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評価者研修とは? 人事評価のスキルを高める研修内容を紹介

2024年7月11日更新

評価者研修とは? 人事評価のスキルを高める研修内容を紹介

適切な評価制度の実現には、人事評価研修の実施が効果的です。評価制度を導入したにもかかわらず、評価者のスキルのばらつきなどを理由に、評価制度がうまく機能していない企業が多くあります。本記事では、人事評価制度の必要性や課題、生じやすい偏向について解説します。

INDEX

なお、PHP研究所では講師派遣による評価者研修サービスも実施しております。あわせて下記のプログラム事例もお役立てください。

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人事評価研修(考課者訓練)とは?

人事評価とは、特定の期間における社員の働きや成果を査定し、報酬や昇進へ反映させる仕組みのことです。企業によっては「人事考課」と呼ぶことがあります。人事評価の基準が評価者によって異なる場合、公平な制度の運営に支障をきたすおそれがあるでしょう。 これを解決するために行う研修が、人事評価研修(考課者訓練)です。評価者が人事評価制度に対する理解を深め、公正・公平な制度の運用を実現するために実施されます。

企業における人事評価研修の必要性

人事評価の結果は昇進や報酬へ反映されるため、社員のモチベーションに影響を及ぼします。評価制度自体はあるものの、具体的な評価基準や項目が明確化されていないと、上司の主観で部下を評価することになってしまい、社員の納得感が得られません。人事評価者研修は、評価者の主観を排除し、適切な評価制度の運用を実現するために欠かせない研修です。

人事評価制度は「社員の育成」の観点からも重要なもので、評価結果のフィードバックを通じて課題が明確になるため、改善に向けて具体的なアクションを起こせるようになります。社員1人ひとりの能力が高まることで、業務効率アップや生産性向上など、企業にとってさまざまなメリットがあるのです。

人事評価研修(考課者訓練)を行う企業の実態

少し前の調査データではありますが、2016年に産労総合研究所により実施された、評価制度の運用に関する調査によると、評価制度がある企業は95.0%でほとんどの企業で人事評価制度が導入されていることがわかります。

また、人事評価研修(考課者訓練)を行う企業の割合は71.4%で7割以上が実施していることになります。また、評価される側への研修は22.6%で、被評価者の意識レベルやモチベーションの向上に取り組む企業も増えています。

人事評価制度は評価する側だけではなく、評価される側の理解も必要不可欠なことはいうまでもありません。

出典:産労総合研究所「2016年 評価制度の運用に関する調査」
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/jijiromu/hyokaseido/pr1702-2.html

人事評価研修の意義と目的

人事評価研修の大きな目的は、評価者が正しい評価スキルを身につけることにより、公正な評価制度の運用を実現することです。誤った方法で評価が実施されると、被評価者の不満が増大し、組織にマイナスの影響を与えてしまいます。

具体的な意義と目的は、以下の3つです。

  • 人事評価スキルの向上を目指す
  • 人事評価制度への理解を深める
  • 評価内容を人材育成に役立てる

それぞれの詳細を解説します。

人事評価スキルの向上を目指す

部下を公平に評価するためには、一定のスキルが必要です。人事評価について何の知識もないまま評価してしまうと、先入観や偏見が入りやすくなり、部下が不満を抱く要因となります。人事評価研修を受けることで、人事評価の意義や目的、基準について理解が深まり、部下を客観的に評価できるようになるでしょう。適切な評価によって部下のモチベーションが高まり、組織の生産性向上へとつなげていけます。

人事評価制度への理解を深める

人事評価制度を効果的に運用していくためには、制度自体への深い理解が欠かせません。一口に「人事評価制度」といっても、制度の内容は企業によって異なるため、自社の評価制度が何を重視し、何を目的としているのかをきちんと把握することが大切です。人事評価研修のカリキュラムには、自社の評価制度の意義や目的、基準、項目、手順について実践的な手法を用いて学ぶコンテンツが含まれます。人事評価制度に対する正しい理解が、制度の公正・公平な運用へとつながっていくわけです。

