて、ぜひ思い切って尋ねてみましょう。企業研修の中で全員で行えば、恥ずかしさの壁も超えやすくなるはずです。手順は以下の通り。
(1)自分で思いつく自分の特徴を5つ以上書き出す。
(2)自分で書き出した特徴について、自分以外の人も知っているかどうかを「〇」か「×」で記しておく。
(3)書いた特徴について、周りの人たちに確認する。その際、尋ねたこと以外にも特徴があるかどうかを尋ねる。
(4)周りの人たちにいわれたことをメモする。
何人かの人に聞いて回るうちに、「自分が気づいていない自分の特徴」を聞くことができれば、自分自身を知る大きなヒントになります。あるいは、自分の特徴だと思っていたことが、あまり他人に認識されていない場合もあるかもしれません。そうした「食い違い情報」を集めることで「自己理解」が進むのではないでしょうか。
「ジョハリの窓」とは
「自分が見ている自分」と「他者が見ている自分」との「認識のズレ」について、「ジョハリの窓」というマトリックスが非常に参考になります。
自分を知り、自分らしくリーダーシップを発揮し、周囲によい影響を与えていくためには、①の「開放の窓」を大きく広げていくことがポイントです。「開放の窓」が広ければ広いほど、自分と他者との認識とのズレが少なくなります。その結果、その人のリーダーシップ行動に「無理をしている感じ」がなくなり、周囲の人は受け入れやすくなるのです。
「秘密の窓」と「盲点の窓」を狭める
「開放の窓」を広くするためには、「秘密の窓」と「盲点の窓」を狭くしていかなければなりません。
「秘密の窓」を狭くするには、「自分がどのような人間なのかを積極的にオープンにしていくこと」が大切です。これにより、周囲の人は、それまで知らなかったその人の特徴を知ることができます。「盲点の窓」を狭くしていくためには、「自分が知らなかった自分の特徴」を、前述のように「周囲の人に教えてもらう」ことがカギとなります。
こうして「開放の窓」が広くなればなるほど、「自分らしさを生かしたリーダーシップ行動」が周囲にも理解されやすく、よい形で受け止められるようになるでしょう。
人材育成に導入する
自分らしいリーダーシップのスタイルをつくっていくうえで大切なのは、まず「なりたい自分」を明確にイメージすることです。その際、「こうあるべき」という義務的な目標を立てると、その観念に縛られてしまい、窮屈な感じがして長続きしにくいものです。「こういう自分になれたら嬉しい」と思えるような、ワクワクするような目標を掲げるといいでしょう。
もう一つ、「自分の強みを生かした姿」を具体的に考えることも重要です。上記の取り組みで知った「自分の特徴や強み」を認識しつつ、さらに大きな効果を発揮するために、どういう弱みを克服すればいいかというところまで踏み込んで目標を設定するのです。弱みを克服することで、強みがさらに磨かれ、大きな影響力を持つようになると考えられます。
企業の人材育成にこうした考え方を導入することで、誰もが自分らしいリーダー像を構築していけるのではないでしょうか。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『「新しいリーダーシップ」入門』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。