プレイングマネジャーの時間管理術
2020年11月10日更新
果たすべき役割が多くて忙しいプレイングマネジャーは、プレイヤー時代以上に「タイムマネジメント」をしっかり行わなければなりません。企業の人材育成においても、時間管理の考え方や方法等についてレクチャーしていく必要があるでしょう。
時間が足りなくなる理由
時間が足りなくなる理由として、一般的には「見積もった時間内に仕事を片づけられていない」「スケジュールを見える化していない」「スケジュールをチーム内で共有していない」といった不備が挙げられます。また、見落とされがちなのが、「暇なのは罪悪である」という心理的要因です。「暇な時間をつくってはいけない」という強迫観念から、効率が悪い状態でもあえて改善せず、そのまま仕事の量を増やして時間が足りなくなっていることもあります。このあたりの意識改革も、タイムマネジメントの重要なカギとなります。
「重要度と緊急度のマトリクス」でスケジュール管理
スケジュール管理のもとになる考え方として、有名なコヴィー博士の『7つの習慣』で紹介されている「重要度と緊急度のマトリクス」が役に立ちます。下図をご覧ください。
日々の仕事のスケジュールを組み立てるうえで、まず「第1領域」と「第3領域」を優先することによって、仕事の流れがスムーズになり効率が高まります。例えばホワイトボード等に4つの領域の枠を記し、チームでやるべき仕事を付箋に書いて、それぞれの領域に貼れば、何をどういう順番に進めればいいのか、誰がそれを担当するのかが可視化できます。済んだ仕事・不要になった仕事の付箋は外し、増えた仕事の付箋を貼るように習慣づけることで、常にチーム全体でどんな仕事をしているのかが把握しやすくなるでしょう。
注意しなければいけないのは、第2領域、第4領域の仕事にも締め切りがあることです。まだ大丈夫だと思って締め切り直前まで放置してしまうと、それらがいきなり第1領域、第3領域の仕事に変化し、現場が混乱する可能性もあります。マネジャーは、第2、第4領域の仕事も頭に入れて、計画的にスケジュールを立てる必要があります。
「第2領域」を管理する方法
重要度が高いにもかかわらず、緊急ではない「第2領域」の仕事をうまく管理し、着実にこなしていくことが大きなポイントです。仕事の内容にもよりますが、1日のうち10分から20分程度でかまわないので、必ず第2領域の仕事を進める時間を割くようにすれば、やがて効果が表れるようになります。重要であることから、つい第2領域の仕事に注力したくなりますが、第4領域の仕事も並行して進めることで、各領域の進捗のバランスを取るべきでしょう。また、締め切りから逆算して、「第2領域の仕事を開始する日」を決めておけば、締め切り間近に負担が大きくなるのを防ぐことができます。
人に任せるのもマネジャーの仕事
マネジャーは「締め切りがなく、形のない仕事」をいくつも抱えています。例えば「チームの方向性を示す」「チーム内の和を保つ」「メンバーの観察」「メンバーの悩みや不安を受け止める」といった役割があり、これらにもそれなりの時間と労力を費やしているのです。ということは、プレイヤーおよびマネジャーとしての「締め切りと形がある仕事」でスケジュールを埋めてしまったら、労働時間がいくらでも増えていくことになりかねません。
そこで、ある程度の時間の余裕を確保するために、前述のマトリクスのうち、重要度の低い「第3領域」と「第4領域」の仕事については、他のメンバーにどんどん振り分けていくようにしたいものです。もちろん丸投げするのではなく、適切なタイミングで「報連相」を行いながら、できるだけ「人に任せる」ことで仕事量を適切にしていくのです。
会議・ミーティングの効率を高めて時間を節約
マネジャーになることで仕事の守備範囲が広がり、判断業務が増えるため、必然的に会議やミーティングに出席する回数も増えていきます。しかし、少しでも関係がある会議やミーティングにすべてフルタイムで出席していたら、会社の規模や会合の頻度にもよりますが、時間がいくらあっても足りない状態になってしまうこともあり得ます。そこでマネジャーには、自分が本当に出席する必要があるのかどうかを検討し、場合によっては出席せずに報告だけ受けるようにするといった対応が求められます。あるいは会議の冒頭で議題や方向性の確認を行った段階でマネジャーは退出し、話し合いは他のメンバーに任せて、あとで最終判断だけを下すという方法もあります。資料の配布やメールによる情報共有で済む内容なら、会議そのものを取り止めることも考えましょう。
自分で自分にアポイントを入れる
日々の多様な業務やメンバーのフォローに追われて、マネジャー自身の重要な仕事がどうしても後回しになってしまうことがあります。この状況を改善するためには、「自分で自分にアポイントを入れる」という方法が有効です。例えば毎日のスケジュールの中に「自分専用の時間の枠」をつくっておくのです。これを継続することで、重要な仕事を着実に進めていけるようになり、プレイングマネジャーの仕事をより充実させることにつながります。マネジャーのタイムマネジメントのレベルを上げていくことで、チームや会社全体の事業効率も向上していくはずです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『プレイングマネジャーの仕事術』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。