チームビルディングで社員の能力を引き出す! 得られる効果と実践法
2021年6月23日更新
「チームビルディング」とは、メンバー全員が、やる気と主体性をもって活動し、力を合わせることによって、より強く前進できるチームをつくるための取り組みのことです。実際に、どのようにチームビルディングを進めていくのか、またその効果について解説します。
INDEX
チームビルディングとは
人を集めて集団をつくること自体は、チームビルディングとはいいません。メンバー全員が目標に向かって団結し、前進し続けられるチームをつくることがチームビルディングになります。
もちろん、いきなりそうした強いチームづくりが成功するわけではなく、チームビルディングにはスタートから終了までの段階があります。それぞれのプロセスをていねいに経ることで、結果として強いチームが完成するのです。
昨今、チームビルディングへの取り組みは、業種業界を問わず、多くの企業に広がっています。具体的には、管理職やチームリーダーといった立場の人に対して教育・研修を行うなど、人事部を旗振り役にした取り組みが進むなかで、企業において重要度の高い経営課題としての認識が広まってきています。
チームビルディングが必要な4つの理由
まずは、チームビルディングがなぜ必要なのか、4つの理由から考えてみましょう。
1.個人の能力を最大限に発揮してもらうため
メンバー全員が、やる気と主体性をもって活動するためには、「心理的安全性」が欠かせません。これは、他者の反応に怯えたり羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分を安心してさらけ出すことができる職場やチームの状態、雰囲気を表す概念です。米Google社の社内調査の結果が公表され、この「心理的安全性」の確保が生産性向上のカギと報告されたことから、この概念に注目が集まりました。
チームのメンバー間で信頼関係が醸成されると、お互いに忌憚なく意見を言い合い、また協力し合い、切磋琢磨しながら目標達成に向けて行動ができるようになります。
さらに、メンバーのベクトルがそろうことで、個人のモチベーションが向上し、意欲的に仕事に取り組めるようになるため、能力を最大限に引き出すことにつながっていきます。
チームビルディングの一環として「心理的安全性」を担保することが、個人の能力を最大限に発揮するためには欠かせません。
2.チーム全員がリーダーシップを発揮するため
これまでの日本企業では、管理職が部下のマネジメントを行い、部下は与えられたその指示に従って各々の責任を果たすというのが一般的な組織のスタイルでした。しかし、近年、企業では、めまぐるしく変わる経営環境のなかで競争力を高めていくために、新たなイノベーションを起こす必要性が高まっています。
イノベーションのヒントは現場にあります。若手社員といえども、上司の指示を待ち、それに従って動くということでは、周りの期待に応えることはできません。一人ひとりが自分の立場でリーダーシップを発揮し、様々な変化に合わせて主体的に改善と成長を続けながら、チームとしてより大きな成果を上げことが求められているのです。
3.チームとしての対応力や機動性を高めるため
チームのメンバーそれぞれが、能力を発揮するだけではチームとしては不十分です。チームビルディングでは集団をひとつの「チーム」として完成させ、チームとしての対応力や機動性を高めていきます。社員の能力は高いのに全体として見たときに思うような成果が得られていないような場合には、チームビルディングが必要です。強いチームは個人の能力を何倍にも引き出します。優れた人材に、さらに活躍してもらうためにも、チームビルディングに取り組む必要があります。
4.次のチームもうまく機能させるため
社員一人ひとりが主体性を持って輝き、リーダーシップを発揮し、なおかつチームとして機動性を高めて成果を上げられるようになると、それらの知識や経験をもった人材が、次のプロジェクトや新たなチームで経験値を活かせるようになります。つまり、チームビルディングの手法を学ぶことで未来に向けて良い会社組織をつくるサイクルが生まれるのです。
もちろん、新たに加わるメンバーもいるでしょう。そうした人たちも、経験値の高い社員から「チームビルディングとは何か」について実際の業務を通して学ぶことができます。チームの一員として貢献する体験をすれば、その人も次の職場で体験を活かすことができます。
チームビルディングの5つの段階
心理学者・タックマンは1965年、チームは作って終わりではなく、様々な衝突や混乱を経て段階的に理想的に機能するようになるという考え方を提唱しました。これが「タックマンモデル」です。ここでは、タックマンモデルで示された5つの段階をご紹介します。
1.形成期