評価内容を人材育成に役立てる

人事評価制度は、上司が部下を一方的に評価するための制度ではありません。評価制度を通じて社員を育成し、企業の生産性向上へとつなげていくことに意義があります。そのためには、目標の達成度について話し合ったり、改善すべき点を伝えたりするフィードバックが重要です。フィードバックを適切に行うことにより、部下は自分自身のスキルや課題を客観的に把握でき、さらなる成長に向けて具体的に行動できるようになります。

人事評価における評価者(管理職)の課題

人事評価制度は、評価者(管理職)が一定の基準で部下を評価し、人材育成や適切な処遇、活用を行うための制度です。人事評価制度を正しく運用できれば、もちろん企業の業績アップに繋がることが期待できます。しかし、学校の試験などとは異なり、仕事において人が人を評価することはとても難しく、人事評価制度がうまく機能していないという企業は少なくありません。

人事評価制度における管理職(評価者側)の課題はさまざまにありますが、一般的には以下のようなことが考えられます。

  • 評価基準が曖昧で評価にばらつきが生じる
  • 多様化する働き方に対応した評価ができない

それぞれの課題について具体的にみていきましょう。

評価基準が曖昧で評価にばらつきが生じる

人事評価制度を運用する企業は7割を超えているものの、評価者一人ひとりの評価基準にばらつきがあることを問題視する企業は少なくありません。評価者によって評価基準がバラバラになると、部下の仕事ぶりを正当に評価できなくなったり、成長スピードに格差が出るなど、様々な問題点が起こります。

また、評価者に正当に評価されないと、会社や上司に対して不平不満を持つ部下も出てきます。評価理由を明確に説明できなければ、信頼関係は崩れていきます。組織風土も悪くなり、優秀な人材が流出すれば、業績も低迷します。朝礼ではっぱをかけたり、高邁なミッションを提示したところで、「自分は正しく評価されていない」という部下の不満は、けっして解消されることはないでしょう。

多様化する働き方に対応できていない

2019年4月から順次施行された働き方改革により、従来に比べて部下はそれぞれの事業に応じた働き方を選べるようになりました。例えば、リモートワークや在宅ワーク、短時間勤務制度を導入するなど、近年は新しい働き方を導入する企業も多くなっています。しかし、多くの企業では、管理職の側が多様化する働き方に踏まえた評価を実施できていないのが現状です。

たとえば、目標管理制度では、年度の始まりに目標を設定し1年かけて目標達成に取り組みます。しかし、リモートワークが中心になると、管理職は部下の日々の勤務態度や行動、努力を把握、評価することが難しくなります。その結果、仕事ぶりを正当に評価されず、不満を感じるという部下も増えつつあります。

また、育休や産休、男女共同参画など、人事におけるダイバーシティは急速に進展していますが、管理職の意識が追いついていない点もよく指摘されます。適正な人事評価を行うためには、そうした点への対処も必要不可欠といえるでしょう。

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人事評価で起こりやすい偏向(心理的バイアス)の種類

評価者研修

先述のとおり、評価基準が明確化されていないと、評価にばらつきが生じやすくなります。これに加えて、人事評価は心理的バイアスによっても左右されるため、注意が必要です。

心理的バイアスとは、思い込みや直感などにより、無意識のうちに非合理的な判断をしてしまうことをいいます。代表的な心理的バイアスは、以下の4つです。

  • 中心化傾向/極端化傾向
  • 寛大化傾向/厳格化傾向
  • ハロー効果
  • 期末誤差

それぞれの詳細を解説します。

中心化傾向/極端化傾向

中心化傾向とは、本来は評価の高い・低いがあるにもかかわらず、評価ランクを中央に集中させてしまうことをいいます。たとえば、A~Eの5段階で評価する場合、中央のCに評価が集まってしまう状態のことです。

要因として多いのは、必要以上に部下の心情に配慮してしまうことでしょう。低い評価をつけると部下から反発されたり、嫌われたりするのではないかと考え、無難な評価をつけてしまうのです。

中心化傾向とは反対に、「評価に差をつけなければ」と思うあまり、極端な評価をつけてしまうことを極端化傾向と呼びます。具体的には、A~Eの5段階の場合、AまたはEに評価が集中するケースです。

