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謙虚なリーダーシップ~「自分は正しい」という前提に固執しない

2021年10月26日更新

謙虚なリーダーシップ~「自分は正しい」という前提に固執しない

競争の激しい現代社会では、自らの正しさを競い合うような場面が日常生活の至る所で見受けられます。でも、正しさだけを主張していても、他者は思うように動いてくれません。時には、一歩引いて相手の主張を受け入れる度量の大きさが必要になります。
自分の意見を押し通すだけではなく、相手の意見にも真摯に耳を傾け、過ちがあれば素直に謝る謙虚さがリーダーには求められます。

「自分は正しい」というやっかいな前提

多くの人は自分の考えや行動は正しいという前提に立って生きていますが、この前提はやっかいです。「自分は正しい」という思い込みは、自分と異なる見方や意見、今まで知らなかった知識や情報を排除する行動へと人を駆り立てます。
また、他者との関係においても、自分の正しさを証明しようと思うあまり、相手を打ち負かすような言動に陥りやすくなります。
米国の経営学者ハル・グレガーセンは、「わたしたちは、自分たちの正しさを疑うことなく、毎日を送っている。ときとともに歴史的な事実が積み重なれば、自分たちが心底から信じていることが大まちがいである可能性があることに、もっと思いを致してよさそうなものだが、そうはなっていない」(※1)と述べています。さらに、本質を見抜くような深い洞察力をもった人たちに共通しているのは「ふだんから自分のまちがいに気づこうと意識的に努力していること」だと主張しています。

松下幸之助のエピソード「一点の曇りもないか」

ここでエピソードをご紹介しましょう。
21世紀のリーダーを育てるために、松下幸之助が1979年に設立した「松下政経塾」での出来事です。松下政経塾では、社会を知る一環として松下電器(現・パナソニック)の販売店での実習を塾生に課していました。ところが、ある塾生が実習先の販売店の店主と喧嘩をし、無断で実習をボイコットするという事件がありました。
報告を受けた幸之助は、その塾生に対して「なぜ、そうなったんや」と問うたうえで、その塾生の主張を「そうか、そうか」と静かに聴いていました。そして、塾生の話を最後まで聴き終えた幸之助は、新たな問いを投げかけました。
「でもな、君の主張が100パーセント正しいと、わしに言えるか、100パーセントやで。一点の曇りもなく正しいと言い切れるか。君に問題はなかったのか」
「自分に非がないわけじゃありません」
「そうか。良いことに気がついたな」
そう言い終えるや否や、85歳の幸之助は突然、青筋をたて机を叩きながら、ものすごい剣幕で塾生を叱責しました。
「自分に非があれば(10のうち2でも3でも非があると認めれば)、5歳の幼児にでも土下座して謝れるようでないとあかん! 謝れるような器量がないと天下は取れん。ここは、そういう人間を育てるところやから、謝れないなら、ここから出て行ってくれ」
突然厳しい叱責を受けた塾生は、幸之助の迫力に圧倒され、「(松下)塾長、すみません! これから実習へ行ってきます」と言って販売店へ戻って行きました。
その場に居合わせた他の塾生たちは、その時の光景が脳裏に刻まれると同時に、人の心を動かす上で何が大切かを教わったといいます。

自らのメンタルモデルを更新する

日々の生活や仕事をするとき、あるいは人と関わるとき、「自分は正しい」という前提に固執しないことが大切です。もちろん自分が正しく、そのことに自信をもつべき場面もあるでしょう。しかし、「100%正しい」と言い切れるでしょうか。数%でも自分に間違いがあるならば、そこに意識を向けていくスタンスが求められます。
そうした日々の努力が、自らのメンタルモデル(人間が無自覚のうちに持っている、思い込みや価値観)を更新し、謙虚に学ぶ姿勢や、相手を尊重する思いやり、違いを受け入れる度量などが育まれ、人と組織を動かすリーダーシップの発揮につながるのです。

※1 出典:『問いこそが答えだ!』ハル・グレガーセン著(光文社)

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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