まずはチームがつくらたばかりの「形成期」。この段階ではまだメンバーが集まっただけであり、チームとしては機能していません。この段階では、チームとして何を成し遂げていくのかといった目標が定まっていません。リーダーシップを発揮できる人でも受け身の姿勢にとどまっている状態です。リーダーはメンバーをよく知るように努めるとともに、目標を定め、方向づけをする必要があります。
2.混乱期
混乱期は、チームの目標や各自の役割・責任について認知したものの、それらについてメンバー間の意見の相違や対立が起こりやすい時期といえます。メンバーは、チームとして目標を達成するということより、自分の行動や意見が受け入れられるかという点に意識が向きがちで、ともすればチームとして達成すべき目標を見失うことがあります。
しかし、この混乱期を経ることは、メンバーがお互いを理解し、お互いの能力を尊重しつつチームとして団結していくために不可欠です。
チーム内に経験のあるメンバーがいれば、混乱期に起こる問題や、その解決方法を習得しているでしょう。チーム内でトラブルが起こったときも、積極的に介入して、混乱期を乗り切るようにサポートする動きをとることができます。
3.統一期
混乱期が過ぎると、メンバーがお互いに理解を深め、1つの目標に向かって進むチームとしてのまとまりが生まれてきます。この時期が「統一期」です。統一期ではメンバーが各自の意思で役割分担をしていくようになりますが、業務によっては曖昧な点も見られ、まだうまく作用していないところや、メンバー間の連携が取れていない部分も見られます。
4.機能期
作業を通して、自分の果たすべき行動や、メンバー同士をサポートすることを、各メンバーが学んでいくと、より成熟した段階である「機能期」に入ります。
機能期はチームの完成形に至る時期です。チームメンバーは単に自分の役割を果たすだけでなく、それぞれが自主的に問題点を見つけ出すことができます。他のメンバーのフォローに回ったり、アイデアを提案したりするようになり、チーム力が発揮されるようになります。
機能期を長く維持するために、チームリーダーの介入が必要になることもあります。業務を1人で引き受けて苦労をしているメンバーをサポートしたり、うまく機能していないメンバーを見つけてフォローしたりといった役割を担うことが必要です。余暇を使って、チームワークをさらに向上させるレクリエーション活動などを実施してみるのも有効な手段といえるでしょう。
5.散会期
優れた機能性を発揮するチームであっても、プロジェクトなどであれば、目標を達成して、その役割を終えます。また、メンバーの異動などにより、チーム存続ができなくなる状況もあるでしょう。この時期を「散会期」と呼び、チームにおいての区切りとみなします。
散会期におけるメンバーの反応を観察することで、チームが成功したのかどうかを知ることができるでしょう。チームメンバーすべてが仲間との別れを惜しみつつ、次に担当する仕事やプロジェクトへのやる気に満ちているならば、チームは成功したと判断できます。
【階層別】チームビルディングで得られる効果
チームビルディングに取り組むことによって、成果を上げて会社としての業績の伸長に大きく貢献できるようになるだけでなく、各チームメンバーにも成長をもたらすことができます。また、チーム内での経験が、今後の生活においてもポジティブな影響として現れることもあるでしょう。
ここでは、チームビルディングで得られる効果・メリットを、組織内の役割ごとに見ていきましょう。
【新入社員・若手社員】主体性
チームビルディングに取り組むことで、各メンバーは、主体的、能動的に仕事に取り組むマインドを獲得できます。とりわけ入社したばかりの新入社員にとっては、先輩の仕事への取り組みを近くで見ることが、主体性を身につけるよい機会となるでしょう。
また、担当業務に対して不平不満をもちながらも、それを改善提案につなげられていない若手社員にとっては、役職や年齢にとらわれずにポジティブにプロジェクトに関わり、自ら意見を述べ、提案する喜びを知る機会となります。社内に仲間を増やし、仕事を楽しく感じるようになることから、エンゲージメントを高め早期離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。
【中堅社員】リーダーとしての素養
強いチームでは、すべてのメンバーがリーダーシップを発揮します。しかしプロジェクトの目標を周知させたり、メンバー間の問題に対応したりするためには、優れたリーダーの存在が欠かせません。主体性を身につけ、次のステップに進もうとしている中堅社員にとって、チームビルディングを学ぶことが、リーダーとしての素養を磨くチャンスになるでしょう。リーダーから多くを学び、自分自身がリーダーになったときを想定して、チーム内の業務に当たることが、大きな成長の機会となります。
【チームリーダー】人材育成スキル