寛大化傾向/厳格化傾向

寛大化傾向とは、実態よりも良い評価をしてしまうことをいいます。特に、評価の分布を考慮する必要がない絶対評価において起こりやすい偏向です。

要因としては「部下に好かれたい」という心理や、「厳しい評価をして部下に嫌われるのがこわい」という自己防衛の心理があげられます。部下の仕事内容をよく理解していない場合にも起こりやすい偏向です。

一方で、必要以上に厳しい評価をつけることを厳格化傾向と呼びます。能力の高い評価者に起こりやすい傾向で、自分自身を標準として部下を評価してしまうことが原因です。

ハロー効果

ハロー効果とは、人物を評価する際に、一部の目立つ特徴に引きずられて全体としての評価に歪みが生じる現象のことです。思い込みや先入観に支配され、物事を正しく判断できないことを「認知バイアス」と呼び、ハロー効果は認知バイアスの1つとされています。

具体的には、「英語が堪能」というだけで、仕事の成果が出ていないにもかかわらず高い評価をつけてしまうことや、「大手企業出身」というだけで「仕事ができる」と思い込んでしまうことなどです。

期末誤差

期末誤差とは、評価期間の後半であげた成果の印象が強く残ることにより、評価全体に影響を与えてしまうことをいいます。たとえば、2月までは成果をあげられなかった社員が3月に大きな商談を成立させた場合、3月の実績が1年間の評価に反映されてしまうケースなどです。

また、評価の判断材料が少ない場合にも起こりやすい傾向があります。具体的には、若手職員の育成を部下に任せきりにしていて、被評価者のがんばりや成長が把握できていない場合、直近の行動や成果だけをもとに評価してしまうケースなどです。

人事評価研修の内容

それでは、人事評価の目的・意義、評価者が抱えがちな課題をふまえて、人事評価研修の内容を整理してみましょう。

自社の人事評価制度の理解

まずは、自社の人事評価制度の目的・意義や仕組みについて正しく理解しなければいけません。自己流の価値観で部下を評価しているだけでは、適正な評価ができないばかりか、部下の不満もたまってきます。
人事評価研修というと、ともすれば「正しい評価方法」にばかり内容が偏りがちです。もちろん、それは重要なことなのですが、そもそも「なぜ人事評価が必要なのか」をしっかりと理解することが大切です。
「評価を人材の適正配置や育成・活用につなげ、企業競争力を高める」という認識が薄い管理職の場合は、事実に即していなかったり、甘くなったり辛くなったり、どうしてもいい加減な評価に陥りがちになります。

評価項目・プロセスの理解

「自社の人事評価の仕組みがどのようになっているのか」「なぜ、そのような評価のプロセスをふむのか」という点も確認しておく必要があります。評価の仕組みは企業や職種によって異なりますが、下記のようなプロセスが一般的です。

  • STEP1)本人による自己評価
  • STEP2)直属上司による一次評価(絶対評価)
  • STEP3)上級管理職による二次評価(相対評価)
  • STEP4)最終評価者による調整と決定

評価者研修の主な対象は一次評価を担う管理職(課長職)と考えられますが、一次評価は本人の自己評価をふまえて、絶対評価で行うケースが多いようです。なぜなら、直属の上司とだからこそ、部下をきちんと観察し、コミュニケーションの中から評価の根拠(部下の具体的な行動・事実)を把握することができるからです。そう考えると、人事評価制度が機能するかどうかのキーマンは一時評価者にあるといっても過言ではありません。

しかし、実際にはこの点がおろそかになり、評価表をつける段階でなんとなく評価をしているという管理職が大半です。「部下の閻魔帳をつけているみたいで嫌だ」という管理職も少なからずいます。ですから、評価プロセスを知り、評価者の役割をしっかり認識してもらわなければなりません。

評価基準(要素)の理解

「どのような基準で評価をするのか」も大事なポイントです。評価基準は一般的に下記の3つの要素から構成され、最終的に総合評価を決めていくケースが多いようです。

  • 業績評価:仕事の成果や目標達成度による評価
  • 情意評価:「規律性」「積極性」「協調性」などの態度行動による評価
  • 能力評価...専門的な知識やスキルなどによる評価

部下の具体的な行動・事実の一つ一つを、どの評価基準にあてはめて評価するのか。この点についても管理職全員が共通認識をもっていないと、適正な評価はできません。「あいつはがんばっていた!」などとざっくりとした印象だけで評価することは、やはり避けなければなりません。
また、あくまでも評価の根拠とすべき行動・事実は評価期間内のものでなければならず、職場を離れたプライベートものまで評価対象にしないといった、基本的なルールも確認しておきます。