チームリーダーにとって、チームビルディングは、チームとメンバーを育てる機会です。特に、管理職として欠かせない人材育成スキルを、実践のなかで磨くことで得るものは多く、次の仕事においても大いに役立てることができます。
また、チームビルディングを通して、組織づくりを学ぶこともできます。将来、経営に携わる立場になった場合にも、チームビルディングによって得られた経験を、企業風土づくりに活かすことができるでしょう。
【経営陣】会社を牽引する力
チームビルディングには、会社の経営陣が参画することもあります。また、ボードメンバーでチームビルディングが行われることもあります。役員・取締役会のメンバーの力を最大限に引き出し、意識を高めて、強い経営陣として会社を牽引する力を引き出すことで、会社としての存続や発展に大きく貢献できます。
チームビルディングを成功させる5つのポイント
メンバーそれぞれが最大限のポテンシャルを発揮し、各自がリーダーシップを発揮しつつ主体的に行動できる強いチームづくりには、チームリーダーの姿勢や取り組み方が大きな意味を持ちます。強いチームづくりに向けて、リーダーはどのようなことを心掛けるべきでしょうか。5つのポイントについて、具体的に見ていきましょう。
1.方向性を示す
チームリーダーは、チームがどこに向かっているか、その目標をメンバーに具体的に知らしめることが必要です。果たすべきミッションは何なのか。また、ミッションを達成するためには、各メンバーがどのような行動をとる必要があるのか。そして、ミッション達成によって、どのような将来像が描けるのか。これらを、メンバーに肚落ちさせることが大切です。
チームリーダーが方向性をはっきりと示すことは、メンバーの挑戦意欲を高める起爆剤となるでしょう。メンバーがどう動くべきかを自ら判断し、主体的かつ積極的な行動を取れるような環境整備がポイントになります。
2.メンバーに要望を出す
方向性を示すだけでは、メンバーは具体的に何をすべきかを理解できないことがあるかもしれません。特に経験が浅い若手社員などでは、主体的に動かなくてはと頭では理解するものの、行動に結びつかないケースもあります。
チームリーダーには、全体的な方向性を示した後に、メンバー各自に期待している具体的な成果と、その獲得のためにどのような行動が必要なのかを伝えることが必要とされます。もちろん一方的な指示にならないように、メンバー一人ひとりと話し合いの機会をもち、その能力や状況を理解したうえで、成長を促すチャレンジングな内容も含めて要望として提示します。その際、チームリーダーの支援・サポートが欠かせないものとなります。
3.メンバーの能力を引き出す
チームリーダーは、各メンバーに要望を伝えた後、メンバーが実際に行動に移せているのかを観察します。必要に応じて助言やサポートを行い、メンバーが自身の能力を発揮して前に進めるような状況をつくることは、チームリーダーの役割といえるでしょう。
メンバーが業務を推進していく上で得た発見やアイデアを、問いかけによって引き出すことも重要です。また、日々の業務の振り返りを促し、成果については十分に評価しつつ、反省点については改善策を考えさせるなどのサポートによって、各メンバーの成長を促すことが欠かせません。
4.リーダー自身が自分の考えを持つ
メンバーの意見を聞くことと、その意見や考えに振り回されることは違います。チームリーダーは、メンバーから得られた多様な情報を受け止め、最終的には自身の責任において判断を下さなければなりません。そのためにも、自分自身の判断の拠り所をしっかりと持ち、リーダー自身がメンバーに自分の考えを伝えていくことも重要です。
5.信頼関係を構築し、相互理解を深める
強いチームを完成させるためには、チーム間の強い信頼関係が必要です。チームリーダーは各メンバーとこまめにコミュニケーションを取り、安心して仕事に取り組めるような信頼関係を築くことが大切です。
信頼関係が成立しているチームでは、メンバーは安心して業務にまい進することができます。自分の能力を超えると思えるようなことにもチャレンジし、本音でほかのメンバーと向き合っていけるでしょう。
確固たる信頼関係をつくり上げていくためには、リーダーにはメンバーのミスやメンバーからの苦言を受け入れる包容力も求められます。リーダー自身が1人のメンバーとして謙虚な姿勢でチーム内の業務に当たり、各メンバーと対等な関係を築いていくようにしましょう。
研修で学ぶチームビルディング
強いチームをつくるためには、リーダーがいかにメンバーの能力を引き出し、メンバーが主体的に動けるようにサポートすることが不可欠です。また、お互いのコミュニケーションを密にし、リーダーがメンバーの思いに耳を傾けることも大切なポイントといえるでしょう。
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