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評価基準を統一するためのポイント

評価者が人間である以上、評価にばらつきが生じることは避けられません。しかし、制度の公正を期すためにも、できるだけばらつきを小さくするための取り組みが大切です。何も対策を講じないまますべてを評価者に委ねてしまうと、社員の納得感は得られないでしょう。評価基準を統一するためのポイントは、以下の2つです。

  • ケーススタディを活用する
  • 評価者の部下への面談スキルを向上させる

それぞれの詳細を解説します。

ケーススタディを活用する

評価基準のバラツキをおさえるためには、ケーススタディも有効です。これは、いわゆる評価者(考課者)訓練と呼ばれるものです。あるモデルケースとなる社員の事例を数人の管理職で実際に評価し、その結果を比較します。通常は評価基準ごとに評価のバラツキが出ますから、なぜそのような評価をしたのかをお互いに発表し、すりあわせをしながら、最終評価を決定していく演習です。これにより、自分の評価傾向もわかりますし、評価スキルの向上も期待できます。

自社の実例で演習するとたいへん効果的ですが、本格的な作成には時間も労力もかかりますので、市販の教材を購入して実施するのもよいでしょう。

評価者の部下への面談スキルを向上させる

客観的事実に基づき、部下を適正に評価、処遇したとしても、フィードバックの仕方が稚拙だと、納得を得られず、部下のモチベーションを下げることにつながります。人事評価研修では、評価の適切な伝え方を習得するロールプレイングも、できればとりいれたいものです。

これは部下の育成という点でとても重要です。適切なコーチングやフィードバックのスキルを習得していれば、たとえ評価が悪くても、部下の奮起を促し、成長を促すことができるでしょう。

人事評価研修におけるプログラム事例

人事評価研修におけるプログラム事例

人事評価研修の目的、意義、内容などを紹介してきましたが、さいごにまとめとして、一次評価者を対象にした研修プログラム事例を紹介します。ここで紹介する項目を参考に、貴社にあった評価者研修のプログラムを策定してください。

人事評価の目的と基本ルール
□人事評価の目的と評価者の役割
□絶対評価と相対評価
□自社の人事制度の仕組み、評価プロセス、評価シート
□実際の評価手順
□評価者として守るべきルール
・会社の諸基準を理解する
・部下に期待する職務、目標を明確にする
・部下の具体的な行動・事実を把握する
・評価期間、対象となる部下の事実・行動の範囲を定めておく
・自分の価値基準、尺度による勝手な評価をしない
・部下の指導育成につなげる 等
□目標管理制度について


評価基準の理解(職能等級別)
□自社が求める理想の人材像
□自社の評価基準の把握
・業績評価
・情意評価
・能力評価

評価基準の統一
□評価者が陥りやすい偏向、心理バイアス
・ハロー効果
・期末誤差
・寛大化傾向/厳格化傾向
・中心化傾向
□評価者(考課者訓練)訓練
・ケーススタディによる評価演習
・評価結果の発表、グループ討議
・評価基準の理解とすり合わせ

評価面談
□評価面談の心得、留意点
□評価面談の事前準備
□評価面談の進め方
□フィードバックのポイント
□部下の育成。動機付けにつなげるコミュニケーション
・傾聴のスキル
・承認のスキル
・質問のスキル
□ロールプレイ(演習)

まとめ:人事評価研修で評価スキルを向上させよう

人事評価制度は、正しく運用されれば社員の成長促進やモチベーションアップ、生産性向上へつながる効果的な制度です。しかし、評価者の制度への理解が不十分なまま運用がスタートしてしまうと、評価基準にばらつきが生じ、公平性を保てなくなってしまいます。

人事制度の適切な運用を実現するには、人事評価研修の実施が効果的です。研修では、自社の評価制度の目的や仕組みについて理解を深めるとともに、ケーススタディを通して実践的に学ぶことで、評価者の評価スキルを向上させ、ばらつきが生じやすい評価基準の統一をはかります。

今回の記事で紹介した内容を参考に、人事評価研修の実施を検討してみてください。

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